小3 国語科「冬のくらし」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3 国語科 「冬のくらし」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小三 国語科 教材名:冬のくらし(光村図書・国語 三 下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都大田区立田園調布小学校・小木和美

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、冬に関する言葉に関心をもって集めたり、冬を感じる身近なものについて短い文章を書いたりする活動を通して、語彙を豊かにすることを目指しています。

言葉の意味の理解に留まらずに、実際の暮らしの中でそのものを見つけたり、感じたことや考えたことを文章にしたりしていきます。これにより、言葉が単なる記号ではなく、豊かな知識として身に付き、言葉を広く知っていこうとする意欲を高めていきます。

年賀状や寒中見舞いなど、冬に便りを送り合う習慣をいかして、自分の選んだ相手に対して文章を送る活動につなげるのもよいでしょう。

2. 単元の評価規準

 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元で扱うのは、冬に関する言葉です。
はじめに、冬から連想される言葉を出し合い、その中の「雪」に着目して、教科書p86に掲載されている川崎洋さんの詩「ゆき」を扱います。この詩から、「雪」で括られる言葉の中にも実は様々な呼び名があり、細分化されていることが分かります。
四季によって自然の表情が変わる日本には、自然や季節に関する語彙が豊かに存在しているということが伝わる学習材です。言葉の広さ・奥深さが感じられます。

次に、自分の生活の中から冬を感じる言葉を集め、写真を撮り、感じたことを書き留めて、言葉と体験や五感を結びつけます。1人1台端末をいかして、写真と言葉を一緒に共有すると、友達の集めた言葉についても想像しやすくなるでしょう。

最後に、冬の訪れを伝えたい相手を設定し、写真もいかして、短い文章を添えて冬の便りを作成する活動を行います。印刷したり、デジタルのままメールで送ったりと、児童の状況に即して実施できますが、これを機に「年賀状」や「寒中見舞い」の文化について扱うのもよいでしょう。

また、本単元は3年生で年間を通して行ってきた「きせつの言葉」の最後の学習でもあります。
次の4年生では、「春の楽しみ」として、月ごとの和名や年中行事、それに関わる言葉や植物、食べ物の名前などを扱うようになります。年間の帯単元をこの機会に振り返り、また次の春へと意識をつなげていきたいものです。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 生活の中から言葉を見つけて、写真を撮り、感じたことを記す

暮らしの中の言葉を扱う単元で心がけたいことは、言葉の意味を知るだけに留まらず、実際に諸感覚で感じることです。そこで、暮らしの中で見つけた言葉について、写真を撮り、感じたことを書き留める活動を行います。これにより、なんとなく知っている、聞いたことがある、ではなくて、表現する活動の中で用いる確かなものとして言葉の獲得を目指すことができます。実感を伴う学びは、児童の主体的な学習につながります。

見つけた言葉と写真、感じたことは「冬の言葉カード」として、一つの言葉に1枚のカードの形を取り、デジタルデータで集めていきます。誰が何枚集めたのかを見て取ることができ、多様に言葉を集めてくる意欲付けにもなるでしょう。

言葉と体験や諸感覚を結び付けて扱うことにより、言葉が現実と関わり合って存在していることを実感できます。教科書や友達から得た言葉についても、もしこの単元を学習している間には出会わなくても、例えば、冬休みの間に体験したときに関連付けていくことができるでしょう。
この経験が、自分では体験できない言葉について考える際にも、想像して捉えようとする姿勢につながっていくと考えます。

〈対話的な学び〉 集めた言葉や作った短い文章をお互いに読み、感想を伝え合う

集めた言葉の写真と感じたことは、「冬の言葉カード」としてデジタルデータで共有し、互いに読み合います。視覚的なものと言葉を合わせて紹介することで、共有するときにも相手に伝わりやすくなります。友達の集めた言葉でも、自分が見つけた場合には印を残すようにし、言葉に対する関心を高めていきます。

集めた言葉カードから一つを選び、言葉と写真に加えて、感じたことなどを短い三文程度の文章に表します。この文章を、班やクラスの友達と読み合い、感想を交流します。
まずは班で読み合って、話題が「季節のこと」になっているかどうかを確かめ、よいところを伝え合います。その上で、広く学級の中で読み合うといいでしょう。同じ体験をして共感する感想や、自分にはない体験に対する質問などを伝え合うことで、その言葉に対する理解が深まったり、新しい言葉を知ったりすることができます。

〈深い学び〉 言葉集めを通して、季節の豊かさや言葉の奥深さを感じる

年間を通して4回行われる「きせつの言葉」の単元は、日本には四季があり、季節を表す言葉が豊かに存在していることにも気付かせることができる帯単元です。暮らしの中で、季節ごとに気候が変化し、季節に関係する遊びや行事を楽しみ、食や生活の様式も移り変わっていることが、言葉を集めていく中で顕在化していきます。
特に、「ゆき」の詩を扱うことで、雪が多い地域にとっては、雪の情報が重要であることに気付くことができます。降水量が多く、全国的に稲作が行われてきた日本において、「雨」を表す言葉が豊かであることと同様の現象ですが、降雪量は地域によって差が大きく、「雪」を表す言葉はあまり知られていない場合も多いでしょう。写真を示したり、意味を確認したりすることで、生活において重要なものほど言葉が細分化されていくことが、驚きと共に実感できるでしょう。

言葉の豊かさは、その国の自然や文化と直結します。中学年で、日本語には季節を表す言葉が多いと感じることを通して、日本の自然や文化を大切に思う心の基盤とし、ひいては他国の言葉や自然、文化を尊重する気持ちへとつなげていきたいものです。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)冬を感じる言葉を生活の中から集めて撮影し、共有する

冬を感じる言葉を集める際には、実際の生活の中で探す時間を設定します。学校の中だけではなく、端末を家に持ち帰り、身の回りの中から探すことも効果的です。インターネット検索に慣れた子供たちは、検索して集める活動を求めることが考えられますが、まずは「冬にこそあるもの」「冬にしかないもの」といった視点で、自分の力で探すことを推奨します。インターネット等で言葉だけを集めるのではなく、体験や体感が伴うことを重視するためにも、現物を写真に収め、感じたことを書き留める活動を行います。雪遊びなどは、その時期に雪が降っているとは限りませんので、過去の体験でもよいものとしますが、その場合も過去の写真等を示せるとよいでしょう。自身の体験で思い出せるのであれば、イラストに表すことも取り入れます。

撮影した写真には、実際にそのものについての体感や経験して感じたことを簡単にメモしておきます。2時間目にはそのメモをいかして文章を作ります。文章の交流において、写真やイラストがあることで、伝えたいことがより伝わりやすくなるでしょう。

なお、家庭や町中での撮影をするときには、関係のない個人や住宅、店舗等が写り込まないようにすること、家庭内の写真を学級で扱ってもよいかどうか、保護者に確認することなど、肖像権の保護や個人情報の扱いについても気を付けるように指導します。

(2)季節の言葉と写真、文章を組み合わせて、冬の便りを作る

2時間目に文章を作成する用紙をはがきサイズにして、「冬の一コマ」と称して冬の便りを作ります。「年賀状」や「寒中見舞い」の風習を確認し、家族や親戚、友人など、自分が選んだ人への便りとしても活用できる形にするとよいでしょう。添える文例を示し、無理なく作成できるようにします。

実際に送付・送信するには、慶弔の関係や郵送料など、児童のみで決めることができない場合も想定されます。学級通信等を使って、活動の趣旨を家庭に伝え、可能であれば取り扱ってもらうようにするとよいでしょう。また、学級の実態を踏まえ、同居の家族やクラスの友人に手渡しで送る形もよいとするなど、児童や家庭の負担が過度なものとならないように配慮するようにしましょう。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: 冬のくらし

【主な学習活動】
第一次(1時
・冬と聞いて連想するものや出来事を発表し合い、雪遊びの経験を共有する。
・「ゆき」を音読し、経験を紹介したり示された資料を見たりして、読み味わう。
・教科書にある言葉を確認し、冬の言葉集めの視点をもつ。
・「あたたかく過ごすためのもの」「寒い季節ならではの行動」「冬によく食べられるもの」等の視点で、言葉を出し合う。
・校内や校庭を回って、冬ならではのものを探し、写真に写したり感じたことを書いたりして、「冬の言葉カード」を作る。〈 端末活用(1)〉

☆1時間目と2時間目の間に数日(できれば週末)を挟み、タブレットを持ち帰って、身の回りで見つけた冬に関するものの「冬の言葉カード」を作る。〈 端末活用(1)〉

2時
・「冬の言葉カード」を紹介し合い、同じカードを書いていた場合には、コメント機能やボタン機能を使って印を残す。
・「冬の言葉カード」から1枚選び、体験したり感じたりしたことを短い文章にする。
・年賀状や寒中見舞いについて知って、冬の便りの紙面を作る。
・お互いに読み、感想を伝え合う。

☆単元後しばらく、実際に見つけたり体験したりした言葉の「言葉カード」にコメント等を付けていく。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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