小3特別活動 学級活動編「学級活動(3)ウ 進んで取り組む家庭学習」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。10月は、<「進んで取り組む家庭学習」学級活動(3)ウ 主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用>の実践です。

子供自身がこれまでの家庭学習の取組を振り返り、自らの家庭学習の内容について考えたり決めたりする活動を通して、家庭学習の意義に気付いたり、楽しさを見いだしたりして、進んで学習しようとする態度を養うことをねらいにした実践を紹介します。

執筆/北海道私立小学校教諭・鍋城征爾
監修/文部科学省視学官・安部恭子
 北海道公立小学校校長・山下尊子

年間執筆計画

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4月 学級活動(1) なかよし集会をしよう ※学級会オリエンテーションをかねて
5月 学級活動(1) 学級を楽しくする係をつくろう
6月 学級活動(1) 学級あそびをしよう
7月 学級活動(1) 学級のマークをつくろう
9月 学級活動(1) 前期がんばったね集会をしよう
10月 学級活動(3) ウ 進んで取り組む家庭学習
11月 学級活動(2) エ バランスのよい食事
12月 学級活動(1) スポーツ集会をしよう
1月 学級活動(1) 学級カルタをつくろう ※学級の取組を振り返って
2月 学級活動(3) もうすぐ4年生 ※クラブ活動のオリエンテーションも含めて
3月 学級活動(1) 成長を伝える会をしよう ※6年生を送る会、学期末参観、学年集会などの場面で

本時のねらい(学習活動⑶ウ 主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用)

子供たちは、授業で学んだことをより一層深めるために、家庭学習に継続して取り組んでいます。しかし、家庭学習については、「言われてから取り組んでいる」「声をかけないとなかなか取り組まない」といった保護者からの声が聞かれたり、提出されたノートからも「漢字や計算の練習ばかりやっている。どんな学習をしてよいか分からないのだろうか」と感じたりすることが多くあります。ましてや、新学年が始まって約半年が過ぎたこの時期は、学年のはじめの時期に比べて家庭学習に対するモチベーションが上がりにくいため、前向きな気持ちで主体的に家庭学習に取り組めるよう、意図的・計画的に指導することが必要です。
本題材では、子供自身がこれまでの家庭学習の取組を振り返り、様々な学習内容に触れながら、自らの家庭学習の内容について考えたり決めたりします。これらの活動を通して、家庭学習の意義に気付いたり、楽しさを見いだしたりして、進んで学習しようとする態度を養うことをねらいにしています。

学級活動(3)では、「なりたい自分」のイメージをしっかりともち、学級で話し合ったことを生かして、児童一人一人が具体的なめあてや方法について意思決定することを大切にします。

事前の指導

学級活動(3)は、年間指導計画に即して設定した題材について、学級担任が意図的・計画的に指導します。そのため、学級活動(1)と異なり、事前や本時の指導は、学級担任が中心になって進めることになります。

① 家庭学習に関する事前アンケートを行う

教師が設定した題材について、朝の会などで事前に知らせておき、題材についての子供の意識を高めておきます。また、子供一人一人の状況や題材についての思いや考えを事前に調査することで、子供の課題意識をさらに高めます。
本実践では、下の項目でアンケート調査を行いました。

アンケート質問例

あなたは、自分から進んで家庭学習に取り組んでいますか。
あなたは、家庭学習を、どのくらいの時間やっていますか。
あなたは、家庭学習で、どんな内容の学習をしていますか。
あなたは、家庭学習は大切だと思いますか。
家庭学習に関するなやみごとはありますか。

アンケート調査は、ワークシートに記入する方法のほかに、1人1台端末を活用して調査する方法があります。これにより、集計作業を効率よく行うことができます。
アンケートの集計結果は、教室の学級活動コーナーに事前に掲示しておきます。なお、学級の実態に応じて、グラフ等の作成や結果の発表を子供たち自身が行うことも考えられます。

※アンケートの集計結果により、子供が特定され(例えば学習時間が少ないなど)、その子がつらい思いをしないようにくれぐれも留意しましょう。

② 上級生や保護者にインタビューをする

身近な人へのインタビューやビデオメッセージを活用することで、目指したい姿や課題解決のための方法を子供自身が具体的にイメージしやすくします。
本題材では、家庭学習の意義を確認できるようにするために、事前に保護者へのインタビューを行い、家庭学習に対してどんな思いをもっているかを語ってもらいます。また、上級生へのインタビューも行い、これまでの家庭学習の内容や方法、取り組み方について語ってもらいます。
これらのインタビューを本時の中で紹介することで、家庭学習に対する意欲を高めるとともに、様々な学習の方法があることを知り、自分の学習内容や方法を見直すことにつなげます。

③ 家庭学習ノートの写真を集める

普段提出している家庭学習ノートのうち、他の子供に紹介したいノートを写真にとっておきます。この写真も本時の中で紹介することで、課題解決の方法をより豊かに考えることができます。

本時の展開

【つかむ】題材を自分事として考え、自分の課題として捉える

事前アンケートの結果を見て、気づいたことや感じたことを出し合いながら、題材への関心を高め、自分自身の課題として一人一人が捉えられるようにします。
学級活動(3)は、「一人一人のキャリア形成と自己実現」に関わる活動です。そのため、導入では、自分のできていないところにばかり目を向けるのではなく、これまでがんばってきたことや今後への期待感が高まるような雰囲気づくりをしていくことが大切です。

アンケートを見て、どんなことに気付きましたか?

ほとんどの人が「家庭学習は大切だ」と考えているけど、自分から進んで家庭学習ができている人は多くないね。
ぼくも家の人に「勉強したの?」と言われてから始めることが多いし……。

私も、家の人に「早く勉強しなさい」と言われてしまうの。
やらなきゃとは思っているんだけど……。

ぼくは、宿題以外の家庭学習は計算ドリルや漢字ドリルをやることが多くて、その他にどんな勉強をしたらいいか、悩んでしまうときがあるよ。

家庭学習の大切さを知っている人が多くて、先生もうれしいです。
今日は、家庭学習をする意味をみんなで確認しながら、自分から進んで家庭学習に取り組むためにどうしたらよいか考えていきましょう。

「自分から進んで家庭学習をしていますか」の回答で肯定的なものが多い場合は、「家庭学習に関するなやみごとはありますか」の回答で見られた悩みごとをいくつか取り上げることで、題材を自分自身の課題として捉えさせます。また、学級懇談会で保護者からの家庭学習への悩みだけでなく、期待やがんばりの声が聞かれた場合は、それを子供に紹介することで、問題意識を高めることも考えられます。

【さぐる】家庭学習の意義を確認し、「なりたい自分」について願いをもつ

【つかむ】で出てきた生活経験を踏まえて、家庭学習に取り組む理由について、子供の思いや考えを出し合います。また、事前に撮影しておいた保護者からのインタビュー映像を見ることで、子供の発表だけでは出てこなかった新たな視点についても取り上げます。動画が難しい場合は、保護者から寄せられたメッセージを紹介してもよいでしょう。
このようなやり取りを行いながら、家庭学習に主体的に取り組むことが将来の自分につながることを確認し、家庭学習に進んで取り組むことのよさを子供が自覚できるようにします。

ぼくは、6年生のお姉さんがインタビューで言っていたように、分からないままにしないで進んで調べていろいろなことが分かるようになりたいから、ニュースや本で気になった言葉があったら辞書やタブレットで調べてまとめようと思う。

私は、漢字ドリルを繰り返し練習するだけじゃなくて、その漢字の成り立ちを調べたり、その漢字が使われていることわざなども調べたりして、漢字についてもっとくわしく知りたいです。

自分だけの言葉事典みたいですてきですね。

【見つける】「なりたい自分」に向けて、家庭学習の方法について話し合う

【さぐる】で家庭学習の意義を確認できたところで、「では、どんな学習の内容や学習の仕方を取り入れると、自分から進んで楽しく家庭学習ができそうですか」と問いかけ、その具体的な方法について考えていきます。
意見を伝えるときには、そう考えた理由も伝えることが大切です。例えば、「料理をつくる」という内容を考えたとしたら、「将来、料理をつくる仕事につきたいから」などと付け加えることで、将来の夢の実現や自立につながっていることを意識することができます。
子供の考えを発表させるだけでなく、上級生のインタビュー映像を視聴することで、家庭学習をしてどんなよいことがあるのか、といった意義に気付くようにしたり、子供の発表だけでは出てこなかった新たな学習の内容や仕方について触れられるようにしたりして、「なりたい自分」になるために取り組むことが明確になるようにします。さらに、事前に集めておいた家庭学習ノートの写真や学習の仕方を教師側から意図的に紹介して、解決方法を一層広げるようにすることも有効です。

【一人一台端末を活用する】
子供の意見を一覧表示できるツールを使うことで、友達の考えをヒントにしながら、より多くの意見を考えることができます。また、発表の時間を短縮することも可能なので、解決方法をより多く紹介することができます。
【見つける】で多くの解決方法を取り上げることにより、【決める】で自分に合った家庭学習の計画づくりが一層進むことが考えられます。

【決める】自分に合った家庭学習の内容を意思決定する

授業の流れを振り返りながら、自分に合った家庭学習の計画について意思決定します。その際は、下のような『めあてカード』を使って、「なりたい自分」に近付くために、どんな学習にどのように取り組むか、具体的な計画をたてます。そして、【見つける】で出された様々な学習のアイデアを組み合わせながら、自分の学習計画を立てるように声かけをします。
意思決定のあとは、学習計画をペアや小グループで発表する場面を設けたり、友達の発表を参考にして自分の学習計画を修正できる時間を確保したりするとよいでしょう。友達からの励ましの言葉をもらうことで、家庭学習に対する実践意欲を高めることができます。

めあてカード(ダウンロード可)

ダウンロードはこちら>>

事後の指導

①決めたことの実践

本時で意思決定した学習計画をもとに、各家庭で実践します。なお、実践する期間をあらかじめ決めておく(例えば1週間など)と、子供が自分自身のがんばりに気付き、達成感や満足感を得られやすくなります。
家庭学習ノートを提出する場合には、価値付けのコメントを書き加えたり、朝の会などで取組の様子を紹介したりしながら、子供の実践意欲が継続するように支援するとよいでしょう。

②計画に対する振り返り

一定の実践期間が終わった段階で、『めあてカード』の振り返りを書く時間を設定します。その際、「以前よりも長い時間学習できるようになった」「自分から進んで机に向かえるようになった」など、子供同士で感想を交流するのもよいでしょう。また、「計画した内容は自分には難しかった」といった改善点への気付きがあれば、今後の計画づくりに向けて助言を行いましょう。
家庭学習は、特定の時期に限定して取り組むものではなく、継続的に取り組むことで成果につながるものです。そのため、本実践が終わったあとも、子供自身で計画づくりをできるように、粘り強く指導を行っていくことが望ましいです。

【環境整備を生かして学習内容を広げる例】
学校によっては、教室や校内の壁面に『家庭学習コーナー』をつくり、ノートのコピーを掲示したり、家庭学習プリントを自主的に持ち帰れるようにしたりする工夫を行っています。これらの環境整備により、子供が進んで家庭学習をする意欲につなげます。

【家庭との連携を図る】
家庭学習は、家庭との連携を図ることが学習効果を高めることに大きくかかわります。そのため、学校・学級通信等で家庭学習に関する話題を提供したり、保護者懇談会を活用しながら保護者の願いや思い、悩みに寄り添ったりして、学校として積極的な情報発信に努め、連携して取り組むことが効果的です。
 <学級通信の例>

※子供を取り巻く家庭の状況は様々です。「家庭の協力なしにはできないこと」は避け、子供たちが自ら学ぶことの楽しさや、進んで学習計画を立てて学習することのよさや大切さに気付くことができるようにしましょう。

【こんなことは避けましょう!】
「家庭学習ノートのチェック当番」をつくって子供同士で提出状況を確認したり、一覧や順位付けをして掲示したりしてしまうと、実践意欲が低下してしまうことがあります。「子供が子供を管理する」ようなことは望ましくありません。
また、取組の結果ばかりを評価するのではなく、目標の実現に向けた活動状況の過程を適切に見取り、肯定的な評価を子供に返していくという視点が重要になります。

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

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楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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