小5社会「情報を生かして発展する販売業」指導アイデア
執筆/北海道札幌市立山鼻小学校教諭・中田充
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
北海道札幌市立山鼻小学校校長・佐野浩志
目次
年間指導計画
・国土の地形と気候の概要
・低い土地のくらし
・高い土地のくら
・あたたかい土地のくらし
・寒い土地のくらし
・米づくりの盛んな地域
・水産業の盛んな地域
・日本の工業生産と工業地域の特色
・自動車工業の盛んな地域
・工業生産を支える貿易や運輸
・放送などの産業とわたしたちのくらし
・情報を生かして発展する観光業
・情報を生かして発展する販売業
・情報を生かして発展する運輸業
・国土の自然災害
・私たちの生活と森林
・公害からくらしを守る
目標
我が国の販売業と情報との関わりについて、情報の種類、情報の活用の仕方などに着目して、聞き取り調査をしたり各種資料で調べたりしてまとめ、販売業における情報活用の現状を捉え、情報を生かして発展する販売業が国民生活に果たす役割を考え、表現することを通して、大量の情報や情報通信技術の活用は、産業を発展させ、国民生活の利便性を向上させていることを理解するとともに、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度や、学習したことを基に社会の一員として情報化の進展に伴う販売業の発展や国民生活の向上について考えようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①販売業における情報の種類や情報の活用の仕方などについて各種資料などで調べて、必要な情報を集め、読み取り、情報活用の現状を理解している。
②調べたことを関係図や文にまとめ、大量の情報や情報通信技術の活用は、販売業を発展させ、国民生活の利便性を向上させていることを理解している。
思考・判断・表現
①販売業における情報の種類、情報活用の仕方などに着目して、問いを見いだし、販売業における情報活用の現状について考え、表現している。
②情報を活用した産業の変化や発展と人々の生活の利便性の向上を関連付けて、情報を生かして発展する運輸業が国民生活に果たす役割を考え、学習したことを基に産業と国民の立場から多角的に考え、情報化の進展に伴う運輸業の発展や国民生活の向上について考え、表現している。
主体的に学習に取り組む態度
①我が国の販売業の情報活用について、予想や学習問題を立て、学習を振り返ったり見直したりして、学習問題を追究し、解決しようとしている。
②学習したことを基に、情報化の進展に伴う産業の発展や国民生活の向上について産業と国民の立場から多角的に考えようとしている。
学習の流れ(6時間扱い)
問題をつくる 1時間
- レジで商品を読み取ったり、支払ったりする具体的な場面の想起やスーパーで多くの商品を欠品なく取りそろえている事実などから、問題をつくる。
(学習問題)
販売業では、どのような情報をどのように活用しているのだろう。
- 学習問題について、スーパーマーケットにおける情報通信技術の活用について予想を基に学習計画を立てる。
追究する 4時間
- 店で使うPOSシステムでは、どのような情報を集めているか、調べる。
- 大量に集まる売上情報と発注情報を本部の人が活用し、どのように店の要望に応えるか、調べる。
- 自動発注システム導入により、店にどのような変化があったか、話し合う。
- マーケティング部の人がどのように顧客情報を活用しているかを調べ、話し合う。
まとめる 1時間
- 学習問題について調べてきたことをGoogle Jamboardなどの共同編集アプリを使用してまとめる。
- スーパーマーケットと同じように情報通信技術や大量の情報を生かしている産業を調べる。
問題をつくる
レジで商品のバーコードを読み取った時やポイントカードや電子マネーを読み取った時の「ピッ」という音は何を読み取っているのか、どうして欠品なく商品が棚にそろっているのかを予想する活動を通して、学習問題をつくる。
導入の工夫 ー買い物アンケートから変化が分かるー
事前に昔(保護者が子供の頃)と現在の食料品の購入方法や支払い方法についてアンケートをとる。昔と現在を比較し、現在ではインターネットで注文した商品が宅配されたり、電子マネーやクレジットカードなど情報通信技術が使われたりするなどの購入方法や支払い方法の変化に気付かせ、スーパーでどのような情報のやり取りがなされているかを予想する活動へとつなげます。
1時間目
アンケートの結果やスーパーの写真などから問題をつくる。
お家の方が子供の頃と現在の食料品の購入場所や支払い方法のアンケートの結果です。気付いたり思ったりしたことを話し合いましょう。
インターネットで食料品を購入できるようになったよ。
お母さんはいつも電子マネーで支払いをしているよ。
レジの画面には、どんな情報が映し出されているのかな。
レジ以外でも、情報通信技術が使われているのかな。
販売業では、どのような情報をどのように活用しているのだろう。
主体的な学びにつながるポイント
店、本部、物流センター、工場の関係図を示した上でそれぞれの間でどんな情報のやり取りがされているかを児童に予想させ、予想を基に学習計画を立てていきます。また、1人1台端末のアプリを活用し、関係図の周りに明らかになったことを毎時間書き込んでいくと学習問題の追究の見通しや蓄積になり、さらにはその解決へとつながります。
追究する
教科書や資料集、必要に応じて1人1台端末でウェブサイトを活用して、「①レジでバーコードを読み取り、集めている情報と店の活用」、「②売上情報と発注情報を分析し、店の要望に応える本部の情報活用」「③自動発注システム導入による発注の最適化」「④個別の消費者ニーズに応える顧客情報の活用」を調べる活動を通して、店や消費者などの個別のニーズに応えるために大量の情報を活用するスーパーマーケットの営みを追究する。
情報の内容と活用するよさを明らかにするくふう
児童にとって、身近なようで遠いのがこの単元の難しさである。情報通信技術や情報の中身など分からないことだらけである。しかし、学習指導要領にもあるように情報通信技術に深入りしないように注意しなければならない。販売業の情報活用を扱った本単元においては、まずはPOSレジで集める情報の種類について児童が追究しやすいように資料を作成することを勧める。追究する際は児童の実態に合わせ、提示する情報を絞るなどし、単元を通して「どんな情報を集め、それを使ってどんなことができるのか」を調べていくこと、また、それが「販売業の発展や消費者の利便性の向上につながっていること」を明らかにしていきたい。
2時間⽬
POSレジで集まる情報を調べる。
バーコードを読み取ると、「いつ、何が、いくらで、いくつ」売れたかが分かるようになっているよ。
売上情報はお店のコンピューターに集められるよ。より売れる商品を多く仕入れるとよいね。商品の管理をすることもできるよ。コンピューターがない時は人が数えていたのかな。
3時間⽬
本部に集まる情報の種類とその活用について話し合う。
本部は各お店に仕入れの量や値段を提案しているんだ。そのおかげで商品を無駄にすることが減ったり、店の利益が上がったりするんだ。
お店にとって、商品が余っても売り切れても困るね。大量に集まった売上情報や発注情報があると1つのお店だけでは分からないことにも気付くことができるね。
大量の情報を扱っている本部にたくさん秘密がありそう。もっと調べてみたいな。
考えを書かせるポイント
児童が問いに対し、個で追究しているときに、個別で指導します。その時に問い直して、個の追究を深める関わりをしましょう。例えば、「無駄がなくなる」という考えに対し、教師が「無駄がなくなると何かいいことがあるの?」と問えば、無駄をなくす価値を考えることになります。「なぜ無駄がなくなるの?」と問えば、情報活用に目が向きます。個の追究に対して意図的に問うことで児童の考えを深められます。
4時間⽬
自動発注システムを取り入れたことで、売り切れや売れ残りのない、より最適な発注を行うことについて話し合う。
イラスト/栗原清、横井智美