「メタバース」とは?【知っておきたい教育用語】

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近年広く知られるようになった「メタバース」。その意味や、教育現場での活用の可能性について解説します。

執筆/信州大学教育学部助教・小倉光明

「メタバース」とは?

最近多くの場面で目にする「メタバース」は、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」で初めて登場した言葉です。「meta」と「universe」を合わせた造語で、「超」、「宇宙/世界」という意味からも、デジタル空間特有の無限大の広がりがイメージされます。

メタバースそのものに対する明確な定義は存在していませんが、ゲームAI開発の第一人者・三宅陽一郎氏(立教大学特任教授・東京大学特任教授・九州大学客員教授、2022)はメタバースを、広義では「ある程度多くの人々が活動できるオンラインデジタル空間」(オンラインゲームやチャットを含む)、狭義では「ゲーム性や物語性を薄くして、現実世界の代替としてのオンラインデジタル空間」と整理しています。両者に共通していることは、メタバースが「空間」を有していることです。このデジタル空間によって広く自由に人々が活動し関わることができるため、SNSやゲーム、企業サービス等、様々な場面での活用が期待されています。

また、ゲーム性や物語性を薄くした場合、人々がこのようなデジタル空間で日常的に過ごすことで新たなニーズが生まれる上に、経済の仮想化(仮想通貨等)が進むことによって、メタバース内での経済活動や文化、価値等が生まれていく可能性があるとしています。

メタバースの特性を生かした深い学びの実現

学校教育にメタバースを導入する構想は以前よりあるものの、その実現のためには、高性能なコンピュータや高速通信ネットワーク環境が必要です。GIGAスクール構想による環境整備によって、メタバース活用への期待は高まっています。例えば、授業の受講や行事、コミュニケーションスペース等、場の提供の目的で活用されています。

また、「令和4年度『次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業』」で採択された静岡聖光学院中学校・高等学校は、メタバース技術を活⽤した探求/協働学習・リモート国際交流の実践に取り組まれています。そこでは、「物理的な制約や距離・コストにとらわれず、デジタル上でのクリエーション力(探求/表現力)の醸成」、「アバターの身振り手振りを交えつつ、デジタル上でのコミュニケーション力の醸成」を目的としてメタバースが活用されました。 

メタバースの「デジタル空間によって広く自由に人々が活動し関わることができる」という特徴を生かしつつ、それを深い学びを実現するための学習環境として落とし込み、資質・能力の育成へとつなげた実践であると言えます。

経験的な学びへの活用可能性

現在、学校教育では「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」「何を学ぶか」が重視されています。特に「何ができるようになるか」を実現するためには、経験的・体験的で、これまでに得た知識・技能を生かす問題解決的な学習を進める必要があります。

このような学習は、個別最適な学びとなり、個人がそれぞれの問題意識・好奇心にしたがって学びを深めていきます。その際、ネックとなるのが環境による学びの制限です。もしかすると生徒が海外のある国のある場所に興味を持つかもしれません。また、もしかするとより多様な表現で多様な人と関わる必要性が出てくるかもしれません。これまでもGIGAスクール構想等で学習環境は改善がなされてきました。しかし、学習環境をさらに整備することで、より効果的に資質・能力を育成することができる可能性があります。

メタバースによるデジタル空間を児童・生徒の資質・能力の育成のための学習環境として捉えて活用する実践が求められます。

▼参考資料
三宅陽一郎(2022)「メタバースがやってきた:2.メタバースの成立と未来 -新しい時間と空間の獲得へ向けて-」情報処理学会、情報処理、63巻、7号、pp.3-36
学校法人 静岡聖光学院「令和4年度『次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業』」2023年2月21日

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