小2 国語科「あったらいいな、こんなもの」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小2国語科「あったらいいな、こんなもの」(光村図書)の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末の活用例等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/京都府京都市総合教育センター指導室指導主事・吉田夏紀
執筆/京都府京都市立高倉小学校・浦家由香利
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、「あったらいいな」と思う道具について友達と交流することを通して、相手の話の内容を捉えて質問をしたり感想を伝えたりする力を育てていきます。
相手が考えた道具について質問をするときに、相手が自分に知らせたいことは何なのか、自分が知りたいことは何なのかを考え、道具についての情報がより具体的になるよう質問をしたり、感想を伝えたりすることができるようにしていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、「『あったらいいな、こんなもの』はっぴょう会をしよう」という言語活動を位置付けます。生活の中で「こんなときにこんなものがあったらいいのにな」と感じた経験から、便利な道具を考えます。道具をより具体的な形にするために、相手の話の内容を捉えて質問したり、感想を伝えたりする力を育てます。
道具について質問するときには、相手がどんなことを思って道具を考えたのか、どんなことを相手に知ってほしいのかを考えながら質問することが大切です。
また、どんなことを聞いて、どんな感想を伝えると相手の道具のことがもっと詳しく分かるかという視点をもって、質問をし合うモデルを見たり、話し合ったりしながら考えるようにします。
道具の発表をするときには、「発表会」という場での言い方と、友達と二人で質問をし合う場での言い方を比べ、「です」「ます」などの丁寧な言い方をすることを意識付けます。
普段の生活の中でも、場や相手に応じて、丁寧な言葉遣いと普通の言い方を使い分けることができる子供を育てます。
4. 指導のアイデア
〈主体的・対話的で深い学び〉
〇「やってみたい」と思える導入の工夫
本単元では、自分が考えた「あったらいいな、こんなもの」を発表する言語活動を設定します。
自分が生活の中で「あったらいいな」と思う道具を考えることは、子供たちにとってわくわくする題材です。
その道具が実現可能かどうかに目を向けるのではなく、「空を自由に飛べる」「自分だけ10分の時間がもらえて好きなことができる」など、子供の自由な発想を引き出し、教師が「いいね」「おもしろいね」「それは楽しそうだね」などと受け止め、クラス全体がお互いの発想を認め合う、楽しい雰囲気のもとで単元の学習をスタートすることが大事です。
そうすることで、子供たち一人一人が自由に思いを広げながら道具を考えられるようにしましょう。
〇「話す・聞く」目的を明らかにする
主体的で対話的な学びを生み出す上では、「話したい」「聞きたい」と思える必然性のある交流の目的が必要です。
自分で考えた道具をより具体化していくために、友達との交流の時間を設けます。
自分では気が付かないことを相手に質問してもらったり、感想を伝えてもらったりすることで、考えをより詳しく具体的にできるという交流のよさを感じられるようにします。
どんな質問をすれば相手の道具についてもっと詳しく分かるのか、どんな質問や感想によって自分の道具がさらに具体的になったのかを実感できるようにしましょう。
〇単元のまとまりの中での適切な「振り返り」
学習を振り返る際には、単元の学習活動のまとまりの中で、適切なところで振り返るようにします。
本単元では、友達とのどのような関わりや対話によって道具が具体的になったのかについて教師が問いかけたり、子供自身が自分の道具が具体的になったなと感じるタイミングでカードやノートに書きとめて振り返るよう促したりします。
単元のまとまりの中で、子供自身が「できた」と感じられるところや、さらに「こうしたい」と感じているところで振り返ることができるようにすることで、学習への意欲や目標をもって自分で学びを進めていくこと、学びを調整していく主体的な学びにつながると考えます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
自分が考えた道具をみんなの前で発表します。
そのときには、丁寧な言葉と普通の言葉との違いに気を付けて話す必要があります。
発表に向けて話す姿を一人一台端末で録画をし、見返すことで、丁寧な言葉づかいで話すことができたかを振り返ることができます。自分の姿を見てよりよく改善していくことは、発表への自信にもつながるでしょう。
6. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: しつもんしあって、くわしく考えよう 「あったらいいな、こんなもの」
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 質問し合って詳しく考えた「あったらいいな」と思う道具について発表するという学習の見通しをもつ。
・第二次(2時、3時、4時、5時、6時、7時)
②③「あったらいいな」と思う道具を考え、道具の絵を描いたり、短い言葉で道具についてのメモを書いたりする。
④ 道具について詳しく考えるための質問の仕方を考える。
⑤⑥ 道具について、二人組で質問し合って考えを詳しくする。
⑦ 発表するときに気を付けることを話し合い、発表の準備をする。
・第三次(8時)
⑧「あったらいいな、こんなもの」の発表会を開き、単元の学びを振り返る。
板書例と全時間の指導アイデア
● 主体的な学びのために
1時間目では、教師が「あったらいいな」と思う道具の絵を見せ、「自分も考えてみたい」と興味関心を引き出して、みんなが考えた「あったらいいな、こんなもの」の発表会をすることを学習課題として設定します。
そして、クラスの友達に道具のことを詳しく分かりやすく伝えるために、友達と質問し合って一緒に考えながら学習を進めるとよさそうだという思いを引き出し、質問をし合って詳しく考えるという学習の見通しをもつことができるようにします。
今日は、みなさんに見てほしいものがあります。
(教師が考えた道具の絵を見せる)
それはなんですか?
これは先生が考えた「あったらいいな」と思う道具「ビッグパラソル」です。
最近、雨の日が多くてみんなと休み時間に外で遊べていないので、こんなものがあったらいいなと思って考えました。
それはどんな道具ですか。
これは、とても大きな傘で、傘をさすと雨の日でも外で遊ぶことができます。
どれくらいの大きいのですか。
傘をさすと運動場全部を覆うくらい大きいです。
ええ!すごい!
この傘があったら、確かに雨の日も外で遊べるね。
どうやって使うのですか。
傘の持つところにボタンがついていて、それをおすと傘が開きます。
どうやって持ち運ぶのですか。
それは考えていませんでした。みんな一緒に考えてくれませんか。
大きいから持ち運びは大変そうだね。
小さくなるボタンがあって、使わないときは折り畳み傘くらいになったらいいね。
なるほど。小さくなるボタンを付けるというのはいいですね。では、小さく縮むボタンをつけようと思います。
それは便利だね。
わたしは、先生の「ビッグパラソル」があったら、雨の日だけじゃなくて、暑すぎて外で遊んじゃいけませんっていう日は日傘になって、とっても便利だと思いました。
なるほど。暑すぎる日は日傘になるということは思いつきませんでした。〇〇さんのおかげでもっといいアイデアが加わりました。
今、「どうやって持ち運ぶのか」という質問で、先生の道具が詳しくなりました。
それから「日傘にもなる」という感想を聞いて、道具の別の使い方が生まれました。質問や感想を言ってもらうと自分では気付かなかったことにも気付くことができますね。
みんなも「あったらいいな」と思うものはありますか。
あります。
考えてみたい!
では、この学習では、みんなが考えた「あったらいいな」と思うものを考えましょう。考えてどうしたいですか。
友達の道具も知りたいから、クラスで発表し合ったらいいと思います。
では、クラスで発表会を開きましょう。クラスの友達に道具の詳しいことを伝えるためには、発表会までにどんな学習をすればよいでしょうか。
まずは、自分の「あったらいいな」と思う道具のことを考えないといけないね。
今日の先生みたいに、友達に質問や感想を言ってもらったら、道具がもっと詳しくなったり、いいアイデアを思いついたりするかもしれない。
発表の準備もいると思う。
「あったらいいな」と思うものの発表会に向けて、どんな学習をすればよいかが整理できましたね。みんなの考えが楽しみですね。
イラスト/横井智美