小1体育「走の運動遊び」指導アイデア
執筆/神奈川県相模原市立二本松小学校教諭・宮崎祐子
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・高田彬成、神奈川県相模原市立旭小学校校長・二宮昭夫
目次
授業づくりのポイント
走の運動遊びには、方向や距離などを変えたいろいろなコースを走る「かけっこ遊び」と、コースに段ボールや輪などを置いて走り越える「低い障害物を用いての(リレー)遊び」があります。これらの運動遊びを通して、友達と競い合う楽しさや、調子よく走る(越える)心地よさを味わうことができ、また、体を巧みに操作して走る(越える)ことで、いろいろな運動の基礎となる動きを身に付けることができます。
「かけっこ遊び」は、ジグザグやカーブなどいろいろな形状のコースを用意して、蛇行して走ったり、真っ直ぐに走ったりして、様々な身体感覚を味わえるようにすることが大切です。
「低い障害物を用いての(リレー)遊び」では、いろいろな障害物(コーン、段ボール、輪、ペットボトルなど)を使ったり、障害物の間隔を変えたりして、子供が楽しく活動できる場の工夫が大切です。
また、「折り返しリレー遊び」「低い障害物を用いてのリレー遊び」では、実態に応じてタッチやバトンの受け渡しの仕方を工夫して、基本的な動きを身に付けるようにしましょう。
教師は、よい動きをほめたりクラス全体に広げたりして、子供たちの動きを広げましょう。
また、協力や認め合いをしている子供を取り上げて、誰とでも仲よく運動したり、勝敗を受け入れたりできるようにしましょう。
単元計画(例)
※学校の設備や教具など、実態に合わせて活動内容を変更するようにしましょう。

オリエンテーション、はじめの運動遊び活動例
オリエンテーションでは、単元を通して子供たちが楽しく、安全に学習に取り組めるように、約束や準備、片付けの仕方を全員で確認することが大切です。授業のはじめには、[はじめの運動]を取り入れて、様々な身体感覚を養いましょう。
子供たちが楽しい気持ちをもって授業に入れるように、3分~5分くらいの短時間で、簡易で適度な運動量にすることが大切です。
学習のはじめの運動の活動例
【手つなぎかけっこ】
・手をつないで走る。
・コースはとくに用意しなくてもよい。
・お互いの走る速さを感じながら、相手に合わせて走る。
・危険を感じたら、手を離すように指導する。

走る速さを合わせてみよう。あぶないときは、手を離しましょう。
【じゃんけん列車】

・勝った子は、自由に走る。
・負けた子は、勝った子の後を追う。
・教師の合図で、交代したり、相手を変えたりする。
・全力で走らず、後ろの人がついてこられる速さで走るように助言する。
右や左など、方向を変えてみよう。
【真似っこジョギング】
・10 m~ 20 m程度のコースを、先頭の子の真似をしながら走る。
・真っ直ぐに走るだけでなく、ジグザグやぐるぐるなどのコースをつくり、動きが多様になるようにする。
・人数は、安全面から少人数が望ましい。
〈まっすぐ〉

〈ジグザグ〉

〈ぐるぐる〉

スキップしたり、ポーズを決めたりしても面白そうだね。
楽しみ① いろいろなコースで思いっきり走ろう、走り越そう(活動例)
[走ろう]では、まっすぐ思いっきり走るだけでなく、ジグザグに走ったり、輪を跳び越えながら走ったりして、いろいろな走り方を経験し、その時の身体感覚を味わえるようにしましょう。また、振り返りの時にその身体感覚を言葉で発表して、全体で共有できるようにしましょう。
[走り越そう]では、いろいろなものを走り越しながらリズムを感じて、楽しみながら習得できるようにしましょう。
教師が子供のよい動きをほめたり、よい動きを共有したりして、自分の体の動きを意識し、自分の体の使い方に気付くことも大切にしましょう。
走ろう
動きのポイント
・まっすぐ前を見て走る。
・足の裏に力を入れて曲がる。
・曲がり角で、スピードを調節して走る。
【ビューンコース】

【ジグザグコース】

曲がるときは、スピードをゆるめるといいね。
友達と速さを合わせて走るのも、楽しそうだね。
【ぐるぐるコース】

【コーンタッチコース】

グッと足に力を入れると、ピタッと止まれるね。
【とびっこコース】

次の輪が近くにあるときは、ピョンピョンと素早く輪に入っているね。
輪が離れているときは、勢いをつけて、ピョーンと跳べるといいね。
【じゃんけんコース】

相手をしっかり見ると、まっすぐに走れるね。
ルールを守ると、楽しく遊べるね。
【楽しみ① 活動形態】
・教師の指示で、コースを1つずつ走る。
・コツの共有を図る。
・それぞれ好きなコースを選んで走る。
走り越そう
動きのポイント
・低く、跳び越す。
・手を振りながら、走り越す。
【くねくねコースハードル】

手もしっかり振っていると、上手に走り越せているね。
【ハードル遊び】

狭いところと広いところでは、走り越し方が変わるね。
最初は、ゆっくり走ってみよう。慣れたらスピードを上げてみよう。
【かけ足ラダー】

とばすマスの数を変えて走り越すのも、楽しそうだね。
振り返り

運動遊びが苦手な子供への配慮の例
かけっこでリズムよく走ることが苦手な子供には、一定のリズム、ゆっくりのリズム、速いリズムなど、いろいろなリズムで走ったり、レーンの上に目印を置いたりしましょう。
意欲の出ない子供への配慮の例
最後までうまく走れず、達成感を味わうのが難しい子供には、易しい場や様々な場を設定しましょう。競走だけでなく、友達と関わる楽しさを味わえるように、子供の伸びや友達との関わり方を積極的にほめましょう。
楽しみ② 友達と場を選んで走ったり(走り越したり)、リレーをしたりしよう(活動例)
楽しみ①の活動を生かして、友達と場を選んだりリレーをしたりして、走る(走り越す)ことを楽しめるようにしましょう。リレーをするときは、ルールや安全をしっかり確認してから始めましょう。
バトンパスは、手でタッチ→バトンの受け渡しと、段階を踏んでいきましょう。リング状のバトンは、つかみやすいので受け渡しがしやすくなります。
勝敗の判定は、「先にゴールしたチームが勝ち」「ゴールした子供が速く整列したチームが勝ち」などありますが、事前に確認をしっかりしましょう。また、勝敗にこだわり過ぎないように、楽しみ①を生かした走り方や友達と仲よく活動している子供をほめて、全体に広げましょう。
走ろう
【世界1周コース】

線を踏まないように、気を付けよう。
【8の字コース】

楽しみ② 活動形態
・コースは、1時間に2つか3つぐらいで行う。
・4人のグループごとに、コースを選ぶ。
※全部のコースを体験させたい場合は、時間を区切ってローテーションしたほうが把握しやすい。
【コーンリレー遊び】
〈ルールの例〉
・線の内側で、バトンをパスする。
・行きはコーンをジグザグに走り、帰りはまっすぐに走ってくる。
コースとコースの間は、安全確保のため、3~4m ほど間隔を開けて設定する。

リレー 活動形態
・4人のグループごとで練習→教師の合図で競走→こつの共有→グループごとに練習→(時間があれば)教師の合図で競走
相手チームとルールの確認をしよう。バトンを渡すときに「はい」と言うと、タイミングが合うね。
走り越そう
【くねくねコース遊び】

【ハードルリレー遊び】

〈ルールの例〉
・1チーム4人。
・いろいろなハードル(棒やシート、段ボール)
・ハードルの間は、いろいろな広さにする。
・行きだけ跳ぶか、帰りも跳ぶかを決める。
振り返り
友達が応援してくれてうれしかった。
運動遊びが苦手な子供への配慮の例
低い障害物を走り越える運動遊びで、最後まで走り越えることが苦手な子供には、障害物を置く間隔や高さを変えるなどしましょう。
意欲の出ない子供への配慮の例
友達同士でうまく関わり合うことができない子供には、見合いや教え合いなど、互いに関わり合いながら学習をするようにしたり、友達同士で学習の成果を認め合ったりする機会を設定しましょう。
安全に運動するために
・ロープを使用する場合は、ロープを踏まず、沿うように走ることを指導する。
・ミニハードルは向きがあるので、逆方向から走らないように指導する。
・コースが急な曲線にならないように注意する。
・コースに慣れてから、徐々にスピードを上げていくように指導する。
・スタートする方向などのルールは、必ず教師から指示を出すようにする。
【障害物の例】
タイヤ、コーン、ペットボトル、シート、段ボール、輪、、ミニハードル
ねらいにせまるためのポイント
走る動き自体の面白さや心地よさを引き出す指導を基本にしながら、授業を進めていきましょう。「走ろう」「走り越そう」のそれぞれで、動きのポイントをおさえられるように言葉がけをしたり、よい動きをほめたりすることが大切です。
リレー遊びをするときには、勝敗にこだわり過ぎず、友達と競走をしたり、教え合ったりする楽しさが実感できるように、よい関わり合いを全体に広げていきます。子供の実態に応じて、場やルールを工夫し、みんなが楽しめるようにしましょう。

教育課程調査官からのアドバイス
国立教育政策研究所教育課程調査官 高田彬成
走の運動遊びでは、直線だけでなく、曲線やジグザグのコースなど、工夫したコースを用いて友達と競い合い、走る楽しさを味わえるようにします。速度や重心、いろいろな走り方や体の傾け方など、コースの状況などに応じて調整しながら、楽しく走ることができるようにしましょう。
また、本稿にあるように小さな障害物を置いたり、折り返しのリレー遊びにしたりすると、グループどうしで競い合いながら、繰り返し走る楽しさを味わうこともできます。
きまりを守り友達と仲よく活動したり、勝敗を素直に受け入れたりする態度や、楽しく遊ぶことができる場や遊び方を選ぶことなどの思考力、判断力、表現力等についての指導の充実も図りましょう。
イラスト/栗原清、横井智美
『小一教育技術』2019年1月号より