文部科学省 教員勤務実態調査(令和四年)出る! 待ったなしの働き方改革に、チーム学校で挑もう!

連載
GKC(がんばれ教頭クラブ)

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

文部科学省から教員勤務実態調査(令和四年)の結果が発表されました。以前よりはだいぶ改善が見られますが、いまだに「時間外勤務45時間超」の教員が8割以上という実態です。課題も山積みです。管理職(教頭)、学校現場最前線(ミドルリーダー・ベテラン層)、若手教員の3つの視点から、これから対策していけることを考えてみましょう。疲弊している学校や教職員に一刻の猶予もありません!

【連載】がんばれ教頭クラブ スペシャル

1 教育指導行政からも本気のメッセージ

文部科学省からの実態調査に前後する形で、過日、わたしの勤務地の全県校長会会議でも、教育指導行政担当者から、働き方改革への強い要請があったそうです。
目に見えること…つまり具体的な姿を示すことや数字で証明することが、今後必要になってきます。
管理職の過労死、教職員のメンタル面での体調不良が、身近でどんどん増大しています。
自助努力でできることは、管理職が先頭に立って進めていきましょう。学校の教職員が心身整った状態で児童に接していけるようにすることが、児童の健やかな成長のための最低限の条件だからです。

2 管理職(教頭)ができること

① 配り物改革

学校のせんせいはマジメなので、学校に持ち込まれる配付物を、ちゃんと配ろうと対応される方も多いのではないかと思います。
しかし、担任が学級の児童分を数えて振り分け、帰りの会で配付したり、チラシの内容に関する問い合わせが学校に来て、担任が対応する…といったこともしばしば。これは本来必要のない労力です。
こういったチラシを配布する必要性から、管理職のレベルで精査しましょう。
まず、判断をしやすくするための大方針を決めます。

原則的に、教育委員会の公認や推薦がないものは取り扱わない

というのが、分かりやすくてオススメです。その上で…、

 公共機関からのお知らせについては、配付の要請があった時点で、当該機関に各学級の人数を知らせ、学級ごとに配分してもらったもののみを受託します。
 イベントや映画のチラシなどは、各児童に配付せず、置きチラシにします。
 寄付行為のようなものは、そもそも学校として取り組むべきかきびしく精査します。

★以上で、かなりの労力が削減されます。

② 会議改革

ダラダラ会議はやめたいです。
そもそもこのような会議は、議題の選別がなされていないことが多く、会議に対する教職員の意識が変わっていないことが要因。こんな改革をしていきたいです。

ア 議題を整理する

会議が長引く要因の多くは、協議事項(児童のために教育活動をどう設計していくか)、報告事項、連絡事項の選別がなされていないことです。こんなポイントで進めてみます。
まずは、会議にかける議題を選別する大方針から。

職員会議は協議することのみ。

…と、このくらい、思い切ってみてはどうでしょうか。その上で…。

報告事項や連絡事項は、週1回程度の手短な打ち合わせを設け、必要最小限の人数で行いましょう。
行事運営などについては、まず担当者がマニュアルを作成します。それを会議前に全員で共有し、会議の際に読む時間を取らなくていいようにします。各人はマニュアルを事前に確認し、疑問点や変更すべき点があったら職員会議のときに発言します。
発言は1回あたり1分以内を目標とするよう、管理職が進行係となって皆を促します。
職員会議での協議事項は、何を協議するのか、具体的に示します。
 例えば、運動会において集団競技はどうあるべきか、学習発表会の発表のしかたはどうあるべきかといったテーマを設定し、具体的な原案を出して協議します。

★これだけで、会議に要する時間は半分になります。

イ 意識改革を促す

会議を早く済ませるお膳立てをしたとしても、会議の参加者の意識が変わらなければ、なかなか効果も出ません。
こんな風景を見たことはありませんか?

「たいへん貴重な役に立つお話を拝聴し…」など、前置きが長い!
整理されていない文書を読む(または読ませる)。
「ここは大事なので『ねらい』から読みます」など、各人が黙読すれば済むことを音読する。
「こんないいお話を聞いたので、お時間をいただいて報告します」と直接的な関係のない話をする。

丁寧にコミュニケーションしたい、というのも分かりますが、まずは徹底的に無駄を省き、時間と心の余裕を生み出しましょう。その後で心に響く話をしたほうが、よほど相手の心に届きます。

報告が必要な場合、必ず3分以内に収める 
質問は前略でズバリ聞く
回答も質問に対することだけをズバリ答える 

「会議は参加者全員の大切な時間をいただいているのだ」という意識をもつようにアドバイスをしていきたいです。

★短く整理された質疑応答のほうが、すっと頭に入ります!

ウ とにかくコーチング!

もしかすると、会議の手法や教職員の意識改革については、管理職がコーチしないことがいちばんの問題かもしれません!
法的には職員会議は必置ではありません。最終決裁は校長が行います。そのため、会議を行う意味というのは、職員全員が同じ情報や問題を共有し、同じ方向を向いて学校を経営していけるようにするという、マインド的な部分こそ大事なのではないでしょうか。
「最終決裁は校長なのですから、校長が決めやすいよう事項を収れんするのが会議の目的です」と、言い換えてもよいかもしれませんね。そのために、「ズバリ質問」「要点回答」ということを前提に、みんなをコーチングしていきましょう。
時短や要点化という意味では、みんなで立ったまま会議をするのもよい方法です。
これで、自然と会議時間が短縮できます。

★管理職が重要な鍵を握っています。

③ 校内外アウトソーシング

学校に配置された人材の仕事内容を精査し、教員がしている業務を分担していきます。
印刷業務、学級事務補助、学級費の管理、清掃活動などを依頼していきます。
また、地域の皆さんから学校ボランティアを募り、畑や植栽園、花壇などの管理をお願いするのも非常に効果的です。地域によっては、これが予算化され制度化されているところもあります。
中学校では、部活動顧問をアウトソーシングでどんどん外の専門家にお任せしていますし、同じような発想で小学校も進めていきたいです。

★授業づくりや児童と接する時間へ力をかけていくことができます。

いずれにしても、まずリーダーの管理職が動けば、時間差でフォロワーもどんどん動いていきます!

3 学校現場最前線(ミドルリーダー・ベテラン層)ができること

学校の業務では、授業準備や評価事務以外では、実際の分掌部による仕事が多くを占めます。
バタバタ会議、バタバタ準備、バタバタ運営が心を慌ただしくします。
具体的な対策が必要です。

① 年間の活動を見据える

自分の分掌部がいつ、どんなことを、どんなふうにすべきか見通しておきます。
ミドルリーダーは、3か月前から準備を始めておきます。
誰にどういう分担で仕事をしてもらうかを見通しておきます。
学校のサーバーに置いてある記録画像などを調べておき、それを分掌部のチームで共有化します。

★これだけでバタバタ感がなくなります。

② 初めての担当者へのサポート

分掌部長のミドルリーダーが、初めて担当する人へのコースガイド(伴走)をしていきます。
先輩が経験則からアドバイスをしていくと、新人も仕事の見通しが立てやすくなります。
一人でイチから資料をひもといて始めるのは、時間の無駄遣いとも言えます。
学校行事や活動における、企画運営の仕事もしっかり分担を決めていきましょう。人それぞれ知識やスキルが違うので、まずはリーダー役や全体に担当を割り振り、仕事を進めながら状況に合わせて微調整していくとよいでしょう。
何も知らない新任の教員に丸投げしたら、とんでもない時間と負担がかかります。「人を育てる」という名目であっても、無茶は禁物です。

★このちょっとしたサポートの一手間が全体的な省力化につながります。

③ 校内研究(学校の実践研究)の大風呂敷設定をやめる

ア 対時間効果(タイムパフォーマンス)を再考する

研究主任あるいは推進委員は、タイムパフォーマンスを念頭に置きましょう。
例えば、時間をかけて「研究紀要」というようなものを年度末に作成することが多いのですが、はたして「紀要」の名に値するような研究をしているでしょうか?
一般的な学校では、普段より少し頑張って授業準備をし、実践をしていると思います。確かに、そこから授業スキルの向上があったり、授業改善のポイントが得られるなど、確実な成果はあると思います。しかし、新たな知見を提起するための「紀要」レベルになることは、珍しいのではないでしょうか。
だったらもっと気軽に、校内研究サークル的に研究を行い、それを整理するだけで十分ではないでしょうか。そう、「研究紀要」ではなく「校内研究のあしあと」といったライトなもので十分です。

イ 思い切って「授業を語る会」にしてしまう

得られた知見や効果のある授業改善のポイント、あるいは、例えばタブレットを使った授業のあり方など、日常的な授業改善を目的とした、軽い研究でも十分に役立ちます。
まして20代の若手教員が多い現代の学校では、授業スキルの向上がいちばんの課題なので、大きなテーマに基づいた研究よりも、ちょっとした小技のほうがより効果的だと言えるでしょう。

ウ 指導案の書き方をシンプル化する

若手教員が授業づくりにしっかり取り組み、指導案の書き方を学ぶことは重要です。
しかし、それは他ならぬ若手教員のためのことです。教材研究や授業準備にかける時間は十分必要ですが、研究授業を見る参観者のために詳細な指導案を作成する、ということは避けましょう。
最低限必要なことは、
<ねらい><学習環境><指示・発問><授業づくりのポイント><評価法>
です。これで十分でしょう。

★校内研究体制改革は喫緊の課題です。旧態依然の方法では効果が上がりません。教職員それぞれのもつスペックを最大限に生かす方法を考えていきたいです。

④ ICTを活用する(ほんとうに効果が上がるシステムをつくる)

今年度初任者指導でお伺いしているM小学校では、教務主任を中心としてICT化が進んでいます。

 Googleを利用して、教職員向け学校ポータルサイトを作成する
 一年間の職員会議等の大枠のスケジュールをつくり、そこに各分掌部のテーマ一覧を入れ、提案要項(PDF)のリンクを張っておく
 週時程、月計画、年間計画をスプレッドシートで作り、全員で共有して都度都度編集していく
 健康観察簿を作成し児童の家庭から体温や身体状況をアップしてもらい共有化する
 教職員チャット機能を使い常に連絡を取り合う
 大型モニターに一日の日程や注意事項を映し出している
  職員室のパソコンにもう一つモニターを設置し、デュアルモニターにする

情報は全て、みんなで共有できるファイルにします。事前共有のクセがつけば、出席者はスキマ時間で資料に目を通しておけますから、印刷などの手間はもちろん、会議内のムダ時間も大幅に減ります。
モニターが2つあると便利です。一方で作業しながら、もう一方で資料を表示したり、チャット機能で連絡をし合ったりと、同じ時間で効率は倍になります。
年間計画からリンクで週時程に遷移し、そこに出張の予定を書き入れるなど、事務作業や全員の行動予定の把握も容易です。
さらに、以前から利用している校務支援ソフトで評価事務や生徒指導の記録をするだけでなく、市内の各学校および各個人と綿密につながり、連絡を取り合うことができています。
出張による会議もどんどん減らすことができています。

★内と外のICT化による2つの機能をうまく使いこなせば、おそらく事務量は以前の半分程度まで減らすことができるようです。相当時間、ゆとりができたということです。

システムの導入に手間がかかりますが、一度始めればあとには戻れないということです。

ミドルリーダーのちょっとした努力で、学校全体の省力化につながります
これらはぜひ進めていきたいです。

4 若手教員ができること

ア  ゆとりのある時期に激務期のことをやる

評価作成時期や学期末・年度末には一気に忙しくなります。
ゆとりのある時期に進めておきたいです。
行動面の評価や所見などは、「とりあえずデジタルで書いて、置いておく」ようにします。
あとで微調整したほうがずっと効果的です。
また、卒業担任(6担)は卒業時期の事務に関わることを3か月前にやっておきます。
夏期休業中、年末年始休業中の、学校での事務時間を有効に使うようにしましょう。

★先手必勝です!

イ  期限を意識する

「締め切り」は絶対守りましょう。
一人が守らないと、点検する人が困ります。どんどん点検者の仕事時間が遅くなります。
万が一遅れるときは、点検者に仕事の見通しを変えてもらわなければならないので、なぜ遅れるか、いつまでならできるかを必ず伝えます。
締め切りや期限を守ろうとすると、自然に時間を管理する感覚が磨かれ、集中して事務をこなすことができるようになります。

★締め切りや時間を守ることは、相手を大切にすることです!

ウ 先行実践をリサーチする

自分がやる授業に対して、ゼロから教材研究を始めるのでは時間がかかりすぎます。
まず、参考となるサイトや書籍に目を通しましょう。先達の実践を下敷きにするほうが、新たな自分なりのアイデアが出やすいです。
若手教員に今必要な力は、何でも自力で頑張ることより、困ったときに誰かを頼れるコミュニケーション力や、分からないことを素早くリサーチする力、そして正しい情報を自分のものにする力です。
そして、少しでも多くの余裕ある時間をつくり、授業者だけにしかできない児童との接し方に力を注いでいきます。
ただ、ゼロから苦労して授業づくりをする体験や、教材研究論や発問論などの書籍をひもとき、コンセプトを学ぶことも将来的には素晴らしい財産になりますので、長期休みなどで余裕のあるときにチャレンジしてみましょう。

★まずは情報ゲット! それからです

エ 学級通信に詰め込む

学級通信を連絡機能だけに特化してはもったいないです。
教室でのエピソードや授業の様子、児童の発言や感想なども通信に書いておくのです。
そうして後で見返すと、自分の実践のデータベースとなり、成績評価の補助資料ともなります。
ICTを活用し、画像をふんだんに盛り込めば、画像記録として後々活用できることも多いです。
働き方改革の一環で、学級通信を省力化するという意見も散見されますが、児童の姿を記録するせっかくの手段をなくすなんて、ちょっと違うのではないかと思います。
わたしの知り合いに、年度ごとの学級通信やプリント類をファイル化して保存している担任がいます。
様々な場面で、さっと以前の実践を見返して流用し、実に上手に時短していますよ。

★学級通信作成は手を抜かないで、一石二鳥、一石三鳥をねらいます!

若手教員がこれらを実行すると、事務遂行所要時間の「時短」につながっていくだけでなく、周囲も巻き込んでスキルアップし、学校全体の働き方改革につながっていきます。

働き方改革について、管理職(教頭)、ミドルリーダー・ベテラン層、若手教員の3つの視点でみてきました。
まず動くこと、まずやってみることです。
アイデアはいたるところに落ちています。

事例集を読み合う
職員全体でブレーンストーミングをする
アイデアを集める機会をつくる
プロジェクトチームをつくる

などなど取りかかりには様々な方法があります。
トヨタ、ヤマトホールディングスほか民間企業の手法に学ぶこともいいですね。
チーム学校を本気で進め、改革に挑んでいきましょう!

なお、文科省の以下のサイト
全国の学校における働き方改革事例集(令和5年3月改訂版):文部科学省 (mext.go.jp)
などは、発想の宝の山です。
是非自校で取り組めるものがないか、参考にしてください!

イラスト/坂齊諒一

みなさんも こんな事例が効果を生みました…。という実践があればお寄せください!


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、そのうち15年間管理職も務めて退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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