新たに教頭(副校長)になったあなたへ~学校参謀の 気配り 目配り 心配り~
<特別付録 教頭年間カレンダーつき! 記事の最後をご覧ください>
教頭職とは「学校にいちばん早く来て、いちばん最後に帰る人」や「情報が学校でいちばん集まる人」であり、「難しい判断をしながら、日々命を削って生きている人」ではないかと思います。
その激務ゆえ、健康を害する一歩手前で踏みとどまり、頑張っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
わたしは15年間、教頭として奉職してきました。辛いことも多かったですが、楽しいことや嬉しいことのほうが、数限りなくあったように思います。コツをつかむと実にやりがいを感じられる職です。教頭職の経験者たちで思いや悩みを共有し、ともに良い学校づくりを目指していきませんか?? これからキャリアアップを目指している教諭の皆さんも大歓迎! それがGKC(がんばれ教頭クラブ)です!
【連載】がんばれ教頭クラブ
目次
はじめに
これまでの来し方をちょっと、思い出してみてください。
学級担任としてスタートし、多くの児童生徒と過ごし、自らの実践を深めていった日々。
やがて、もっと広い視野で経験を活かしたいと思ったから、あなたは管理職の道を志したのでしょうか。
それとも上司や先輩が、あなたの可能性を見いだして、背中を押してくれたのかもしれません。
いずれにしても、いざ教頭(副校長)として全職員を見渡せる席に座ったら、あまりの景色の違いに面食らったのではないでしょうか。そうです。その視座はマネジメントを行うための席なのです。これまでとは異なる、「マネジメント」という新たな仕事が始まります。
教頭(副校長)は、一部の学校を除いては、ほぼ「一人職」です。会社組織でいえば副社長兼取締役みたいな感じですね。
社長の指示というのは、たいてい抽象的で曖昧です。営業や開発など、専門的な仕事をしている社員たちには、そのまま伝えても理解されません。自分の経験をもとに、そうした指示を分かりやすい言葉に変え、具体的な仕事をしている社員たちに伝えます。
同時に、様々な現場の意見をとりまとめ、社長が判断できるように説明しなければなりません。さらに部下の評定をし、人間関係などの不平不満も改善しなければなりません。
1 マネジメントの最も大切な要素 …教職員指導
校長は学校の経営者であり、最高責任者ですが、必ずしも現場に精通しているとは言えません。
実務を掌握し、様々な現場からの情報を集約できる立場にあって、直接的かつ具体的に指示を出せるのは教頭だけです。
だからこそ、教職員とのつながりを大切にしましょう。
仕事への意欲を高め、より楽しい学校にし、児童が笑顔で過ごすことができるか、それは教頭(副校長)の最大の仕事です。
そうです。「マネジメント」とは、校長の補佐で実務を司ることではなく、教職員指導なのです。
中核となるポイントは、「気配り、目配り、心配り」です。様々な考え方がありますが、本稿では以下のようにとらえます。
相手の立場に立ち、次に起こることを想像しながら行動すること
いろいろなところに注意を行き届かせること。いつもと違うことはないか注意すること
相手への思いやりを持ち、相手にとって最良と言える配慮を行うこと
「気配り」と「心配り」は似ているように思われるかもしれませんが、その視点が異なります。
「気配り」は相手の視点から物事を考えること。そして「心配り」は、自分の「教頭」という立場から、いかにして相手を守り、指導していくかということです。
2 副官・教頭(副校長)としての重要な仕事…校長への報告・情報伝達
教頭(副校長)は、校長が学校経営上の判断を下すための情報収集役として、判断の根拠となるような情報を常に伝えていきます。簡潔、明瞭に、しかも質問に即答できるように情報を整理・精査しておかなければなりません。
さらに緊急性を要するものは、得た情報を自分の中で留め置かず、まず正確に伝えるという姿勢も必要でしょう。
日常的には、こんな姿勢を持つようにしてみてください。
①自分で情報を集める
職員室の中央部にただ座っていても、情報は集まるようでいて集まらないです。「わたしは興味を持っています」という態度を示すことで、情報収集の糸口をたくさん作れますよ。校舎内外を巡視したり、地域コミュニティの会合に出席したり、児童の交通安全に協力していただいている方々とお話ししたりと、自分から情報を取りに行く姿勢を作りましょう。
②話しやすい空気感を出す
実際は忙しくとも、暇そうにニコニコしていたり、冗談を言ったりしていると、相手は「話しかけても大丈夫そうだな」と思います。そして、話しやすい相手には、学校の中での細かな気づきや変化、児童のようすなど、小さいがしかし大切なことを気軽に話してくれるようになります。
3 学校参謀・教頭(副校長)としての日々の仕事 …早めの月別指導
★特別付録「教頭(副校長)職 職員指導実務カレンダー」について
教頭(副校長)がすべきことは、だいたい何月にはこんなことをする、という全国共通のものが多いです。
以前、わたしは勉強会で実務カレンダーを作ったことがあり、仲間の教頭せんせいたちに配って、各々アレンジして使ってもらっていました。カレンダーの要素は、
①学校運営全般
②不審者・安全対策
③児童の把握・児童への指導
④教職員関連
⑤情報
です。今回付録として頒布しますので、ぜひ皆さんもアレンジしてご活用ください。
学校を動かすときは、担任が児童に指導するのは1週間前。分掌部で協議するのは1か月前が標準です。つまり教頭(副校長)が主任や分掌部長に指示を出したり指導したりするのは、約45日前となるでしょうか。
そうすると、2か月前には校長に対し、教職員への指導ポイントなどを相談しておく必要があります。例えば、夏休みの指導ポイントなどは、6月はじめ頃に見通しをもっていなければならないわけです。そうでないと、やっつけ仕事になり、危機や事故の予防にならないばかりか、担任も効果的に指導することができなくなります。
実務カレンダーに示している指導時期よりも、なるべく前もって取り組んでおくようにしましょう。
おわりに
ところで、教頭(きょうとう)職とはどうあればいいのでしょうか?
同じ読みでこんなワードもあります。
ちょっとお遊び的にこれらを解釈してみます。
共闘 …幾多の課題難題に教頭同士高め合って挑み闘う!
郷党 …「派閥」の意味がありますが、そうではなく、教頭会という職能集団で高め合う!
競闘 …良い学校づくりを目指して、教頭同士が実務力を競い合う!
驚倒 …教頭としての仕事ぶりを周囲の人々に驚いてもらい、教職員のモデルとなる!
橋灯 …学校という橋を行き交う人が迷わないように灯火となる!
学校単位で見れば、教頭(副校長)は「一人職」。しかし、何かしらの形で「チーム」となり、お互いを高め、励まし合い、協同でできるところはどんどん進めていくべきです。
是非、同じ境遇、立場にある者同士が手を取り合って、「チームメイト」として自らを成長させていきたいものですね。これが『がんばれ!教頭クラブ GKC』のコンセプトです!!
次回は、「学校参謀」として動くための姿勢などについてふれていきます。
現職の教頭(副校長)の方、もと管理職の方、これから管理職を目指そうとしている方で、ぜひ共有したことがあるとき、ぜひメールを寄せてほしいです。どうぞクラブ発展のためによろしくお願いいたします。
<ダウンロード特別付録>
筆者が教頭時代に制作した年間カレンダーです。編集可能な形式になっていますので、皆さんもぜひダウンロードしてご活用ください。
>>教頭職が取り組む危機管理(職員指導)カレンダー2023
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、そのうち15年を教頭職に。定年退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。