小1 国語科「としょかんへいこう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「としょかんへいこう」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/お茶の水女子大附属小学校・大村幸子
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
読書は、様々な知識や情報を得たり、自分の考えを広げたりすることができる、とても重要な言語活動の一つです。
本単元は、読書が自分の知識や人生を豊かにすることを知り、自ら進んで読書に親しむ資質・能力を育てることを目指した小単元となります。
日常的に読書に親しむためには、図書館の活用が欠かせません。
そこで、本単元では、図書館の基本的な利用方法を知り、図書館の活用を起点に、本と親しもうとする資質・能力を育てることをねらいとした指導を行います。
例えば、図書館にはどのような種類の本があるのかということを知らせ、絵本や図鑑などの様々な本に親しむことができるようにしていきます。また、図書館での過ごし方や借り方について考えることで、積極的に図書館を利用することができるようにしていきます。
こうした指導を通して、様々な種類の本があることを知り、興味のある本を選んで読むことができる資質・能力を身に付けられるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元は、図書館には様々な本があることや図書館の使い方を知り、興味のある本を選んで読んだり、読んでみたい本を選ぼうとしたりすることをねらいとしています。
そのために、まずは教師が図書館の本を選んで読み聞かせをしたり、図書館の利用方法を伝えたりしながら、図書館や蔵書に親しむ機会を作るようにします。
その際には、学校司書と連携して、児童の発達や興味関心に合った本を事前に選んでおいてもらったり、図書館の配置図を提供してもらったりするとよいでしょう。
このように、図書館の基本的な利用方法を知った上で、もっと読みたい、図書館に行きたいという主体的な態度を醸成するために、本単元では、第2時に、好きな本を友達に紹介するという言語活動を設定することとしました。
本との出合いを友達に伝えたい、あるいは、友達が紹介してくれた本を探したいという思いが、本への興味関心を高め、読書に親しむ資質能力の育成につながっていくことを期待しています。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 好きな本を友達に紹介する
主体的な学びを生み出す上で大切なことは、活動の目的を明確にして、見通しをもって学習を進められるようにすることだと考えます。そこで、本単元では、好きな本を友達に紹介するという言語活動を設定することとしました。
紹介としましたが、ここでは、紹介するという言語活動を指導の重点とはせず、本を読んだり選んだりする楽しみの一つとして、本について語り合う時間として設定します。
読書をする目的は、大きく二つあると考えます。
一つは、絵本や物語などの文学作品を読み、その想像の世界に浸る楽しさを味わうこと、もう一つは、新聞や図鑑など目的に合った資料を読み、必要な事柄を調べたり情報を得たりすることです。
前者に関わる本を選んだ場合には、想像の世界を友達と共有し、ともに楽しむ時間となるでしょう。
後者にかかわる本を選んだ場合は、知らないことを教えてくれた本や友達に関心を寄せ、自分の世界を広げることを楽しむ時間となるでしょう。
好きな本を友達に紹介する言語活動を設定することで、本を手に取るという活動が駆動し始めるだけでなく、本への興味・関心が広がり、もっと知りたい、もっと探したいという主体的な読書活動、ひいては主体的な学びにつながっていくことが期待できます。
〈対話的な学び〉 本の好きなところを伝え合う
低学年の時期に、児童が本の世界の楽しさを十分に味わったり、様々なジャンルの本に出合ったりする機会をもてるようにしたいと考えます。そのためには、友達同士の交流だけでなく、学校司書や担任との交流も重要です。学校司書や担任が、本をテーマに対話する姿を見せることができるとよいでしょう。
例えば、学校司書や担任が、児童一人一人の考え方や感じ方、興味関心を捉え、ぴったり合う本を紹介しながら、好きなところを伝え合うことで、本を読むことの楽しさを味わうことができるでしょう。
逆に、興味関心と少しずれた本を紹介することで、新しい世界に対して関心をもち、対話的に自分の考えを広げ深めることができるかもしれません。
読み聞かせをしたり、児童が自ら絵本や図鑑を手に取ったりできる機会を増やしながら、本についての対話が生まれるように、児童に働きかけていくことが大切です。学校司書や担任と「好きなところを伝え合った」という経験が、児童同士の対話、本との対話につながっていくと考えます。
〈深い学び〉 学びを実生活とつなげる
深い学びに向かうためには、学んだことを実生活に生かしていけるような環境を整える必要があります。
例えば、図書館の基本的な利用方法を学んだ後は、実際に書架を眺めたり、本を借りたりする時間をとることが重要です。児童は実際に作業をしながら、教えられたことを実際の活動と結び付けて、より深い理解へとつなげていくのです。本を選んだり借りたりするのに時間がかかる児童も多くいますが、十分な時間を確保することも大切です。児童はそれぞれのペースで本と対話をし、読書についての考えを深めていきます。
また、児童の興味関心を満たすことができる様々な本を身近に揃え、いつでも手に取ることができるようにしておくことも大切です。図書館が児童にとって身近な場所になるよう、図書館の利活用を視野に入れながら、他教材との関連を図っていくとよいでしょう。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)デジタル書架の活用
図書館との出合いを楽しいものにするために、図書館の書架を写真にとり、デジタル書架として、画面上で見せる活動を行うとよいでしょう。
デジタル書架ライブラリーを見ることで、どのような本があるのか知ることができます。
また、画面を拡大すると、背表紙だけではありますが、本の題名を確認することもできます。
また、図書館の配置図などを写真に撮り、端末で見ることができるようにすると、本の種類や本棚の位置を確認することもできます。
端末を利用することで、全員が揃った状態で一斉に伝えることができるのでとても便利です。
図書館の配置や雰囲気などをあらかじめ知らせることで、実際に図書館に行ったときに、見通しをもって活動することができるでしょう。
(2)個に合わせた言語活動の充実のために
好きな本を紹介する際には、本の表紙を写真に撮って、それを見ながら行うようにするとよいでしょう。実物を見ることができれば一番よいのですが、手元に置いておけない場合や、移動が伴う場合などでも、端末を活用して紹介し合うことで、本をより身近に感じることができ、「次回読んでみよう」「図書館へ行ってみよう」という思いにつなげることができるでしょう。
また、表紙の写真は、読書の記録として活用することもできます。それぞれの読む量や好みなどを知ることもできるので、個別最適な学びに向け、個々の児童の実態に応じた活動につなげることができます。
6. 単元の展開(2時間扱い)
単元名: としょかんへ いこう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 学校図書館へ行き、図書館巡りをして、図書館の様子を知る。
② 学校図書館でのやくそくについて考える。〈 端末活用(1)〉
・第二次(2時)
③ 読みたい本を選んで、読書に親しむ。
④ 本の好きなところを友達に紹介する。〈 端末活用(2)〉
全時間の板書例と指導アイデア
● 端末活用 ~図書館の配置図やデジタル書架の提示~
イラスト/横井智美