『総合教育技術』2022年秋号「学校管理職試験 論文講座」優秀論文発表【校長編】

『総合教育技術』2022年秋号にて募集した「学校管理職試験 論文講座」の優秀論文を発表します。

<秋号の課題> GIGAスクール構想に基づく教育活動の充実

コロナ禍によるGIGAスクール構想が加速化され、学校に1人1台端末が整備されました。今は、ICT環境を活用した学びの質の向上が期待されています。あなたは校長として、ICTを活用した教育活動の充実にどのように取り組みますか。具体的に述べなさい。


GIGAスクール構想/個別最適な学び/オンライン授業/意識改革/情報活用能力/ICT活用指導力/協働的な学び/研修/授業改善/Society5.0/プログラミング教育

優秀論文

GIGAスクール構想により整備された新たなICT環境の有効活用は、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実により、「主体的・対話的で深い学び」の実現に迫るものである。そのために重要なことは、ICTを活用した授業改善を推進することと、授業の担い手である教職員の能力と意欲を高めることである。私は校長として、以下の取組によりICTを活用した教育活動の充実に取り組む。

1 「ICT活用のスタンダード化」による授業改善

ICTを活用し、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実を図るには、日々の授業研究を推進し、子どもの学びの姿から授業改善を図ることが重要である。

現任校の授業研究では、昨年までに積み上げた授業実践の成果の上に、ICTを活用することで「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指して授業改善を図っている。授業研究を通して、“ICTをどのような目的・方法・場面で活用できるか” を明らかにすることを目指している。

私は、これをさらに発展させる。研究主任に指示し、年度初めに「主体的・対話的で深い学び」を実現するためのICTを活用する公開授業を実施させる。それをもとに、目指すべき具体的な学びの姿を全教職員が共通理解できるようにする。そして、各学年部でチームをつくり、全教員が公開授業を行い、研究推進部をファシリテーターとした授業検討会を実施させる。教務主任、研究主任に指示して、定期的に研究推進部会を開催し、各学年部の公開授業の成果を「一斉学習」「個別学習」「協働学習」のカテゴリーで整理させる。この成果を「ICT活用のスタンダード」として蓄積させ、それを生かした授業改善を行っていく。私は、ICTの活用自体が目的とならないように指導および助言を行い、教員を励ます。

2 ICTを活用した授業改善に前向きに取り組む気運の醸成

「主体的・対話的で深い学び」の実現には、実際に授業を行う教員の力量を高め、いかに意欲をもって主体的に取り組ませるかが重要である。「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実にはICTの活用は不可欠であり、活用を通してその効果を実感し、前向きに授業改善に取り組む気運を醸成することが重要である。

前任校では、校長のリーダーシップのもと、「習うより慣れろ」の考えをもとにICTを授業で活用することを奨励していた。失敗を恐れず、まずやってみることで、苦手意識をもつ教員もICTのよさを実感でき、ICT活用力の向上につながった。

私はこの経験を生かし、ICTは授業改善を進める大きな原動力になることを教員に周知する。研究主任、情報教育主任に働きかけ、授業でICTを活用する意義を話し合う場を設定し、教員に浸透させる。そして、教職員が必要性を感じて主体的に研修を行えるようにする。また、授業改善に取り組む教員の不安や悩みを組織的にサポートすることで、ICTを活用した授業改善に前向きに取り組む気運を醸成していく。

ICT活用を推進することで、ネット依存、ネット被害などの多くのマイナス事例があることから、情報モラル教育の充実も急務である。私は校長として、ICT活用の負の部分も踏まえ、子どもの心理状況をきめ細かく把握した上で、「主体的・対話的で深い学び」の実現を全教職員で共有し、ICTの効果的な活用による教育活動の充実を図る学校経営に全力で取り組む覚悟である

(新潟県・K氏・40代)

診断とアドバイス

Society5.0時代を担う人材の育成のために、GIGAスクール構想の推進は学校経営における喫緊の重要課題に位置づけなければならない。
推進のポイントは、①校長をはじめ教職員によるICTを活用した教育活動の質の向上、②ICTを活用した授業研究による教員の指導力の向上、③子どものICT活用能力の育成である。しかし、新型コロナウイルス感染拡大によって本構想が加速化したことによる各学校の戸惑いや不安が窺われ、応募論文も的を射た具体策の提示は少なかった。
本論文の主唱の1点目は、ICTを活用した授業研究を重視し、具体策として公開授業をもとに全教職員の共通理解を図っていることである。さらに、ICTの活用場面を「一斉学習」、「個別学習」、「協働学習」のカテゴリーで整理し、「ICT活用のスタンダード化」して蓄積による授業改善を進めたことである。
2点目は、苦手意識や不安を持つなど様々な教職員の実態をもとに研修を重視し、ICT活用の意義、必要性などに組織的に対応していることである。いずれも、校長のリーダーシップのもと、研究主任と情報教育主任に指示し、組織的なサポート体制を窺うことができるのは好ましい。しかし、論文構成上、1と2の柱の見出しは、それぞれの具体策の内容としては検討を要する。また、1と2の記述内容は重複も多く、論文作成前の構想段階での吟味が望まれる。

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