「大谷翔平はあいさつをがんばった」全校朝会【校長講話】文例集 #2
全校朝会での校長講話といえば、校長先生にとって腕の見せどころです。とはいえ、毎月、子供たちの知的好奇心を掻き立てたり、子供たちの心を整えたりする内容を考えるのは苦労するもの。そこで、本連載(月1回公開、全11回)では、学級経営や学校経営に関する多数の著書をもつ俵原正仁先生が、実際に使用したスピーチの全文を公開します。5月は講話「大谷翔平はあいさつをがんばった」を取り上げます。
執筆/兵庫県公立小学校校長・俵原正仁
目次
5月のテーマはこう選ぼう
4月に引き続き、5月も校長先生の願いや思いなど、年間を通じて子供たちにがんばってほしいことを話題にします。ただ、1か月経過したこの時期は、子供たちの足りないところや伸ばしたいところも見えてきますので、4月に比べると、より具体的な話になっていきます。私の場合、子供たちのあいさつをもっと伸ばしたいと感じることが多いです。ということで、今回のキーワードは「あいさつ」です。
5月の講話「大谷翔平はあいさつをがんばった」全文
早いもので、4月も終わろうとしています。みなさんは、新しい学年、クラスに慣れましたか。4月には、「掛け算ができるようになりたい」「二重跳びを10回以上跳びたい」「本を100冊読みたい」「下級生から尊敬される6年生になりたい」(※1)など、1年間の目標を立てたことと思います。
ところで、みなさんは、大谷翔平という野球選手を知っていますか? 少し前の話になりますが、WBC(ワールドベースボールクラシック)という野球の世界大会で大活躍していましたよね。その大谷選手の高校1年生の時の話です。
みなさんが、4月に1年間の目標を立てたように、大谷選手も高校1年生の頃、こんな3年生になってみたいという目標を立てました。
ドラフト1位指名 8球団
自分の目指すゴールである目標を「高校を卒業するときに、プロ野球の8つの球団から1位指名を受ける」と決めたのです。まだ高校野球を始めたばかりの1年生にとっては、とても大きな目標です。でも、大谷選手は、この目標を夢で終わらせないために、ここで終わりにしませんでした。
この大きな目標を達成するための小さな目標や具体的に行うことなどを考えたのです。まず、9つのマスを準備して、真ん中に、「ドラフト1位指名 8球団」という大目標を書きました。そして、次に、周りの8つのマスにこの目標を達成するための小目標を考えました(※2)。
「スピード160km/h」というのは、「160km/hの球を投げられるようになる」という目標です。160km/hの球を投げることができれば、プロ野球から指名されるだろうということです。そして、次に、160km/hの球を投げるにはどうすればいいのか考えました。例えば、「肩の筋肉を鍛える」という感じです。
この8つの小目標の中に、「運」という項目があります。確かに、いくら凄い選手になったとしても、運が悪ければ、怪我をして、試合にも出ることができず、指名されないかもしれません。
でも、運をよくするにはどうすればいいのでしょうか。速い球を投げるためには、「体を鍛えて練習すればいい」ということは思いつきそうですが、これは、なかなか難しい問題です。大谷選手は次のように考えました。
周りの人が笑顔になることをすれば、自分の運もよくなる。
そして、次のようなことをすることにしました。
この中の1つに「あいさつ」があります(※3)。大谷選手は、あいさつをすることで、周りの人を笑顔にすることができると考えたのです。
校長先生も同じ考えです。笑顔であいさつをされると、なぜかあいさつされた側も笑顔になります。
校長先生は、朝、みなさんとあいさつをしていますが、毎日、みなさんから笑顔と元気をもらっています。校長先生も、みなさんに笑顔と元気を伝えることができればいいなという気持ちであいさつをしています。あいさつには、周りの人を笑顔にして元気にする力があるのです(※4)。
4月の最初の頃に比べると、〇〇小のあいさつレベルはどんどんアップしています。ただ、大きな声であいさつをするのは、まだちょっと恥ずかしいなという子もいるようです。最初は、目を合わせてペコっと頭を下げるだけでも大丈夫です。それで気持ちはちゃんと伝わります。
まず、自分ができることから、がんばってください。これからも、みなさんには、周りの人が笑顔になるあいさつをしてほしいと思っています。
これで、校長先生のお話を終わります。
ポイント解説
(※1) 教室を回って、実際に掲示されている目標を見て、そこからいくつかセレクトして話をすると、身近な話題として子供たちの聞く意欲が増します。
(※2) 大谷選手が使った目標達成シートは、マンダラチャートとも言われています。読者の先生の学校でも、全校朝会の後、「校長先生が話していた大谷選手のマンダラチャートに、自分の目標を書き込んでみよう」と、学級指導につなげてくれるクラスがいくつか出てくるはずです。
(※3) 「あいさつ」を取り上げるのではなく、「プラス思考」→「前向きにがんばろう!」や「部屋そうじ」「ゴミ拾い」→「そうじをがんばろう!」というような話の流れにすることも可能です。
(※4) 「実は、あいさつにはこの他にも……」という感じで、さらに話を深めていくという流れもあります。「あいさつをすることで、いい印象をもってもらえる」「あいさつをすることで絆が深まる」など、具体例を示しながら話をしていきます。
私は、パワーポイントなどで、スライドショーを作って話をしています。「音声(言葉)+映像(文字・写真)」で、より多くの子に話の内容が伝わるようになります。全校朝会を運動場で行っているのでなければ、ぜひ、スライドショーを作成してください。子供たちの興味関心もぐっと高まり、しっかり話を聞こうという姿勢になります。
俵原正仁(たわらはら・まさひと)●兵庫県公立小学校校長。座右の銘は、「ゴールはハッピーエンドに決まっている」。著書に『プロ教師のクラスがうまくいく「叱らない」指導術 』(学陽書房)、『なぜかクラスがうまくいく教師のちょっとした習慣』(学陽書房)、『スペシャリスト直伝! 全員をひきつける「話し方」の極意 』(明治図書出版)など多数。
イラスト/イラストAC