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はたして「何をおいても、まず学級経営」?【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話㊱】

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全国「授業実践レポート」 取材こぼれ話
はたして「何をおいても、まず学級経営」?【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話㊱】

学級経営について、多様な先生方の意見から考える

学級経営は、多様な人格をもった子供たちが教室という場所で共に学んでいくためには必要なことだと思います。ただし「学級経営」が、学びから離れた特別なものになってしまったら、とても空疎なものになってしまうのではないかとも思うのです。今回は、そのような学級経営にまつわる多様な先生方の声をつなぎながら考えていくことにしましょう。

学級経営が授業につながる話がなかったことに違和感

学級経営はとても大切だと言われます。そのことを否定するつもりはまったくありません。ただ、学級経営の重要性を語る先生のなかには、「何をおいても、まず学級経営」と言わんばかりに話される方がいるのには、少々違和感を覚えるのです。

これはもう十数年前になりますが、学級経営に力を入れているというある先生に取材をお願いしたことがありました。そこでは、学級経営を行うための多様な技術と、そこでの子供たちとの関わりについて話をしてくださったのです。その内容自体は何も間違ったものではないし、記事としても悪いものではなかったと思っています。ただ、取材のなかで授業につながるお話がなかったことにとても違和感を覚えたのです。「この先生は、子供たちが1日の[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]を過ごす学校教育のなかで、学級経営だけをしているのだろうか?」と。もちろん、学級経営についての取材だったので、話が学級経営に終始するのは仕方ありません。ただ、それが子供たちの日々の学びに、さらには授業での学びにどうつながっていくのかという話がまったく出てきていないことに、とても強い違和感を覚えたわけです。

実はその取材の数年前、ある大学の専門家が、全国の先生方の働き方に関するアンケート調査結果を基に、ある疑問を投げかけておられました。それが、私の違和感に拍車をかけたのだと思います。その専門家の先生のお話は、だいたい以下のようなことです。

アンケートの結果によると、半数を大きく超える大多数の先生方が、多忙なため子供と触れ合う時間がないと感じている。確かに、先生方が日々多忙なのは事実だ。しかし、1日に6単位時間前後も一緒に授業を行っているのに、そこでは子供たちと触れ合っていないのだろうか…。つまり多くの先生方は、子供と触れ合うのは休み時間や給食の時間、あるいは学級活動の時間くらいだと思っているのではないか、そうではなく授業のなかでももっと触れ合うことができるのではないか、という問題提起のようなものだったのだと思います。

ここで、現行学習指導要領を見てみることにしましょう。総則第4の1の⑴には、「学習や生活の基盤として、教師と児童との信頼関係及び児童相互のよりよい人間関係を育てるため、日頃から学級経営の充実を図ること」とあります。つまり学級経営は、「学習や生活の基盤として」の「人間関係を育てるため」に行う必要があるわけで、それ自体が目的ではないわけなのです。さらに言えば、学校生活のためだけに学級経営をしているわけではなく、学習の基盤になることも求められているわけです。そこを見落としてはいないだろうかというのが、私の感じた違和感の正体だったのだと思います。

ただし、先の先生の取材を行ったときの平成20年改訂版の学習指導要領を読み直してみると、学級経営に関する記述は次のようになっていました。総則第4の2の⑶には、「日ごろから学級経営の充実を図り、教師と児童の信頼関係及び児童相互の好ましい人間関係を育てるとともに児童理解を深め、生徒指導の充実を図ること」(小学校)とされていたのです。つまり、この記述を読むだけでは、その人間関係を育てることの目的が、人間関係の育成や児童理解、生徒指導の充実のように読めなくもないわけです。それが現行のように改訂されたというわけですね。

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