小3 国語科「わたしたちの学校じまん」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「わたしたちの学校じまん」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小三 国語科 教材名:わたしたちの学校じまん(光村図書・国語 三下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都練馬区立大泉学園小学校校長・加賀田真理
執筆/東京都大田区立田園調布小学校・小木和美

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、相手や目的を意識して、「理由や事例を挙げて、話を構成する力」と、相手を意識しながら、「伝わるように工夫して話す力」の育成をめざしています。

理由や事例といった発表の内容を考えること、話の中心を意識して組み立てを考えること、組み立てを生かして発表原稿を作成すること、話の中心や話す場面を意識して話し方を工夫することなどの活動の中で、自分の考えをまとめ、友達とアドバイスをし合います。
それらの工夫を自覚し、今後も使える力として高めていけるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

評価規準

3. 言語活動とその特徴

自分たちの学校のいいところを「じまん」と称してビデオメッセージで発表する活動です。
伝えたい内容を選択し、どうしてその選択をしたのか理由を考え、原稿を書きます。
ふさわしいと思う資料を用意し、話し方を工夫しながら発表する言語活動を設定します。各学校の実態に応じて形は異なりますが、可能な限り、実際に観客を得て発表する経験が積めるように、他教科や行事との関連も考えて単元を設定しましょう。学年の先生や管理職の先生とも、早めに相談して計画を立てておくとよいでしょう。

生活の中から主体的に課題(学校の自慢)を捉え、メッセージを相手に伝えることを意識しながら発表の内容を考えていきます。グループの中で内容や理由、資料を検討したり、他のグループと発表の様子を見合ったりして、どのようにしたら相手に伝わる発表になるかを検討し、学んだことをまとめます。

今回は3、4人のグループでチームとなって一つのことについてビデオメッセージにまとめる形式ですが、児童の実態や発表の場面によっては、一人ずつ発表する形も考えられます。その場合でも、グループを作るなどしてお互いのよさを認め合える場面を設定するとよい学びになるでしょう。

単元の中では、1人1台端末の利用に効果が期待できます。
話す内容を集めるとき、選択するとき、組み立てを考えるとき、原稿を書いて修正するとき、発表の練習をするときなど、活用場面が多く考えられます。
特に、録画機能を使うことで、自分の発表の様子を客観的に捉えられるようになることは、1人1台端末だからこそできることとも言えるでしょう。

人前で話すことが苦手な児童も考えられます。チャレンジしようとする姿を認め、資料収集の着眼点や話の構成のよさを見つけ、称賛しながら、発表に向けてチャレンジしていけるように、教師の言葉がけを工夫していきましょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 題材を精選し、活動に必然性をもたせる

ぜひ学校行事や年間計画を意識して、児童にとって必然性のある活動として学習を始めていきましょう。学年末の時期となりますので、3年生での学びを振り返ることで、自分たちの成長を見てもらう場としての意識も高めましょう。
今までの学びを整理するとともに、この単元で学ぶ「理由や事例を挙げて、話を構成する力」と、相手を意識しながら「伝わるように工夫して話す力」にも着目し、相手に伝わるビデオメッセージを目指して、友達と協力したり、教科書や映像・音声資料に向き合ったりするように促していきます。

どうして学校の自慢をするのか、自慢することでどのような結果を引き出したいのかという活動の目的を明確にして、常に意識するように投げかけると、自ら考えて伝えるべき内容を選択することや構成の工夫を促すことにつながっていきます。

また、伝えるべき相手についての意識を高めると、相手の方が驚いたり喜んだりする内容という視点を獲得することにもなります。

同時に、相手が自分たちと同じ年頃なら、あまり言葉遣いについて意識する必要はありませんが、相手が年下であれば「難しい言葉は、やさしい言葉に置き換えよう」、高齢者の方であれば「流行の言葉や最近使われるようになったカタカナ言葉などは、できるだけ使わないようにしよう」、また校外の方であれば「『バラの門』など、学校の中で独自に使われている言葉には、『校庭の南側にある』などの言葉を付け加えよう。」というように、伝える時に使う言葉についての意識が高まり、進んで工夫することにつながっていきます。

「大切な言葉はゆっくり大きな声で話す。」「何回かくり返して言う。」「言葉で説明しづらいことは、写真や映像、実物などの視覚的な資料も活用する。」などのような、話し方の工夫を児童が行った際には、積極的に取り上げて全体に周知し共有することで、学級全体の力として定着させていきます。個々の工夫を取り上げることで、児童の主体的に活動しようとする意欲をさらに引き出していきます。

本単元では、「学校のじまん」という児童にとって共通する話題を設定することで、「理由や事例を挙げて、話を構成する」ことができているかどうか、児童が相互に検討することができます。

また、「1年生に紹介する」場面を設定することで、1年生に「伝わるように工夫して話す」ことができているかどうか、児童が互いに確かめることができるようにしています。
1年生に届けることができる場があることで、児童は「理由や事例を挙げて、話を構成する」ことと、相手を意識しながら「伝わるように工夫して話す」ことに必然的に向き合うことができるでしょう。

単元の終末では、練習して上達した部分を交流する時間を取り、振り返りをすることで、これからの学習につなげていくことを目指します。

〈対話的な学び〉 グループ内で内容を検討し、発表の様子を見合ってアドバイスする

ビデオメッセージによる発表とすることで、繰り返し自分の発表を確認し、改善を図ることができます。このことを生かして、学級の中で、友達同士で高め合う時間を大切にしていきます。

発表の内容や組み立て、資料の選択が相手や目的に合っているか、話し方は相手に伝わりやすいものになっているかどうかなど、「理由や事例を挙げて、話を構成する」ことと、相手を意識しながら「伝わるように工夫して話す」ことについて、お互いによいところを認めつつ、その中で自分の改善点を見つけていけるようにしていきます。

相手のよいところを見つける活動は、自分をよりよくする視点を得ることにもつながります。
至らない箇所を過度に指摘し合うだけで終わらないよう、対話を通して気付き、上達につながるように配慮しましょう。

〈深い学び〉 相手に伝わるように伝える方法を身に付けさせる

深い学びとして、組み立て原稿を考えたり、発表原稿を作ったりする際には、子供たちの発言を生かして、教師が価値付けていきます。

経験や音声資料、映像資料から得られた理解を、実際のビデオメッセージの作成時に実践し、振り返りで自分たちの技能として習得できたか確認することが大切です。
このとき、「理由や事例を挙げて、話を構成する」ことと、相手に「伝わるように工夫して話す」ことを確認の視点として明示しましょう。確認の視点が明確になることで、児童が、お互いに聞き合ったり、1人1台端末で自分の発表の様子をみたりして、できたことやよくなったことを実感し、身をもって理解することで学びが深まります。

これからもこの学びを継続していくために、類似した学習場面を捉え、意図的・計画的に今回の学習を想起させていくとよいでしょう。
伝えたいことを理由や事例を挙げて説明したり、相手に応じた話し方を工夫したりすることは、国語科の学習場面だけではなく、日々のスピーチや総合的な学習の時間での発表、他教科での話合いの場面などでも大いに活用することができます。
繰り返し想起させることで、児童が自ら「わけは・・・」「例えば・・・」といった発表ができるようになります。児童が活用できたときは、時機を逃さず、しっかりと認め、称賛することで、日常的な学級での話合いに活用されるようになるとともに、児童自身がさらなる工夫を重ねる貴重な機会につながっていきます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)伝えるための理由や事例を選択し、構成する

発表する事柄に合わせて、理由や事例を用意していくときには、相手にとって理解しやすいかどうかを考える必要があります。

2時間目、3時間目での材料集めの時間には、自分たちが担当した内容の魅力はどこにあるのかを取材したり、聞き手がどこまで知っているかを想定して選択したりといった活動が考えられます。
資料については、ICT機器を使って写真を撮ったりメモを取ったりすることで、より分かりやすく伝えることができるでしょう。

4時間目の発表の構成を考える際には、付箋の機能を使うことも有効でしょう。グループで同じ画面を見ながら、付箋を増やしたり動かしたりすることで、内容や順序を共有することができます

5時間目の資料作成の時間には、取材してきた写真や情報を使い、デジタルによる発表資料を作ります。モニター等を活用して、資料を大きく拡大しながら発表を行うことで、相手にも伝わりやすくなります。

(2) 伝わるように工夫して話す

「話すこと・聞くこと」の単元では、話し手が自分のことを客観的に捉えることが難しい点が課題として挙げられます。1人1台端末を活用するよい場面でしょう。

発表は、相手や目的に応じた言葉の抑揚や強弱、間の取り方、資料の示し方などに意識をもって行えるようにしたいものです。

4時間目の発表原稿の作成の場面では、発表の内容に沿ってどの部分をどのように話すのかを考えます。
次に、6時間目の発表練習の時間に、友達と見合うことに加え、端末を活用して自分の様子を動画撮影し、話し方がどのようになっているのかを確かめていきます。友達の話し方や、教科書の資料動画などと比べてみるのもいいでしょう。

よいところを探す視点で伝え合うことで、自分自身のよりよくしたいところも肯定的に取り入れられるようにするとともに、今後も今回学んだ発表の仕方を意識して学習できるように育てていきたいものです。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: つたえたいことを、理由をあげて話そう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
① 誰に何を伝えたいかを話し合い、「学校のじまん」を発表することを決める。
② 学習計画を立てて、どんな学校の自慢があるか、アイデアを出し合う。〈 端末活用 その1〉

・第二次(3時4時5時6時
③ 自慢するところについて、選んだ理由を考えて資料を集める。〈 端末活用 その2〉
④ 話の組み立てを考えて、発表の原稿を作る。〈 端末活用 その3〉
⑤ グループ内で原稿を校正し、発表の工夫を考える。〈 端末活用 その4〉
⑥ グループでお互いの発表の練習を聞き合って、アドバイスをする。〈 端末活用 その5〉

・第三次(7時8時)
⑦ 発表会としてビデオメッセージの収録を行う。
⑧ 自分のグループや友達のグループの発表について、単元で学んだことについて振り返りを行う。

・今回は「学校のじまん」を実際の場で発表することを想定していますが、学校の実態に応じて、テーマや発表方法を変更することも考えられます。「地域の自慢」「学校集会の見どころ」「クラブ活動の勧誘動画」など、理由を提示しながら発表できるものがよいでしょう。
内容によっては、社会科や総合的な学習の時間との合科的な扱いにして、調査や発表の時間を関わらせていくことも可能でしょう。

・また、今回はグループで一つのビデオメッセージを想定して単元の流れを紹介していますが、個人での発表も行うことも考えられます。内容によって、個人の関心の高いものを題材に選び、似た内容の者同士でアドバイスをし合うのもよいでしょう。その際も、理由と事例を挙げて話を組み立てること、相手を意識して伝え方を工夫することを大切に指導したいところです。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

「話すこと・聞くこと」で今まで学んだことを振り返りながら、発表の相手や内容、単元の目標を児童と一緒に考えていきましょう。

2月に行う単元なので、来年度の新入生を相手として想定することはもちろん、年度末での学校公開、保護者会といった場面に生かしていくのもいいでしょう。
この学習は、聞き手の反応を意識して準備し、聞き手の反応をもとに話す内容や話し方を工夫することにより、児童にとって改善の実感が得られる学びとなります。ビデオメッセージのような発表形式になる時でも、児童同士で見合う場を設け、聞き手の反応をしっかりと見る機会を作りましょう。

発表会をしたことはありますか。覚えていることはありますか。

去年は音読の発表会があったよね。緊張したな。

自己紹介をしたことがあるね。メモを見ないで言うから、家で練習してきた。

自分の宝物を紹介したよ。サッカーボールを持ってきた。

おすすめの本の発表もしたね。どこがいいのか、なんでいいのかを説明したよ。

「これがいい」と相手に分かるように説明するには、どんな工夫をすればいいでしょう。

どんなところが楽しいのか、説明するといいよね。宝物のピアノは写真を見せたよ。

しゃべり方も大事だな。笑顔で、はっきり聞こえるように言わないと伝わらないと思う。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
2時間目の端末画面の例

紹介したい「学校のじまん」を書き込み、共有する。

「主体的な学び」のために

イラスト/横井智美

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