小6算数「場合の数(2)」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・清水則仁
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
(本時5/6)
ねらい
3種類を選ぶ組み合わせについて、落ちや重なりがないように調べる方法を考える。
評価規準
組み合わせの数を、図や表を用いて順序よく、筋道立てて考え説明している。(数学的な考え方)
問題
クッキー、チョコレート、キャラメル、ゼリーの4種類のおかしがあります。
このおかしの中から3種類を選んで、ふくろに入れます。
おかしの組み合わせを全部書きましょう。全部で何通りあるでしょうか。
前時までの学習と似ているところや、違うところはどこですか。
似ているところは、選ぶ順番は関係ないところです。
違うところは、3種類を選ぶところです。
2種類と3種類では、やり方が違いますか。
図を使ってできると思うけど、リーグ表を使って、3つの組み合わせの場合はできるのかな。
でも、図や表を使わないと、落ちや重なりが出てしまうと思います。
図や表を使って、3つのお菓子の組み合わせを調べましょう。
本時の学習のねらい
4種類のものから3種類を選ぶ時の組み合わせを、落ちや重なりがないように調べる方法を考えよう。
見通し
子供はこれまでに試合の組み合わせの場面などにおいて、リーグ表や図を使って順序よく場合の数をあげる方法を学習しています。本時では、4種類のものから3種類を選ぶ組み合わせについての問題を学習します。3種類の組み合わせでは、既習のリーグ表はうまく使えないことに気付かせ、その他の既習事項を用いて、3種類の組み合わせで調べる方法を見いだすようにします。
自力解決の様子



学び合いの計画
ここでは、自分なりのやり方で3種類の組み合わせを考える活動を通して、思考力や表現力を育てることをねらいとしています。
全体の話合いでは、これまで効果的であった図やリーグ表では、落ちや重なりが生じてしまうことや書けないことに、子供自らに気付かせていくことが大事です。落ちや重なりがないように工夫してある表や図を用いた方法のよさを理解させるために、「順序よく」「落ちや重なりに気を付けて」などのキーワードを取り上げて、それらの考えを価値付けることが大切です。
子供によっては、樹形図などを用いて順列で求め、重なった場合を消去するという方法を用いることもあります。方法を称賛し、さらに手際のよい方法はないかを考えさせるとよいでしょう。
また、4つのうちの3つを選ぶということは、1つだけ選ばないと考えることもできます。このような考え方も大事にし、多様な考え方ができる態度を身に付けることが大切です。
ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け



どれも図や表を用いて、求められましたね。図や表に書き出す時に、困ったことや大変だったことはありますか。
C1 のやり方は、全部書き出すのはよいと思うけれど、落ちや重なりがあるかどうかを確かめるのが大変です。
図で描くとゴチャゴチャになってしまい、分からなくなってしまったので、表で調べたら分かりやすかったです。
C3 の考え方は、どういうことですか。
C3 は4つのうち3つ選ぶのだから、1つだけ選ばないものに印を付けるということだと思います。
このように図や表を工夫すると、3つを選ぶ場合でも、落ちや重なりがなく調べることができますね。
評価問題
青、白、黄、緑、赤の5枚の折り紙の中から4枚選びます。折り紙の組み合わせは、全部で何通りあるでしょうか。
子供に期待する解答の具体例
表や図を使って、落ちや重なりが見てすぐに分かるように、順序よく書き表している。

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿
- 図や表を用いて、落ちや重なりがないように順序よく調べている。
- 図や表を用いて、組み合せの数を説明することができる。
ワンポイント・アドバイス
浦和大学教授 矢部一夫
この単元では、ある場面において起こり得る場合について、落ちや重なりなく数えあげることがねらいです。3人の走る順番や4種類のものから2つを選ぶなど、事象が少ない場合では、思いつくまま列挙しても求めることができますが、事象が多くなるとそうもいきません。そこで、1つずつ要素を固定して、順序よく数え上げるなど観点を決めて、落ちや重なりなく求めることを学びます。
その方法として、対戦表などの表を使ったり、樹形図や対角線を活用した図などを使ったりします。さらに、表や図を基に式で答えを求めたりします。また、本実践例にもあるように、「4つのものから3つ選ぶ」ことは、「4つのものから選ばないものを1つ決める」ことと同じと見られるなど、見方を変えても解決できることに気付かせることも大切です。
このように本単元では、サッカーの対戦数を求めて日程を考えたり、4人がけの机の座り方の場合の数をあげたりするなど、身の回りの事象を数理的に捉え、問題を解決しようとする態度を育てることや、観点を決めて、物事を順序よく整理し思考する力を伸ばすことができます。そのためには、算数を日常生活に生かすよう様々な場面を捉え、子供に働きかけることが大切です。なお、ここでの学習は、中学二年生の確率の学習につながります。
イラスト」/横井智美
『小六教育技術』2018年12月号より