道徳授業「相互理解・思いやり」に使える!学級図書に置きたい児童書

低学年の教室にそろえておくのにぴったりな本を、 児童書専門店「こどもの広場」代表の横山眞佐子さんが選んでくれるシリーズの第2談(第1弾記事は、https://kyoiku.sho.jp/1191/をご覧ください)。ここで紹介された児童書は、道徳の授業にも役立つものを厳選。今回は、道徳の内容項目「B 主として人との関わりに関すること」について、子どもが自然と何かを感じ取れるような6冊を紹介します。

『はせがわくんきらいや』

長谷川集平/作・絵  (復刊ドットコム)

<本の内容>

長谷川くん泣かんときいな。わろうてみいな。もっと太りいな。長谷川くんだいじょうぶか。長谷川くん…。乳児の頃ヒ素ミルクを飲んだ著者が、幼少のときのことを思い出しながら描いた絵本。

<横山さんのおすすめポイント >

「きらいや」と言いながら、はせがわくんを支えている少年。言葉だけにとらわれず、簡単にはわからない人間の気持ちの基本は「なぜ?」から始まります。この本を読むと子供たちは「なぜ?」という顔に。そこから始まる絵本です。

学習指導要領「道徳」内容項目……
 B 親切、思いやり
 B 友情、信頼
 B 相互理解、寛容



『はなのすきなうし』

マンロー・リーフ/文  ロバート・ローソン/絵  光吉 夏弥/訳  (岩波書店)

<本の内容>

他の牛たちは闘牛場で勇敢に闘うことを夢見ている中、フェルジナンドだけは花の匂いを静かにかいでいた。偶然のなりゆきから闘牛場へと連れられて行っても、自分を崩さずにいた。

<横山さんのおすすめポイント>

自分は他の人と違うということを、認めてもらうのは難しいことです。多数派が正しいということでもないのに。闘うことよりも花を見ている方が好きという牛は、とんでもない苦労をしてもなお、自分を貫きとおします。

学習指導要領「道徳」内容項目…… B 相互理解、寛容


『だれの ちが でた?』

スティーナ・ヴィルセン/作  ヘレンハルメ美穂/訳  (クレヨンハウス)

<本の内容>

のこぎりやかなづちを手に、集まってきた“やんちゃっ子”たち。楽しそうに、なにかを作っている。でも、なんだかあぶなっかしい手つき…。共同作業をとおして子どもたちの協調性が育まれていく様子が描かれる。

横山さんのおすすめポイント

子どもの心の成長は登り坂。一気にはいきません。いつもいつも“清く正しく”ではなく、悩み迷い、経験することで学び、成長していきます。

学習指導要領「道徳」内容項目…… B 友情、信頼


『どんなかんじかなあ』

中山千夏/文 和田誠/絵 (自由国民社)

<本の内容>

友達のまりちゃんは目が見えない。それで考えたんだ。見えないってどんな感じかなあって。主人公ひろくんが、相手の立場になって考えることに気付く。

横山さんのおすすめポイント

相手の身になって考えるとは何か。想像だけではなく、体験してみることが大切です。すると、別の視点が開けてきます。子どもたちと読みながら体験してみると、書いてあることがよくわかりますよ。

学習指導要領「道徳」内容項目……
 B 親切、思いやり
 B 相互理解、寛容


『ふしぎな ともだち』

たじまゆきひこ/作  (くもん出版)

<本の内容>

島の小学校に転校してきたぼくのクラスには、いつも教室を出ていってしまう自閉症のやっくんがいた。障がいの有無をこえて「共に育ち、共に生きる」ことを描く絵本。

横山さんのおすすめポイント

子どもにとって障害があるとかないとかということは関係ありません。それぞれの個性を認めたら、ふさわしい関係をつくっていけものです。子どもの寛容さのすばらしさが伝わります。

学習指導要領「道徳」内容項目……
 A 個性の伸長
 B 相互理解、寛容


『どんなきもち?』

ミース・ファン・ハウト/作 ほんまちひろ/訳 (西村書店)

<本の内容>

わくわく、びくびく、もじもじ、むしゃくしゃ、どきん。カラフルで表情豊かな魚たちが、気持ちを表現するお手伝いをしてくれる絵本。

横山さんのおすすめポイント

自分の気持ちを言葉で伝えるのは難しいです。「わくわくしている」って、どんな感じ?と、言われても…。絵を見て、いろいろな表現を言葉にしてみたら、とても面白いと思います。

学習指導要領「道徳」内容項目…… B 相互理解、寛容


本を紹介してくれたのは…

横山眞佐子さん

横山 眞佐子 さん

㈱こどもの広場 代表取締役。1979年、山口県下関市に子どもの本の専門店「こどもの広場」をオープン。本の販売のかたわら、講演会や教育シンポジウム、絵本の文化を紹介する展覧会などを企画・運営している。学校の図書室を活性化し、子どもたちと本を結ぶために「本を選ぶ会 選書会」を企画・実践。下関市内の小中学校を中心に、年間で約50校を訪問し活動を続けている。1996年下関市芸術文化振興奨励賞を受賞。現在、下関市子ども・子育て審議会委員、下関市立美術館運営委員。元梅光学院幼稚園園長。子どもの本、子どものための本の翻訳もする。2013年、久留島武彦文化賞を受賞。編集・執筆・翻訳図書に、『人生ではじめて出会う絵本100』(平凡社)、『かがくする心の絵本100』(平凡社)、『ぼくのライトとたんぽぽ』(ブックグローブ社)などがある。

『小二教育技術』2018年10月号より

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