小3算数「分数」指導アイデア《分割分数と量分数の違い》

特集
【文部科学省教科調査官監修】1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小3算数「分数」指導アイデア

執筆/神奈川県横浜市立嶮山小学校教諭・梅本樹徳
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、島根県立大学教授・齊藤一弥

小三算数 年間指導計画

単元の展開

第1時 1mを等分してできる大きさの分数による表し方

第2時 単位分数を用いた分数の表し方

第3時 分数・分母・分子の意味、端数部分の大きさの分数による表し方

第4時 分数を数直線上に並べ、分数を整数と同様の数として捉える。

第5時 1より大きい分数の表し方

第6時(本時)分割分数と量分数の違いについて理解

第7時 0.1を単位とした小数と[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]を単位にした分数の大きさの関係

第8時 同分母の分数の加法・減法の計算

本時のねらい

[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと基準量の[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]の違いを見いだし、量分数と分割分数の違いを捉えることができる。

評価規準

基準量に着目し、単位分数の大きさを明らかにして、分数の大きさを表現する方法を考えている。

本時の展開

Aのテープ(黄色い部分)の長さは何mでしょうか。

図1

[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mです。

どうしてそう言えるのですか。

1mを4等分した三つ分だからです。

[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]mが三つ分になるからです。

では、Bのテープ(黄色い部分)の長さは何mでしょうか。

図2

2mの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]だから、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mだと思います。

でも、Aの長さと同じになってしまうよ。

分数だからいいんじゃないかな。

長さが違うのに、どちらも[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと言っていいのかな。

Bのほうは何mと言えるのか、ちゃんと調べないといけないな。



基準量に着目し、分割分数と量分数の違いについて説明することができる。

見通し

1mよりも長いのだから、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mではおかしい。(結果の見通し)

長さを分数で表すには、1mを基にして考えてきたよ。(解決の見通し)

AやBのテープの1mを基にして、1つ分がいくつになるかを調べればいい。(解決の見通し)

自力解決の様子

A つまずいている子

基準量に当たる1mに着目できない。単位分数がいくつになるかが見いだせない。


B 素朴に解いている子

Bのテープの1mに着目し、[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]mがいくつ分かを考えている。


C ねらい通り解いている子

Bだけでなく、Aのテープの[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]mを使って、Bの長さが表せないかを考えようとしている。

学び合いの計画

1mの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]と2mの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]では、長さが明らかに異なるにもかかわらず、子供たちはどちらも[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと捉えてしまう傾向があります。

そこで、分割分数と量分数の役割がどのように異なるのかをていねいに見いだしていく必要があります。

前時までの学習では、例えば1mの[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]は[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]mのように、分割操作の結果([MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH])と量分数での表記([MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]m)が一致していましたが、本時では両者にずれが生じます。そのずれを問いにして、基準量に目を向けていくことが必要です。

そのためには、長さの異なるさまざまなテープの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]を見せることが有効だと考えられます。どれも同じ[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]なのに、長さが異なるのはなぜかについて考えることを通し、量分数では常に1mを基準量として表現していたのに対し、分割分数ではテープそのものを基準量、つまり1として考えていたことを自覚させる必要があります。

さらに、量分数と分割分数を同一の数直線上に表し、2mを1と見たとき、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]に当たる長さが[MATH]\(\frac{3}{2}\)[/MATH]mというように、分割分数と量分数を関連付けることで、それぞれの役割の違いを自ら説明できるようにしていくことが大切です。

ノート例

A つまずいている子

つまずいている子のノート例

C ねらい通りに解いている子

C ねらい通りに解いている子

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

図3
図4

Bのテープの黄色い長さは何mになるのでしょうか。

1mを基にして考えると、一つ分が[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]mになるので、それが三つ分で[MATH]\(\frac{3}{2}\)[/MATH]mです。

どうして1mを基にして考えたのですか。

これまでにも、1mを基の長さにして分数で表してきたからです。

なるほど。では、1mのように、1を等分して一つ分を求めてきたのは、分数だけでしたか。

小数も同じです。小数では1を10等分して、0.1を一つ分として考えてきました。

ちなみに、なぜどちらも1を基にして等分しなければならなかったのでしょうか。

1より小さい大きさを表したかったからです。

小数も分数も、同じ働きをしていたんだね。

すごい発見ですね。でも、小数と分数では、一つ分をつくるときに違いがあったのではありませんか。

小数は10等分して0.1を一つ分にしていたけれど、分数では[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]や[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]など、自由に一つ分をつくることができました。

だから、等しい長さをいろんな分数で表せる場合があるということも勉強しました。

だったら、Bのテープは[MATH]\(\frac{6}{4}\)[/MATH]mとも言えると思います。

どうしてですか。

Aの[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]mを使うと、その6つ分の位置が、Bのテープの長さと同じになるからです。

本当ですか。皆さんも調べてみてください。

図5

本当だ。[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]mが6つ分で[MATH]\(\frac{6}{4}\)[/MATH]mになっている。

ということは、Bのテープは[MATH]\(\frac{3}{2}\)[/MATH]mとも言えるし、[MATH]\(\frac{6}{4}\)[/MATH]mとも言えるよ。

分数は自由に一つ分をつくって表せるから、どちらで表しても問題なさそうだね。

今日の学習をふり返ってみましょう。最初に皆さんはBの長さを[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと言っていましたね。

それは間違いでした。

どうして[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと思ってしまったのでしょうか。

1mを意識していなかったからです。

2mを基にして考えてしまっていたからです。

では、これを見てください。

図6

全部[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]になっている。だけど、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mなのはAだけだ。

どうして[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]に見えるのでしょうか。

どのテープも、全体を4等分した三つ分の大きさだからです。

なるほど。つまりBのテープで言うと、ここが……。

図7

※子供と確認しながら、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]から順に分割分数を表記していく。

[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{2}{4}\)[/MATH]、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]、1。そういうことか。テープ全体が1になるということか。

CやDのテープも、全体を1と考えて、それを基にして[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]と見ていたんだ。

だから、どのテープも[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]に見えたのか。

でも、何mかと聞かれると……。

1mを基にして考えないといけません。例えば、Bのテープだと……。

図8

※先のテープの上に量分数を表記していく。

1の位置がずれる。そうか、基にする大きさが違うからだ。

つまり、2mの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]のBのテープは、何mと言えますか。

[MATH]\(\frac{3}{2}\)[/MATH]mです。

では、Aのテープも同じように表してみます。Bのテープとの違いはありますか。

図9

1の位置が揃っています。

では、1mの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]のAのテープは、何mですか。

[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mです。

基にする大きさがどちらも同じ位置だから、簡単に表せるんだな。

何を基にしているのかをちゃんと確かめれば、もう間違えないよ。

[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]は基の大きさによって変わるけれど、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mは1mを基にすることが分かりました。

でも、どちらの分数も1を等分したいくつ分で表しているのは同じでした。



今日は、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]の違いについて考えました。どちらも、基にする大きさを何等分したいくつ分という考えは同じだけれど、基にする大きさが[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mと[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]では違うことに気が付きました。[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]mは1mを基にしていて、[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]は基の大きさを1と見れば、どんな大きさでもよいことが分かりました。

評価問題

次のCのテープ(黄色い部分)の長さは何mになりますか。その理由もせつ明しましょう。

図10

子供に期待する解答の具体例

[MATH]\(\frac{5}{3}\)[/MATH]mです。1mを基にすると1つ分は[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]mになります。[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]mが5つ分で[MATH]\(\frac{5}{3}\)[/MATH]mになるからです。

本時の評価基準を達成した子供の具体の姿

分割分数との違いを捉え、基準量である1mに着目して長さを量分数で表すことができている。

感想

今までは、分数で何mかを表すときに、基の大きさを意識していなかったけれど、それはいつも1mを基にしていたからだということに気付きました。分数で「何m」を表すのか、「全体を何等分したいくつ分」を表すのか、ちゃんと区別して使っていきたいです。



分数には複数の役割があります。子供たちが学年を経るにつれて、それぞれの役割を理解したり、統合的に考えたりできるよう心がけましょう。
本時では、量分数と分割分数の役割の違いについて理解するために、基準量に着目して考察できることをめざしました。
そのために、図を用いて、上下に量分数(測定値)と分割分数(割合)を表記し、なぜ2mのときにはそれぞれの表記が異なるのかを説明できるようにしました。2mの[MATH]\(\frac{3}{4}\)[/MATH]が何mかを考えるだけにとどまらず、分数のもつ役割の違いに関心が向く子供に育てていきましょう。

イラスト/横井智美

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