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子供の議論を動かし授業を面白くする「思考ツール」の使い方

授業でもよく使われるKJ法(付箋に書いた意見をグルーピングして議論をまとめる手法)などの思考ツール。思考ツールを、いち早く日本の学校の実情に合わせて紹介した関西大学教授の黒上晴夫先生に、ツールの効果や小学校の授業での使い方などについて、うかがいました。

関西大学総合情報学部教授 黒上晴夫さん
黒上晴夫さん

黒上晴夫さんプロフィール
関西大学総合情報学部教授。米国や豪州における授業研究をもとに、2012年に『シンキングツール~考えることを教えたい~』を無料でWEB公開。以来、思考スキル・思考ツールの活用研究をリードしてきた。学習指導要領改訂に関わる各種会議委員。主な著書に、『考えるってこういうことか!「思考ツール」の授業』、『こうすれば考える力がつく! 中学校思考ツール』、近著に『思考ツールでつくる 考える道徳』(ともに小学館)など。

思考ツールで、子供たちが自分の意見を述べられるようにする

ーーなぜ、日本の子供に思考ツールが必要なのでしょうか。

学習するということは何かを突き詰めて考えたときに、難問、奇問に正解できるような力を育てる意味はまったくないということです。日本の子供はPISAで好成績はとっても、記述の問題が書けない、白紙答案が多いと言われていた時期があります。それは、自分自身の考えをつくり出すノウハウを持っていないことが原因ではないかと考えました。

もし日本の子供が世界で戦おうと思うのならば、まず自分の考えを述べられるようにすることが重要ではないか。それをさせるためには、なにか新しいものがいる。作文を書くときに箇条書きをしてから書くように、自分の考えをつくる前にアイディアを並べて、それを組み立てながら考えをつくり上げるというようなプロセスがいる。まさに思考ツールがその役割を果たしてくれると期待しています。

世界的な教育の潮流「思考力重視」にも対応

教育というのは、その国の人々が全員で共有している価値観の上に成り立っているものです。どうも僕には、日本の教育は子供が自立することを本当に目指しているのだろうかという疑問が根強くあります。自立することは大事だとわかっているけれど、そのためには基礎知識がたくさん必要で、その基礎知識をみんなが共有していることが大事だと日本人は思っているんじゃないか。その現れが、受験勉強です。

しかし、基礎知識を身につけて大学に入って、本当はそこから思考が始まるはずなのに、大学に入ってもそういう様子がない。社会に出ても、思考が止まっている人がいます。子供を全人的な教育によって人間として完成させるのが教育の使命であるのに、たくさんの知識を与えるばかりで、それを使って自分の考えをつくる方法を与えていない。

でも、しだいに学習指導要領の中で思考の場面が入ってきて、新学習指導要領では、探究という軸が通りました。世界的な教育のメインストリームは思考力重視です。そういう関心が広がってきたときに、たまたま僕たちがそういう道具を持っていたということかもしれません。

授業に有効な思考ツールは、Yチャート、ピラミッドチャート、クラゲチャート

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