小5国語「俳句・短歌を作ろう」指導アイデア
教材名/「俳句・短歌を作ろう」(教育出版 五年下)
領域/書くこと
執筆/沖縄県公立小学校教諭・平良早美
編集委員/文部科学省 教科調査官・菊池英慈、那覇教育事務所指導主事・上里 亮
目次
単元で付けたい資質・能力
①言語活動とその特徴
本単元では、自分が感じたことや想像したことを基に、「俳句や短歌を作り、味わう」という言語活動を位置付けます。俳句や短歌は、四季の移り変わりや、暮らしの中から生まれた日本独特の短い定型詩です。七五調を中心とする言葉の調子やリズムに親しみ、創作することにより、凝縮した表現で捉える面白さや楽しさを味わうことができます。
単元の最後に「子ども句会」を設定し、友達と俳句を交流し、互いに評価し合うことで、俳句の楽しさを実感させ、また、作品を創作してみたいという意欲につなげていくようにします。
②言語活動を通して付ける資質・能力
自分が感じたことや創造したことを表すための言葉を選び、表現の効果などについて確かめたり工夫したりする力を育成します。
③指導のポイント
・いきなり作品を鑑賞したり、創作したりするのではなく、教科書に載っている作品の一部を自分の言葉で表現する活動を通して、言葉を吟味し、短く表現することの面白さを味わわせていきます。また、教科書の俳句と自分の作品を比べることで、「季語」や「比喩・擬人法」「擬音語・擬態語」「色彩語」等、俳句の表現の特徴について話し合っていきます。
・俳句を作る際は、季語から作るのではなく、「秋の思い出」をテーマに短い文を書かせ、そこから五七五に短くまとめたり、「秋の季語」と組み合わせしたりしながら言葉を吟味させていきます。
・「子ども句会」では、友達と自分の作品を交流することで、俳句をよんだり選んだりする視点(気持ち、様子、言葉)を広げることができ、俳句や短歌をまた作ってみたいという意欲を育てていきます。

指導事項:B書くこと(1)アオ
伝国(1)イ(カ)
言語活動:イ
単元の展開(5時間扱い)
アイディア① 「穴うめ俳句・短歌」で、言葉を短く表現することの楽しさを味わおう
教科書に載っている作品の一部を自分の言葉で表現する活動を通して、俳句と短歌の面白を実感させていきます。
第1時板書例
第1時の導入では、教科書を見せずに、「穴うめ俳句・短歌」に挑戦します。穴埋めにすることで、気持ちや様子が想像しやすくなり、楽しく俳句や短歌の創作に取り組むことができます。穴埋めにする言葉は、最初は七文字から始め、徐々に穴埋めする文字数を増やしていきます。活動の前に、教師が考えた作品例を提示するとさらにイメージが広がり、子供の創作意欲を高めることができます。言葉を選び、吟味する活動の中で、言葉の調子やリズム、短く表現する表現することの面白さに気付き、学習課題へとつなげます。
教科書のモデルの句と自分の作品を比べることで、「季語」や「比喩・擬人法」「擬音語・擬態語」「色彩語」等、俳句の表現の特徴について捉えさせます。
第2時板書例
〈俳句の表現の特徴〉
〇 五七五の十七音で表す。小さい「ゃ、ゅ、ょ」は上の文字に付けて一音とするが、小さい「っ」はそのまま一音で数える。
〇 「季語」は二回使わない。
〇 「うれしい」「たのしい」「きれいだ」など、直接的な感情を表す表現は避ける。
〇 比喩や擬人法、擬音語・擬態語、色彩語などの表現を工夫する。
〇 最後を名詞で止めると、俳句のリズムがよくなる。(体言止め)
「ひらひら」という表現のほうが、舞い落ちる様子がよくわかるね。
「雪の結しょう」を、「白」を使った言葉で表現できないかな。
もっと違う言葉で表現できないか、調べてみようかな。
子供の作品は、表現方法が比べやすい句を教師が事前に選んでおきます。「や」「かな」「けり」などの「切れ字」を入れた作品も提示すると、俳句表現の特徴がより捉えやすくなり、次時の創作活動へつながります。
アイディア② 表現や技法を工夫しながら、秋の俳句を作ろう
秋は、一年のうちで過ごしやすく、お月見や紅葉など色彩豊かな自然の美しさを感じることができ、読書やスポーツ等、子供たちにとっても楽しい思い出がたくさんできる季節です。
そんな秋の思い出を短い文に書き、その時の様子を五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)や感じたことから思い出し、季語と組み合わせていきます。
ワークシート例①
ワークシート②では、ステップチャートを用いて、語順や言葉を意識して言葉を練っていく活動を行います。歳時記や国語辞典を活用したり、声に出して読んだりしながら、適切な言葉を選び、句を練り上げていきます。
ワークシート例②
歳時記と国語辞典で語彙力アップを!
俳句を作る際に手元に置きたいのが、歳時記と国語辞典です。歳時記は、季語を調べる時に、国語辞典は、言葉を調べる時に使います。歳時記がない場合は、教師が季語をプリントにまとめて配るとよいでしょう。歳時記と辞典で言葉を調べる習慣を付けましょう。
アイディア③ 「子ども句会」を楽しもう
俳句を作り発表し合ったり、お互いの句について意見を交換したりする場のことを「句会」と言います。句会では、自分がよいと思った句を選び、その理由を発表します。その際、友達の作品をどのような視点で選び、評価していくのか、明確にしておくことが大切です。
また、作品の裏には必ず友達からの感想を書けるように工夫し、仮に自分の作品が選ばれなくても、「次は、もっと表現を工夫しよう」「また、俳句を作ってみたい」という意欲を高めます。
「子ども句会」の進め方
①前時間で作った俳句を無記名で短冊に書く。
②グループで短冊を集め、他のグループの短冊と交換する。
③俳句の感想を、短冊の裏に書く。
④よいと思うものを一人一句ずつ選び、発表する。
⑤各グループから選出された俳句を一句ずつ発表し合い、選んだ理由を述べる。
⑥「○○賞」のような賞を決め、⑤で選ばれた句の中から受賞作品を決める。
⑦選ばれた句の作者が名乗りを上げ、感想を述べる。
この季語を選んだことで場面の様子が見えるね。
この表現がいいね。
感動したことがよくわかるね。
〈選ぶポイント〉
①リズムや響きが面白い。
②言葉の使い方や言葉選びに工夫がある。
③場面や情景の様子が伝わってくる。
④作者の気持ちに共感できる。
⑤自分では気付かなかった見方をしている。
指導のポイント ~教師もよい句を選ぼう!~
「子ども句会」では、子供に選句させるだけでなく 教師もよいと思う句を選び、評価することが効果的です。ポイントとして、
①その子なりの捉え方で素直な思いをよんでいる。
②言葉の響きやリズム感がよい。
③視点が新鮮である。
④その時の気持ちや様子にぴったりと合う言葉を選んでいる。
などがあげられます。
一番大切なのは、よいところは褒め、手直しが必要な場合は、なぜそのほうがよいのか納得できるように説明することです。教師から評価されることで、新しい句を作る意欲につながります。
みんなで投句してみよう!
新聞や雑誌、企業や自治体が主催する俳句賞など、俳句を発表する場がたくさんあります。自分の句が掲載されると創作の励みになります。個人や学級、学年単位で投句し、結果に一喜一憂するのも、子供の意欲を高めます。
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教科調査官からのアドバイス
国立教育政策研究所 教育課程調査官
菊池英慈
ポイント① 創作する困難さを取り除く導入の工夫をしよう!
高学年では、身近な情景や生活の中での出来事を捉え、伝統的な定型詩の特徴を生かした創作を行うことによって、七音五音を中心とする言葉の調子やリズムに親しんだり、凝縮した表現によって創作する楽しさを味わったりすることが求められます。しかし、一から俳句や短歌をつくるとなると、決まりごとも多く、子供たちは難しいものと感じるのではないでしょうか。
そこで、アイディア①にあるように、「穴うめクイズ」などを取り入れていくと、俳句や短歌の創作の困難さを取り除き、意外性のある表現を引き出していくことにつながっていきます。
ポイント② 季節を感じる目や心を豊かにし、言語感覚を磨いていこう
俳句や短歌のテーマは、子供たちが生活の中で体験したことや学校行事、季節に関連したものなど、子供がイメージを広げやすいものにしていくことが大切です。
そのためには、アイディア②にあるように、秋の思い出を短い文章に書いたり、五感を働かせて思い出した様子を整理したりして感じたことを想起させていくことが効果的です。さらには、それらの言葉と季語をつなぎ合わせることを通して、子供たち自身の内にある季節を感じる目や心を豊かにして、言語感覚を磨いていくようにしましょう。
イラスト/和久田容代
『小五教育技術』2018年11月号より