授業力を高めたい!⑧ 教師の役割を考える|樋口綾香のすてきやん通信
Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載!
今回は、”教師の役割”について考えます。「子供たちにとって、楽しみになるような授業をしたい」、「楽しいだけではなくて、力がつく授業をしたい」と考えたとき、教師はどのような役割を担えばよいのでしょうか。樋口先生が心がけていることを、「授業前」「授業中」に分けてお伝えします。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
授業前の教師の役割
学習道具の準備
授業開始と同時に、全員で学習をスタートできる環境にしたいと考えています。
準備ができていないと、チャイムが鳴ってからタブレットや教科書、筆記用具を用意することになります。きっと準備ができている子もいるでしょう。きちんと準備ができている子が待ちぼうけになることがないように、教師ができることを考えなくてはいけません。
そこで私は、前の時間の授業が終わるとすぐに、次の授業の準備をするように声かけをしています。
教師の言葉から授業がスタートするのではなく、自分の机上を見て、授業をスタートできるようになるため、学習に参加しやすい環境へと誘うことができます。
子供の視界に入る余計なものを無くす
私は、教師用の机は教室の一番後ろに置いています。また、机上にはできるだけ何も置かないようにしています。そして、黒板周りや横の棚などにも、ほとんど何も置いたり貼ったりしていません。それは、教室環境が整然としている方が、子供たちが授業に集中できる傾向があるからです。
また、学級目標や学校目標などの「いつもそこにあるもの」よりも、「今だけそこにあるもの」の方が、子供は気になってしまうようです。例えば、重ねられた宿題などの提出物、前の時間に使用した掲示物などの教材、子供が提出したテストの直しなど。
私語や立ち歩きが増えたときには、何か集中力を阻害しているものがないか、教室環境を俯瞰して見てみましょう。
授業中の教師の役割
45分間、自分が授業している姿を録画して見たことがありますか。何か目的がないと、なかなか見る事はありませんよね。授業力を高めるには、自分の姿を客観的に見ることが大事です。次の観点でぜひ、自分の授業を観察してみてください。
①授業中の立ち位置
45分間、どの場所にいることが多かったでしょうか。
黒板の前ですか? 教卓の前ですか? 子供の近くですか?
どの場所にいることが多いかによって、皆さんの授業スタイルが見えてきます。
私は、教室の前方にいることが多かったのがわかりました。そのため、子供と教師の間のやり取りも多く、子供たちはいつも、私の顔を見ながら発言していました。
そこで、子供の発言時には、あえて教室の横へ行ったり、後ろへ行ったりして子供たちの視界に入らない工夫をしました。すると、子供たちは子供たち同士で目を合わせて話を聞き合うようになりました。教師の立ち位置によって、子供同士のつながり方も変わってくるのですね。
②大事なことの伝え方
大事なことを話す時や、子供に気づかせたいことがある時、どんなふうに伝えていたでしょうか。
目線は子供たち全員を向いていましたか?
話すスピードはゆっくりでしたか? 速かったですか?
声の大きさは大きかったですか? 小さかったですか?
大事なことを伝えるとき、言い間違えないように、下を向いてノートや教科書を確認したり、緊張して早口になったりする先生も多いと思います。
これは悪いことではなく、そのような癖があるということです。
しかし、その弊害はとても大きいのです。
大事なことを下を向いて伝えると、子供たちがどのような表情で聞いているのかが分かりません。話がしっかり伝わったのかどうか、判断できる材料がないのです。大事なことほど、全員の子供と目を合わせるようにして、表情を確認しながら伝えることが大切です。
話すスピードは「ゆっくりと」、声の大きさは「小さな声で」がポイントです。いつもと同じ話すスピード、同じ声の大きさでは、「大事なことを話している」というのが子供たちに伝わりにくいのです。あえてゆっくりと、小さな声で話しかけることで、子供たちの聞く意識を高めます。
③子供の意見をつなぐ
子供たちが発表しているとき、先生は何をしていたでしょうか。
黙って聞いていましたか? 相槌を打っていましたか?
話している子を見ていましたか? 聞いている子を見ていましたか?
子供の発表を聞いているときが、もっとも教師の授業力が必要になるときだと私は感じています。
その意見を、どう生かせるか。誰の考えと近いか。教材の本質とどうつながっているか。この意見がどう広がるか。
私はこのようなことを考えながら、子供たちの発表を聞いています。
子供の言葉を深く理解しようと思えば思うほど、子供の意見についていっしょに悩んだり、驚いたりすることもあります。だからこそ、友達の意見を聞いている子供たちを見て、何に悩んでいるのか知りたくなったり、小さなつぶやきをした子の言葉を拾ってつなぎたくなったりします。
大切なのは、子供の考えに興味をもち、子供と同じ立場で考えることです。教師がまずはこの役割を担い、クラス全体でこの態度を大切にできると、自ずと子供たちの意見がつながり合うようになっていくでしょう。
今回は、「教師の役割」をテーマに、授業前や授業中に私が心がけていることをお伝えしました。子供たちが授業に集中しやすい環境づくりや、自分の授業の様子を観察してみることをぜひやってみてください。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。
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