「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準の言語サンプルは何を参考にすればよい?【田村学流 単元づくり・授業づくり#16】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準の言語サンプルは何を参考にすればよい?【田村学流 単元づくり・授業づくり#16】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

「主体的に学習に取り組む態度」の言語サンプル

前回、「思考・判断・表現」の評価規準に関する言語サンプルについてご説明を致しました。そこで今回は、「主体的に学習に取り組む態度」に関する言語サンプルについて、ご説明をしていきたいと思います。

国が示している軸は、粘り強さと自己調整

前回、「〇〇について、□□しながら、△△している」というフォーマットに沿って、「□□しながら」の部分に、思考スキルを参考にした言語サンプルを当てはめると、「思考・判断・表現」に関する評価規準が設定できることをご説明しました。今回も、このフォーマットに沿って、「□□しながら」の部分にどのような言語サンプルを当てはめていけば、「主体的に学習に取り組む態度」に関する評価規準が設定できるのか、ご説明をしていくことにしましょう。

ちなみに、「□□しながら」の部分に当てはめるサンプルに近いものとして、国が示してくれたのは、「粘り強さ(粘り強い取組)」と「自己調整(自らの学習を調整)」という二つの軸です。

過去、「関心・意欲・態度」が評価の観点であった時には、例えば、授業中に手を挙げた回数だとか、忘れ物の回数などをもとに評価が行われるようなこともありました。それはおかしなことであり、「主体的に学習に取り組む態度」において、「粘り強く」学習に取り組むという軸が示されたことにはとても意味があると思います。

もう一方の、「自らの学習を調整」するというのは少し分かりにくいのではないでしょうか。「学習の調整」というのは、子供が自身の学びをメタ認知して、自分の学びをコントロールできるようにしようというイメージだと思います。自分の学びを俯瞰して、「自分は今、こういう状態だな」と認知的に捉え、「次は、こんな方向に向かうといいな」とか「次は、こんなことを学ぶといいな」というようなことでしょう。しかし、これは認識に関わる思考的な行為であって、態度としては少し分かりにくいように思います。

実際に、評価に関する参考資料を見てみると、「粘り強さ」は分かりやすいので、各教科とも各所で、「粘り強く~」という表現が出てきます。一方で、「学習の調整」は近い言葉がないため、「見通す」とされたりしていますが、これは少しフィットしないように思えます。つまり、これらは言語サンプルとしては限定的でもあり、少し使い勝手が良くないように思うのです。

OECDの社会情動スキルや性格特性のビッグ・ファイブを言語サンプルにする

そこで、私は、OECDの社会情動スキルや、アメリカの心理学者、ルイス・ゴールドバーグが提唱した、性格特性のビッグ・ファイブ(主要5因子)を「主体的に学習に取り組む態度」の言語サンプルの参考にしてはどうかと考えます。

OECDは、社会情動スキルとして、「目標の達成」「他者との協働」「情動の抑制」の3つを示しており、その下に例えば、「感情の抑制」ならば「自尊心、楽観性、自信」というように3つずつが示されています。(その他は、「目標の達成」=「がんばる力、自己抑制、目標への情熱」、「情動の抑制」=「自尊心、楽観性、自信」)

社会情動的スキルのフレームワーク‬
出典:OECD(2015)

それ以上に言語サンプルとして分かりやすいのが、性格特性のビッグ・ファイブでしょう。「誠実性」「外向性」「協調性」「開放性」「安定性」がそれで、これらを参考にするとよいと思います。

なぜ、これらを言語サンプルの参考にするとよいかというと、実際に普段の教育活動の中で、先生方はこのようなことを、子供たちに言っているからです。例えば、「目標に向かってチャレンジしましょう(目標の達成)」とか、「みんなで助け合いましょう(他者との協調)(協調性)」とか、「あきらめずに頑張りましょう(感情の抑制)(安定性)」といったことを、自然に口にしていると思います。

口にしてはいるのですが、それらは先生一人一人が経験を通して、感覚的に「大事だな」と思い、自然に身に付けたものだと思います。その裏側には、実は態度に関する価値があるからこそ大事にされてきたわけです。しかし、感覚的に身に付けたものであるため、その裏にある価値に対して無自覚で、整理されていないため、言語化するときに再現が難しいわけです。

ですから、このような視点を使って、これまでの子供たちの態度や行動に対する指導を見直してみるのです。そうすると、「ああ、こういう視点で話していたんだな」と明らかになってくると思います。例えば、前々回のフォーマットに関するご説明で、「友達の意見を認めて受け入れ、参考にしながら」という例を示しましたが、これも、「違いを認めながら、協調していくことだ」と分かってくると思います。

このような視点をもって、学習指導要領の目標や解説を読み直していただきながら、「この場面で私たちが求めたい、態度はどのようなものかな…」と、思い描き、言語化していけばよいと思います。

ちなみに、ここで示した社会情動スキルや性格特性のビッグ5は、非認知系の知識です。これは、「学びに向かう力、人間性等」という資質・能力が、事実に関する知識や方法に関する知識(構造化された知識を含む)と、態度に関する非認知系の知識が結びついて、ニューラル化したものだということと関係しており、同じような構造になっていることがお分かりいただけるのではないかと思います。

これまで、評価の難しい「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」のフォーマットと言語サンプルについてご説明をしてきました。次回は、「知識・技能」のフォーマットや言語サンプルについてご説明をしていきたいと思います。

【田村学流「単元づくり・授業づくり」】次回は8月5日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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