授業支援のクラウドアプリで学びをもっと深めるには【タブレットで変わる授業デザイン】#4
1人1台端末で授業支援のクラウドアプリ(ロイロノート、MetaMoji Note、Classroomなど)を活用し、学びを深める授業を紹介します。今回は小6国語の図書推薦カードを書くことをゴールにした授業、小5図画工作の自分たちの作品を鑑賞し、よさや気付きをカードに書くという授業です。
執筆/熊本県公立小学校教諭・西尾 環
目次
01 デジタルカードで本の紹介
6年国語 「関連する本を読んで推せんしよう~ヒロシマのうた~」
戦争や平和に関する本を自分で選んで読み、その本のよさを他者に伝えるために、1枚のカードに書いてまとめます。その過程で、戦争の悲惨さや平和の大切さについて深く考える態度を養います。
自分が選んだ本の推薦書を、下級生に伝えるために書く学習です。その際、授業支援クラウドのアプリ(ロイロノートやMetaMoji Note、Classroom)を使って、1枚のデジタルカードにまとめるようにします。
それらのアプリを使う理由は、互いにカードを見合って、アドバイスし合って推敲ができるからです。また、この単元で作成した本の紹介カードを一括して学校の資料箱やフォルダに入れておくと、必要に応じて下級生(ここでは、翌年、平和学習で修学旅行に行く現5年生)にタブレット上で読んでもらうこともできます。
①サンプルを見て、図書推せんカードを書くことをゴールにして教科書教材と他の本を読むという学習の見通しを持ちます。
②平和教材「ヒロシマのうた」を読み、あらすじや心に残った葉や場面などを出し合い、内容を読み取ります。
③戦争と平和に関する本を読み、紹介したい内容を考えます。
④サンプルを元に、カードの書き方を学びます。
⑤タブレットを使って、カードを作成します。まず、ロイロノートのアプリを開き、個人IDでログインします。次に、国語の授業の部屋に入って、ノートを作成します。そして、教師が送ったサンプルカードを受け取り、項目に沿って書き込みます。紹介する本の写真を撮って取り込み、体裁を整えます。
⑥互いの作品カードを読み合います。
⑦ブラッシュアップした作品カードは、学校共有の資料箱やフォルダに保存し下級生に読んでもらいます。
サンプルがあったことやタブレットを活用したことで、短時間で出来上がりました。子どもは、何度も読み直してすばやく書き直していました。また、読み手のことを考えて本を選んだり文章を書いたりしました。
読み合わせの時には、「理由がはっきりしているか」「下級生でも読める文字や言葉になっているか」を意識させて、アドバイスし合うことが大切です。また、ワンポイント的に手書きのイラストを入れることで、作成者なりの味が出ます。
全学年国語で、「本を紹介する単元」の系統があり、学校全体で取り組める題材です。
●5年:グループで、共通のテーマの本を紹介しよう
●4年:心に残った本を、みんなにすすめよう
●3年:友達に読んでもらいたい本を、しょうかいしよう
●2年:本の面白かったところを、友達に教えよう
●1年:すきなおはなしやじんぶつを、しょうかいしよう
図書室の本は、みんなが読めるようにいずれ返却しなくてはなりません。本の表紙や心に残ったページを写真に撮っておくことで、紹介したりカードを書いたりする時に活用できます。図書室とも連携して、図書推薦カードをストックしていくことも可能です。
また、それぞれの学年で同じ授業支援クラウド(ロイロノートなど)にデジタル化して保管しておくと、学校全体で共有化が図られると同時に、それぞれの子どもの学習の成果が蓄積され、学びの足跡になります。
02 鑑賞カードの共有で新たな学び
5年図工 「だんボールアート」(工作)
図画工作の作品を互いに鑑賞し、よさや気付きを写真も併用しながら言語化できるようにします。そして、自己肯定感を高めるとともに、それぞれの違いも認め合う大切さを学びます。
タブレットのロイロノートのカメラ機能で作品を撮影したり、鑑賞カードを書いたりします。
話すことは消えるうえ、書いた紙も掲示をしないと共有化できません。しかし、タブレットを使うと記録に残ります。またロイロノートを使うことで、即座に相手によさを伝えたり、クラスみんなでカードを共有したりすることができます。
これらを、子ども同士であるいは自分で、タブレット上でカードを次々に出しながら答えます。繰り返し問題に触れることで、知識の定着を図ることができます。また友達と問題を出し合うことで、主体的に楽しく学びます。
①机を寄せて3〜4人のグループを作り、完成しただんボールの立体作品を自分の机の上に置きます。
②作品を見る相手や順番を決め、タブレットを持って鑑賞する作品の場所に移動して、友達の作品をまずは目でしっかり見ます。
③よいところを中心に作品を撮影して、写真によさを書き込んだり、カードに文章で書き込んだりします。それをロイロノートで相手に送ります。鑑賞する作品を変えて同様にします。
④自分の鑑賞カードをつなげてクラスの提出箱に出し、他者の鑑賞カードを読みます。
⑤タブレットは持たずに、全体の作品を鑑賞します。
⑥1時間の学習(鑑賞タイム)の振り返りをします。
子どもたちは、カメラに収めるために様々な方向から作品を見て、細かいところまで鑑賞しました。これまでのアナログの鑑賞では、対話や付箋紙、紙の鑑賞カードが主流で、話すことや書くことが苦手な子どもは、よさを感じてもうまく伝えられないことがありました。
しかし、写真が言語化するための手助けになり、相手に伝えやすくなったのです。従来の鑑賞授業で苦手意識を持っていた子どもの意識が変わりました。伝えられるほうも、友達から鑑賞カードをもらって自己肯定感の高まりが見られました。さらに共有して同級生みんなのカードを読むことで、「~さんは、みんなが気付かないよさを発見している!」と新たな学びを得ていました。
ポイントは、撮影する写真の枚数を限定しておくことです。本来の目的は撮影でなく目で見ることです。作品の形や色のよさや面白さとともに、接着に注目することも重要になります。
ロイロノートのカードを、図工で製作した作品の鑑賞用カードとして活用することは、何年生でも可能です。学年に応じたユニークな鑑賞をやってみましょう。以下、考えられる鑑賞の授業です。
●1・2年図工
友達の絵画の素敵な部分をアップで撮影して、「こんなところがよかったでショー」をする。
●3・4年図工
友達の工作や立体をいろんな角度から撮影して、「さらにステキな作品たちショー」をする。
●5・6年図工
動く仕組みを動画撮影して見せ合う「楽しい動くおもちゃンネル」をする。
西尾 環(にしお・たまき)●熊本県公立小学校教諭。小学校教諭として学校現場一筋。体育主任、研究主任、教務主任などを歴任。熊本大学教育学部情報教育研究会、熊本県市図画工作・美術教育研究会、学級づくり研究会、D-project(デジタル表現研究会)、ArtMile共同壁画プロジェクトなどで長年活動する。ADE2011、ロイロノート認定ティーチャー、シンキングツールアドバイザーなどの資格を持つ。
過去に、「日本子どもの版画指導者賞」「ちゅうでん教育大賞優秀賞」「D-pro booksアワード賞」など受賞。著書に「ゼロから学べる図画工作授業づくり」(明治図書出版)、分担執筆に「楽しい!学級づくり5・6年」(小学館)など多数。
GIGAスクール構想で、学校現場も本格的なタブレット活用の時代です。ICTの先進的な熊本市のベテラン教師が執筆。小学1年生から6年生までの、タブレットを活用した様々な授業実践を紹介しています。タブレット1人1台の時代に、すぐに役立つ授業デザインが満載です。
著/西尾 環
発行/小学館
B5判/80頁
ISBN:9784091126047
構成/浅原孝子 イラスト/藤崎知子