小4 国語科「世界にほこる和紙」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「世界にほこる和紙」(光村図書)の各時の板書例、発問例、ワークシート例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/北海道教育庁義務教育課・平山道大
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、目的を意識して、中心となる語や文を見つけて要約する力を付けます。
文章全体の内容を正確に把握した上で、元の文章の構成や表現をそのまま生かしたり自分の言葉を用いたりして、文章の内容を短くまとめることができるようにします。要約する目的を意識して、内容の中心となる語や文を選び、要約の分量などを考えて要約することが重要です。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元は、単元後に学習する「伝統工芸のよさを伝えよう」との関連を図り、文章の内容を要約する言語活動を設定します。
まずは、「世界にほこる和紙」を共通教材として、文章全体の組み立てを考えたり、中心となる語や文を確かめたりしながら、文章の内容を二百字以内で要約する学習に取り組みます。
その後、学習したことを生かして、和紙以外の伝統工芸について書かれた本を図書館などで探して読み、内容を要約する学習に取り組みます。
単元の導入において「伝統工芸のよさを伝える」という学習の見通しをもつことにより、目的を意識して要約することができるようにします。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 伝統工芸の魅力を知り、学習の見通しをもつ
単元の導入では、和紙など日本の伝統工芸の魅力やそれらが世界で注目されていることを知り、「伝統工芸のよさを伝えたい」という思いを高めます。日本の伝統工芸について説明した書籍や動画、ウェブサイトなどを紹介したり、和紙などの実物を用意したりすることにより、学習への意欲を高め、主体的に学びに向かうことができるようにします。
また、本単元の学習後、リーフレットを書く単元があることなども意識しながら、要約する学習の目的を明確にします。伝統工芸について書かれた文章を読んだり、読んだ文章を要約したりする必要があることを確認するなど、学習の見通しをもち、「世界にほこる和紙」を要約する目的を明確にすることが大切です。
〈対話的な学び〉 目的と視点を明確にして交流する
三次では、各自が選んだ伝統工芸について書かれた本を要約し、交流します。
「自分の要約はうまくできているか」を見直す時間をとることにより、自分の要約をよりよくするという目的をもち、「友達が要約した文章と比べて読んでみたい」という思いを強くもちながら交流することができるようにします。
交流する際には、要約のしかたや伝統工芸のよさについて伝え合います。「要約のしかた」と「伝統工芸のよさ」の欄を設けたワークシートを活用し、交流したことをメモしていくことにより、交流の目的と観点を明確にしながら交流できるようにします。
その際、同じ伝統工芸や本を選んだ人との交流をはじめに行ったり、自由に立ち歩いて交流したりするなど、交流する人数や組み合わせを工夫することが大切です。
〈深い学び〉 中心となる語や文を見つけ要約する
文章を要約する際には、要約する目的や要約する内容、要約する分量などを明確にした上で、中心となる語や文を見つけることが大切です。
本単元では、後の単元との関連を図り、「伝統工芸のよさをリーフレットで伝える」ことを目的とします。「世界にほこる和紙」を要約する場合、和紙のよさについて書かれた内容を中心に、二百字以内で要約します。本文を読んで、中心となる語や文に線を引いた後、「初め」「中」「終わり」のまとまりごとに、中心となる語や文を箇条書きで書き出します。
また、中心となる語や文を基に要約する際には、ワークシートを活用して、元の文章の組み立てを生かして、二百字以内にまとめます。
一人学びで要約を行う前に、「初め」の部分をどのように要約するかを学級全体で考えたり、いくつかの要約の例を比較したりしながら、要約に用いる語や文をさらに精選したり、自分なりの言葉に言い換えたりする方法について、具体的に学習することが大切です。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)中心となる語や文に線を引き、抜き出して整理する
教材文全文を記載したワークシートをワープロソフト等で用意し、本文に自由に線を引いたり、枠で囲んだり、矢印を書き込んだりできるようにします。児童は、端末を活用することにより、書き消しを自由に行うことができ、色分けやコピー&ペーストを容易に行うことができるようになります。
中心となる語や文に線を引き、自分の考えを整理する際にも、端末上で学習できるようにします。
児童が教材文を引用する際、本文をコピー&ペーストすることにより、作業を効率的に進めることができるようになります。
その際、思考を整理するソフトを活用し、端末に用意したワークシートで学習を行うことにより、中心となる語や文を書き出し、それらを視覚的に整理しながら文章の内容を要約することができます。
(2)中心となる語や文を基に二百字以内に要約する
端末のワープロ機能を活用すると、中心となる語や文をまとめたワークシートAに記入した内容をもう一枚のワークシートBにコピー&ペーストして、要約の文章に生かすことができます。
また、ワープロ機能を活用することにより、要約した文章の字数の確認や調整を容易に行うことができます。
6. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: 筆者の考えをとらえて、自分の考えを発表しよう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 日本の伝統工芸が世界で注目されていることを知り、伝統工芸のよさについて調べ、伝統工芸について書かれた文章の内容を要約するという学習の見通しをもつ。
「世界にほこる和紙」を読み、学習計画を立てる。
学習課題: 伝統工芸のよさを伝えるために、それに関する本を読み、文章の内容を要約しよう
・第二次(2時、3時、4時、5時)
②「世界にほこる和紙」の文章全体の組み立てについて考える。
・筆者の考えが書かれている段落を見つけて、文章全体を「初め」「中」「終わり」に分ける。
③筆者の考えとその理由や例を整理する。
・筆者が何を説明し、そのためにどのような例を挙げているかをノートにまとめる。
④「初め」「中」「終わり」のまとまりごとに、中心となる語や文を確かめる。〈 端末活用(1)〉
⑤ 中心となる語や文を使って、「世界にほこる和紙」を二百字以内で要約する。〈 端末活用(2)〉
・第三次(6時、7時、8時)
⑥⑦ 日本の伝統工芸について書かれた本を探して読み、内容を要約する。
⑧ 要約した文章を読み合い、感じたことを伝え合う。
各時の板書例、ワークシート例、発問例、児童の発言例
〇 単元の1時間目では、本単元で取り上げる日本の伝統工芸の魅力や国際的にも高い評価を得ていることを知り、「伝統工芸のよさを伝えたい」という思いを高めます。
日本の伝統工芸について説明した書籍や動画、ウェブサイトなどを紹介したり、和紙などの実物を用意したりすることにより、日本の伝統工芸への興味を高め、主体的に学びに向かうための学習意欲を引き出します。
日本の伝統工芸への興味が高まったところで、単元の学習後に伝統工芸のよさについてリーフレットにまとめることを紹介するなどしながら、本単元では、各自が選んだ伝統工芸について書かれた本を読み、その内容を要約することを確認します。
その上で、文章を要約することができるようにするためには、どのような学習が必要かを相談し、まずは学級全体で「世界にほこる和紙」を読み、要約をどのように行うかを考え、その後、各自が選んだ本を読んでいく必要があることなど、学習の見通しを立てていきます。
児童が「世界にほこる和紙」を要約する目的を明確にもち、主体的に学習に取り組むことができるようにすることが大切です。
さらに、単元の学習課題を解決するためには具体的にどのような学習をしていけばよいかを考え、単元の学習計画を立てます。
その際、板書例にあるように、単元の学習課題を「山」に見立て、「どのように『山』を登っていくか」を児童と教師が一緒に検討していくことなどが考えられます。
児童が主体的に学習に取り組むことができるよう、学習計画を立てる際には、教師主導とならないよう十分に留意することが大切です。
〇 伝統工芸について書かれた文章を読んでそのよさをまとめるためには、伝統工芸について書かれた様々な文章の中から、伝統工芸のよさについて書かれた箇所を見つけることができるようになる必要があります。
そこで、単元の2時間目では、「世界にほこる和紙」を読み、筆者が和紙のよさについてどのように考えているのかを捉えるために、「世界にほこる和紙」の文章全体の組み立てに着目しながら、筆者の考えが文章のどの部分に書かれているのかを確かめます。
「世界にほこる和紙」の中で、筆者の考えがどの段落に書かれているか、考えを支える具体的な事例がどこに書かれているか、などを確認しながら、文章全体を「初め」「中」「終わり」に分けていきます。その際、上に示した板書例のように、教材全文を黒板に貼るなどして、文章全体を視覚的に捉えることができるようにすることが大切です。
< 教師の発問、児童の発言例 >
「世界にほこる和紙」を要約するときに、本文のどの部分が大切だと思いますか。
筆者の考えには、「やぶれにくく、長もちする」など、和紙のよさについて書かれているので、大切だと思います。
そのほかにも、例えばせんいの長さや正倉院に残っている和紙など、筆者の考えと関係している具体例も大切だと思います。
文章全体の中で、筆者の考えや具体例は、どの段落に書かれていますか。
2段落目や10段落目に、筆者の考えが書かれています。
そのほかにも、7段落にも筆者の考えがあります。
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イラスト/横井智美
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