小一道徳授業ルポ「二わのことり」教材の世界に入り込んで考えられるような工夫を
道徳の研究に力を入れている東京都町田市立小山ヶ丘小学校の授業実践を、文部科学省の浅見哲也教科調査官の解説入りでご紹介します。
目次
教材
教材名:「二わのことり」(東京書籍)
主題:友達を思う心〈B友情、 信頼〉
導入
本時のねらい
相手を思う気持ちが大切だと気付き、 友達と仲よくしようとする心情を育てる。
1 自分自身をふり返り、課題意識をもつ
「あなたのいいところはどんなところですか?」という事前にとったアンケート結果で一番多かったのが、「友達を大切にする」という回答でした。その結果を提示し、「友達を大切にするとは、どういうことですか」という発問を投げかけ、ねらいとする道徳的価値へ方向付けをします。
展開
2 教材「二わのことり」の話を聞いて話し合う
ICTを活用して教材の場面絵の提示を行いながら読み聞かせ、物語のあらすじをつかめるようにします。ICTの活用を通し、教材の理解や主人公の気持ちを自分事として捉えやすくします。
発問
「うぐいす」の家にいる「みそさざい」はどんなことを考えていたのでしょう。
子供たちの発言
やまがらさんは一人でさびしい。
せっかくの誕生日なのに、だれも行かないと思う。
行ってあげられない、自分<みそさざい>もさびしい。
発問
「やまがら」の家へ行きながら、「みそさざい」はどんなことを思っていたのでしょう。
子供たちの発言
早く行かなきゃ。
やまがらさん、待っててね。
授業の工夫
一年生の成長段階では集中力が続かないところがあります。本時では、例えば手づくりのみそさざいを動かしながら、子供に近付いたり、離れたりして立ち位置に変化をもたせて発問し、集中できるようにしています。また、主人公の気持ちを自分事として捉えやすくしています。
中心発問
目に涙を浮かべて喜ぶ「やまがら」を見て、「みそさざい」はどんな気持ちになりましたか。
中心発問時、教師はやまがら役、子供はみそさざい役として役割演技を行います。そうすることによって、相手の気持ちを考えて行動した自分自身の気持ちを表現できるようにします。
浅見先生の花まるポイント
役割演技のところで先生が子供に近付いたり、離れたりすることによって、子供がその状況を自然に感じ取ってやさしく声をかけたり、子供のほうから先生に近付いてきたりして、子供が本来もっているよい心を引き出すようにしていました。
3 自己を見つめる
発問に対し、ワークシートに書いた後、発表して、意見を共有します。これまでの生活をふり返り、友達を大切にするとは、どういうことかを考えます。
発問
友達に何かをしてあげたり、してもらったりしたことはありますか? そのときどんな気持ちでしたか?
子供たちのふり返り
○○ちゃんがいっしょにかえろうといってくれて、あんしんするし、うれしい。おともだちとおはなししながらかえるとたのしい。○○ちゃんはたのもしいおともだちです。
きのう、がくどうで、○○くんと□□くんがおにごっこをさそってくれてうれしかった。
むしとりのときかごがなくて、ともだちがいっしょにつかおうといってくれてうれしかった。
終末
4 教師の説話を聞く
相手のことを考えて行動したことが、友情につながったという教師の子供時代のエピソードを話し、友達と仲よく助け合っていこうとする心情につなげます。
文部科学省教科調査官 浅見哲也先生からのアドバイス
特に低学年では、教材の世界に子供たちが入り込んで考えられるようにするためのさまざまな工夫を見ることができます。黒板にはうぐいすとやまがらの対照的な家の様子を視覚的に捉えられるようにしています。さらに杉山先生は授業に動きを取り入れ、役割演技をはじめ、みそさざいが羽ばたきながら飛ぶ様子を手づくりの模型で示し、どんなふうに飛んでいるのかを子供たちに問いながら、その飛び方に伴う気持ちや考えを引き出すなど、飛び出す絵本のような教材活用の工夫が見られました。
取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗
『教育技術 小一小二』 2021年12/1月号より