小五道徳授業ルポ「ヘレンと共にーアニー ・ サリバンー」友達と比べながら努力の秘訣を見つけていく
ICTを活用した授業への取り組みも早く、新たな実践を多く取り入れている埼玉県飯能市立加治小学校。「活力ある学校」を目指す学校像として掲げ、子供たちの「笑顔と質の高い学びを保障する学校」づくりを推進、令和2年9月にはタブレット端末を導入して、授業や様々な活動で積極的に活用しています。今回はタブレット端末を用いた道徳授業を紹介します。
目次
教材
教材名:「ヘレンと共に ーアニー・ サリバンー」(出典:『私たちの道徳』文部科学省)
内容項目:希望と勇気、努力と強い意志
導入
本時のねらい
より高い目標に向けて、くじけずに努力しようとする実践意欲と態度を育てる。
いまの子供たちの実態から今日のテーマを考える
自分たちの生活の中で、夢や目標があるか、そのために努力をしているかを子供たちに問いました。今回は自分の状況を示すことができる座標軸を用いた図をタブレット端末で使用し、自分に当てはまる位置に丸を付けます。
タブレットを活用!
これを送信↓
自分で丸を付けたら、教師のフォルダへ提出。ある程度集まったところで、子供たちが友達の回答を見られるよう共有します。友達の回答を見ながら、今日のテーマへの興味や関心を高めます。
普段から教師も本音で語り、意見の出やすい学級づくり
5年生は心の成長も著しく、本音を隠し始める年頃です。普段から学級会などで話す機会を多く設けるほかにも、私自身がうれしい気持ち、悲しい気持ち、不安なども本音で話すように努めています。「かっこいいことや正しいことではなくても、自分の気持ちを言っていいんだ」という雰囲気づくりを大切にしています。
展開
サリバン先生のすごいところを考えながら座標軸などの図を用いて「自分ごと」として考え、道徳的価値について学びを深めていく。
発問1
サリバン先生のどんなところがすごいと思いましたか?
今日の学習テーマについて考えられるよう、教材を読み聞かせる前に「サリバン先生のすごいところを考えながら聞いてください」と伝えておきます。「教材から学べること」と「自分のこととして考えてほしいこと」の両方を意識しながら、授業を進めます。
発表内容
かげ口を言われても、あきらめずに続けた 。
しっかり教えてあげた。
目も耳も口も不自由なのに手で教えることを考えた。
ヘレンを大学まで入学させた。
発問2
みんなのことを教えてください。それぞれの色のゾーンに丸を付けた人、どんな気持ちで努力していますか?
導入で丸を付けた座標の内容に沿って、子供の生活から夢や目標と努力に対する思いを聞きます。自分と違う色に丸を付けた友達の意見を聞くことで、新たな発見もあるようです。
発問3
では、いままでどんな努力をしてその結果がどうなったかをグラフ線で示してください。
タブレットを活用!
これを送信↓
努力している期間を横軸、結果を縦軸に表した新たな座標軸を子供たちに送信します。今回も提出した子が増えてきたところで回答を共有します。
子供たちの発表内容
発表する子供だけでなく、タブレットの活用で全員が自分のことや経験を振り返り、その思いを表現することができます。
発問4
ところで、あきらめたくなるときはどんなときでしょうか。
まちがえが多いとき。
試合で負けっぱなしのとき。
努力することを笑われたとき。
矢印をなぞりながら、あきらめたくなるときや努力が結果に結び付かないときの気持ちを確認します。みんなでひとつのことを考えるときは、画面から目を離して黒板に集中します。板書は考えの過程や変化が理解しやすくそれぞれのメリットを生かせる伝え方を意識しています。
発問5
あきらめたくなったとき、どうやったらがんばれそうですか?
最初の気持ちを思い出す。
自分を信じる。
まわりの人の力を借りる。
自分を応援する。
一度はなれる。
ほめてもらう。
自分のやっていることに自信をもつ
終末
タブレットを活用!
「あきらめずに努力する秘訣」を振り返りシートに書く
今日の学びを確かなものにするために授業で学んだ「あきらめずに努力する秘訣」をノートに鉛筆で書き、タブレットで画像を撮影して提出します。
努力するひけつは人ぞれあるけれど自分を信じたり、人にはげましてもらったりするといいということがこの授業で見つかりました。
みんなの中には、努力して夢や目標をさがしているという子もいて、すごいと思いました。
タイピングの得意・不得意もあるのでたくさん書いてほしいときは手書きにしています。
文部科学省教科調査官 浅見哲也先生 ワンポイントアドバイス
ICT端末を活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」
各教科等の授業において、子供を主語にした「個別最適な学び」と「協働的な学び」による学習を行っていくために、ICTを基盤的なツール(道具)として活用していくことが「令和の日本型の学校教育」として打ち出されました。佐々木先生の授業では、1人1台のICT端末を活用し、一人一人の子供が夢や目標に向かう自分の様子を表現し、それらを全員で共有することによって、友達と比べながら努力の秘訣を見つけていく展開がなされています。正にこのような学習が求められるところです。個々のグラフを共有し、「誰の様子をもっと聞いてみたいか」という投げかけは、子供の主体的な学びを促すきっかけとなりました。
取材・文/ルル 撮影/北村瑞斗 構成/浅原孝子
『教育技術 小五小六』 2021年10/11月号より