小5算数「合同な図形」指導アイデア
執筆/新潟県公立小学校教諭・二瓶亮
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、新潟県公立小学校校長・間嶋哲
目次
本時のねらいと評価規準
(本時の位置 3/7時)
ねらい
合同な三角形をかくためには、すべての構成要素を用いる必要がないことを理解し、合同な図形をかく。
評価規準
合同な三角形をかくためには、1つの辺の長さと、あと2つの構成要素を用いればかくことができることを理解し、合同な三角形を作図する。
問題
三角形ABCと合同な三角形を作図しましょう。

第3学年では主に差異点や共通点を基に、問題を見いだすことができるようにするため、複数の事物・現象を比較し、その差異点や共通点を捉えることが大切です。辺の長さや角度など、数値は一切示さずに提示しましょう。作図に必要な要素について、子供から引き出していく中で作図のイメージを膨らませていくことが大切です。
どんな情報がほしいですか。
辺の長さと角度が知りたい。
では、辺BCの長さだけ教えます。
まだ足りないよ。それだと頂点Aの位置が決まらない。
頂点Aの位置を決めるには、あといくつの情報が必要ですか?
あと3つか4つあればかけると思う。
あと2つ知りたい。
本時の学習のねらい
合同な三角形を作図するには、辺BCの他に、あといくつの条件が必要だろうか。
見通し
2つや3つ、4つと言っている人がいますね。どうしてあと1つではできないのですか?
それだと頂点Aの位置がはっきりと決まらない。たとえば、辺ABの長さが分かったとしても、どんな角度(角B)で辺ABを引けばいいのか分からない。
もし角度を教えてもらっても、辺の長さが分からないと、どこまで引くのかが分からない。
そうそう。だから、辺の長さと角度を1つずつ教えてほしいな。
別のかき方もできそうだよね。コンパスを使えば……。辺の長さをあと2つ知りたいな。
三角形ABCの図を渡します。自分で必要だと思う条件を選んで作図しましょう。合同な図形を作図する際に、どの辺の長さや角の大きさを使ったのかをノートに残しておきましょう。
自力解決の様子
A つまずいている子
2つの辺の長さと、2つの底角の大きさなど、3つを超える条件を使ってかく。

B 素朴に解いている子
合同条件ではない3つの条件を使ってかく。

C ねらい通り解いている子
3辺の長さ、2辺とその間の角、1辺とその両端の角、といった合同条件を使ってかく。

学び合いの計画
自力解決の途中で考えが止まってしまったり誤った考えをしたりしている子がどこで困っているのかを全体で解釈したいです。一度作業を止め、その考えのまま作図すると、どんな困ったことが起きるのかについて全体で考える場を設けます。
全体発表では、Aの考え(反対側の辺を作図するために角度を測る)を採り上げることで(出なかった場合は教師から提示する)、作図の必要条件について吟味する方向付けをします。
ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
作図方法を紹介してください。(Aのような考えを採り上げる)
まず左の辺から作図します。50°を測って6㎝の線を引きます。次は、右の角度60°を測って……。
えっ? 右の角度は測る必要ないんじゃない?
そっか。頂点Aの位置はもう決まっているね。
頂点AとCを結ぶだけでいいんだ。
今、作図に使ったのはどこの部分ですか?
角Bと辺AB、元々あった辺BCの3つだね。
私は角Bと辺ACを使って作図できたよ。(Bのような考えを採り上げる)(もし子供から出ない場合は教師が提示してもよい)
ノートに作図してみましょう。

本当だ。できた。
できたけれど、辺ACを5.3㎝にしたのに角Cが60°にならない。
この方法だと2パターンの作図ができてしまうってことだね。
※他の作図方法についても同様に全体で確かめる。
辺BCの他にいくつの条件が必要でしたか?
どれも辺BCの他にあと2つ必要。つまり合同な三角形の作図には3つの条件が必要だってこと。
3つの条件ということは、3つの角の大きさを使えば合同な三角形を作図できるでしょうか?
それは無理だと思う。そもそも辺がないと角を作ることができないよ。
角度だけだと、小さい三角形になったり大きい三角形になったりするんじゃないかな?
本時のねらいに正対した学習のまとめ
合同な三角形の作図には、1つの辺(辺BC)の他にあと2つの条件が必要。
本時の評価問題
次の三角形と合同な三角形を作図しましょう(作図に用いた部分に印をつけましょう)。

子供に期待する解答の具体例
※1辺の長さとその両端の角の大きさなど作図に用いた部分に印を付けている。

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿
1つの辺の長さと、あと2つの構成要素を用いて、合同な三角形を作図している(合同条件でなくてもよい)。
感想例
合同な三角形の作図は3つの条件でかくことができると分かりました。私は最初5つの条件で作図をしていたのですが、〇〇さんの発言を聞いて、頂点Aの位置が決まっているから反対側は測る必要がないと気付きました。
『教育技術 小五小六』 2021年6/7月号より