小6理科「月と太陽」指導アイデア

執筆/大阪府公立小学校教諭・松田善行
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・民辻善昭、大阪府公立小学校校長・細川克寿

主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

令和2年(2020年度)から実施される学習指導要領に、

単元など内容や時間のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。

と記されています。「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を行い、資質・能力を育成することが大切になります。では、これらの視点で授業をどのように改善していけばよいのでしょうか。

まず、「主体的・対話的な学び」の実現に向けて、子供が学びのテーマに興味や関心を持てることや、子供たちの疑問を対話の中で醸成させながら問題を設定することが大切です。また、実験・観察を計画する場面では、指導者がスマートな方法を一方的に提案するのではなく、「どうすれば検証できるか」「どんな結果になりそうか」と問い返しながら、検証方法を決定していくことも大切です。そうすることで実験・観察という手続きが、子供にとって問題を解決するための手段として位置付けられ、その後の学習を主体的なものにしていきます。

また、十分に考えることができない子供に対しては、ユニバーサルデザインの視点からイメージや考えを持ちやすくする支援について考えることも大切です。例えば、本単元では天体の位置関係をイメージするために、時間的・空間的な見方を働かせることが大切ですが、そのスケールが大きいため、天体の位置関係を捉えることが難しいことも少なくありません。その点をカバーできる支援について考え、主体的・対話的な学びを実現できるようにすることが大切です。

「深い学び」については、本単元で育む資質・能力に基づく「見方・考え方」を働かせながら、様々な知識を相互に関連付けていくことが大切です。一例を挙げると「これまでに三日月は何度も見たことがあるけれど、その反対の形(月齢26 日前後)の月は見たことがない」と考える子供や、「満月は日没頃に東の空に出てくる」という生活経験を持っている子供は多いと思います。その生活経験を本単元で育んだ見方・考え方を働かせて関連付けて考えられるようにすることで、その理由が分かるようになってきます。このような学習活動を通して、天体についての関心を高めるとともに、認識を深めることができるようにしていきたいものです。

授業づくりのポイント

①日々変化していく月と太陽の位置関係をつかみやすくするために、まず時間を固定して考えるようにし、位置関係のみに焦点化して考えるモデル実験の設定。
②学習した内容を基に「月と太陽の動きのモデル器具」を作成し、それを活用しながら日常に結び付けて考えを深める場面の設定。

単元のねらい

月と太陽の位置に着目して、それらの位置関係を多面的に調べる活動を通して、月の形の見え方についての理解を図り、観察、実験の技能を身に付けるとともに、より妥当な考えをつくりだすといった、問題解決の力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元計画(三次 全6時間)

一次(1時)

❍これまでに学習した「太陽」や「月」の学習内容を振り返る。
太陽と月の似ているところや違いはどんなところだろうか。
❍太陽と月について調べ、共通点や差異点について話し合い、まとめる。
(?)「まるいはずの月が、いろいろな形に見えるのはどうしてかな?」

二次(2.3.4時)

月がいろいろな形に見えるのは、どうしてだろうか?
❍月の形が変わって見える仕組みについて、モデル実験を行い調べる。
(考)月は球形をしていて、月の輝いている側に太陽がある。太陽と月の位置関係によって月の見え方が変化する。
月の形が日々少しずつ変化していくのは、どうしてだろうか?
(活動アイディア①)
(考)太陽と月の位置関係が少しずつ変わっていくから、月の形も日々少しずつ変化する。

三次(5・6時)

これまでの学習を基に、日常の月の見え方や動きの理解を深めよう
(活動アイディア②)
「夕方に、三日月が西の空に見える理由がよく分かるね」
「夕方頃に、東の空から満月が出てくる理由が分かったよ」
「三日月の反対の形の月(二十六夜月)は、日の出の少し前にしか見えないから、見たことがなかったんだね」
「○月○日の月は、どんな形で、何時頃に、どの方角に見えるかな?」

単元デザインのポイント

【一次】

〇本単元に入る前に、三日月の頃から、月の観察を日々の家庭学習に設定しておくと、関心・意欲の高まりや今後の学習の深まりが期待できる。
〇太陽と月は見かけの大きさは同等であるが、太陽の方が大きいことを知っている子供は多い。第一次では、「なぜ太陽と月が同等の大きさに見えるのか」について考えられるように問いかけ、データによる地球からの距離や大きさの差について捉えられるようにする。

【二次】

〇第二次では、「まるいはずの月が様々な形に見えること」を取り上げ、問題を設定できるようにする。これまでに月がまるいことは学習した。さらに、様々な情報から球形であることを知っている子供は多いと考えられるが、あえて、それは円形なのか球形なのかも考えさせたい。

電灯(太陽)、ボール(球形)、円い厚紙(円形)などを使ってモデル実験を行い、検証することが考えられる。多面的に調べることで、「球形」と考えることがより妥当であることに気付けるようにする。

次に、月が日々少しずつ形を変えていくことに注目し、問題を設定できるようにする。検証方法について考える際、変化していく「空間的」「時間的」の2つの見方を、同時に働かせようとすると複雑化してしまうため、場面を片方に焦点化して考えられるようにする。

【三次】

〇本単元で扱う天体は、そのスケールが大きいため、動きや位置関係を捉えたり、その見え方についてイメージしたりすることが難しい場合がある。第三次では、第二次で作った月と太陽の動きのモデル器具を活用し、日常で見える様々な場合の月について考えられるようにする。

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