低学年におすすめソーシャルスキルトレーニング「あいさつ&用紙送り」
コロナ禍の学校生活で、マスクの着用や活動の制限などが求められることによって、人との関わりに苦手をもつ子供が増えています。特に、低学年でその傾向が顕著です。低学年の早いうちからソーシャルスキルトレーニング(SST)を取り入れて、その思いを取り除いてあげましょう。
SSTに精通するNPO法人TISEC理事長・荒畑美貴子先生が、あいさつとプリント用紙送りのSSTをレクチャーします。
荒畑美貴子(あらはた・みきこ)。NPO法人TISEC理事長。元東京都公立小学校教諭。専門は、シュタイナー教育を基礎とした教育学。ソーシャルスキル教育に関する実践も多い。発達障害のある子供や保護者の支援、若手教師の育成のために、さまざまなメディアで配信している。NPO法人TISECのHPでは、「お知らせ」から教員向けの画像資料のダウンロードが可能。また、SSTに関する問い合わせも受け付けている。
目次
低学年向け「SST」のポイント
子供たちの様子を見ていると、幼いころから感染予防のために人と距離を取って生活してきたことが、人との関わりの未熟さにつながっているように感じます。しかし、子供たちは友達と関わりたいと願い、関わることを楽しみ、よりよい関わり方を知りたいと願っているのです。
そんな低学年の子供とソーシャルスキルトレーニング(SST)を進める際には、「遊びながら身に付ける」ことがポイントとなります。そこで、今回は、楽しみながら練習でき、効果的にソーシャルスキルを身に付けられる実践をご紹介します。
SSTの詳しい考え方はこちらの記事で確認!
・教室で手軽にできる!低学年向けソーシャルスキルトレーニング
実践例1「あいさつの仕方」
①あいさつの意味や目的を伝える
あいさつは、相手の心をノックして「元気ですか? 私は元気です。今日もよろしくね!」といった気持ちを伝える大切な機会であることを伝えましょう。また、あいさつを交わすことは、友達関係を円滑にするための鍵であることも知らせます。
②あいさつクイズをする
イラストを使ってあいさつクイズをします。
1問目は「表情」です。まず、どの表情があいさつに相応しいと思うか、子供たちはイラストから選んで手を挙げます。次に、気に入った表情を実際にやってみて、イラストと同じような表情ができているかどうかを友達同士でチェックします。中には、笑顔がいいと分かっていても思うような表情をつくることが苦手な子供たちもいますので、無理矢理行わせる必要はありません。
2問目は「しぐさ」です。どのようなしぐさがいいと思うのか、1問目と同様にイラストから選びます。その後、同様にしぐさもやってみます。
③あいさつする際のポイントを確認する
ソーシャルスキルのポイントには、表情や視線、しぐさ、相手との距離、声の表情などがありますが、一度にたくさん挙げてしまうと、低学年の子供たちは戸惑ってしまいます。最初は、「表情」と「しぐさ」に絞って確認することをお勧めします。②で試したことを生かして、あいさつするように話します。
④隣同士や学級みんなで練習する
隣の席の友達と、あいさつの練習をします。上手にできたら、相手に「合格」と伝えるように指導します。
次に、じゃんけん列車などの音楽をかけて、教室の中を自由に歩いて、音楽が止まったら相手を見つけてあいさつをします。その際も、あいさつが上手だったら「合格」などと伝えます。
⑤振り返りをする
活動が楽しかったのか、明日からあいさつをどのようにしたいと思うのかなどを発表してもらいます。友達がどのような気持ちでSSTを行ったのかを知ることが、次への活動の意欲につながります。
実践例2「プリント用紙送り」
①プリント用紙の渡し方について説明する
子供たちは、用紙を配ったり渡したりする際に、丁寧に受け渡すことの大切さに気付いているでしょうか。シワになった用紙を受け取るのは、気分が悪いことを発言から引き出し、シワにしない渡し方の練習をすることを伝えます。
②手本を見て、よいやり方に気付かせる
両手で用紙をもち、相手に向き合って渡す様子を、教師が実演します。それを見て、どのような点がよかったのかを発表してもらいます。相手の目を見る、両手で受け渡しをするということは気付きやすいので、それに加えてゆっくり丁寧にすることの大切さにも注目させたいポイントです。
③グループごとにやってみる
座席の縦1列ごとに、プリント用紙を前から後ろまで送っていきます。他の子供たちはその様子を見て、上手にできたら拍手を送ります。
④振り返りをする
シワのない用紙をもらったときの気持ちや、丁寧に渡すことの大切さなどを発表してもらいます。実生活の中でも、相手に対して丁寧に接することが好ましいことに気付かせていきましょう。
来月は、トラブル解決のためのSSTなどをご紹介します。
イラスト/佐藤雅枝