夏休み宿題最大の敵「読書感想文」には事前指導が必須!
夏休みの宿題として必ず出される読書感想文ですが、「何を書いたらよいかわからない」と、なかなか手をつけられない子どもが多いのが実情。感想文の書き方をきちんと事前指導しておけば、感想文へのハードルはぐんと下がって、子どもたちは不安なく取り掛かることができます。
文/兵庫県公立小学校校長・俵原正仁
目次
事前指導で子どもの不安感をなくそう
ついつい最後まで残ってしまう夏休みの宿題といえば、読書感想文と自由研究。
なぜ最後まで残ってしまうのかと言えば、
「何を書いたらよいかわからない」
「何を調べたらよいかわからない」
からです。自由研究については、理科の時間等に、テーマを決めさせるだけでも、心理的負担がぐっと減ります。研究(実験・観察)の方法は、理科の時間に行っているからです。
問題は、読書感想文です。多くの学級では、一学期、感想文の書き方の指導を一切せずに、「さぁ、書いてきてください」と、いきなり夏休みの宿題に登場するのです。
これでは、子供たちは(保護者も)たまったものではありません。経験もないカーリングの試合に、いきなり「今すぐ出てください!」と言われたようなものです。
ですから、夏休み前のバタバタしている時期ですが、どこかで時間をとって感想文の書き方を指導しましょう。
「感想文の書き方のコツ」プリントで指導しよう
下は、私が夏休みに、子どもたちに配っていた「感想文の書き方のコツ」のプリントです。
感想文の書き方のコツ
最初は、ノートに下書きをおこないます。感想文を書くための素材を集めるわけです。
【ステップ1 物語の要約を書く】
「この物語は、~という話です。」という感じです。教科書の物語文でしたら、だいたい、30文字以内またはノート2行以内です。実際に夏休みに書く際は、読む本も長編のはずです。4行ぐらいでもかまいません。このように、4行ぐらいにまとめることによって、だらだらと粗筋だけで1ページも2ページも書くことがなくなります。それだけで、感想文がしまったものになります。
【ステップ2 気に入った所、おもしろかった所を写す。そして、その理由を書く】
この理由が、感想文として大切なところです。しっかり書いてください。選ぶ箇所の長さは特に制限しませんが、理由の部分が選んだ箇所以上の量を書くことが条件になります。引用した部分の方が、地の文より長くなるということは研究論文では考えられないことだからです。実際の本を読む時は、気に入った所やおもしろかった所をさがすために、ポストイットを持って本を読むのがいいでしょう。引用部分は、1カ所でなくてもかまいません。2カ所あってもいいのです。
【ステップ3 以前同じ体験をしたことがあった場合、その時自分はどうしたかを書く。ない場合は、もし、同じような体験をしたら、自分はどうするかを書く】
実際の書きぶりとしては、次のようになるでしょう。「そういえば、私にもこんな出来事がありました。」「もし私が、この場面に出くわしたら…。」
【ステップ4 この本を読んで、わかったこと、気づいたこと、思ったこと、はてなを書く】
「わかったこと、気づいたこと、思ったこと、ハテナ」の部分は、「この本を読んで学んだこと・自分の考えが変わったこと」というように書いてもかまいません。ここで気をつけることがあります。「わかったこと、気づいたこと、思ったこと、ハテナ」を書く場合、その4つをすべて書く必要はありません。もちろん、書いてもかまいません。また、書く順番も、この通りに書かないといけないというわけではありません。むしろ、簡単な方から書き出すのがコツなのです。つまり、「思ったこと、ハテナ、気づいたこと、わかったこと」の順番に書いていく方が書きやすいのです。こう書くと、「わかったこと」から「これから自分は…」にもつなげやすくなるという利点もあります。
【ステップ5 または、これから自分はどうしていくか(どう生きていくか)を書く。】
「これからは、~というようにしていきたいです。」という感じで、感想文を閉めます。
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これで、下準備は完了です。原稿用紙に向かいます。ただし、必ずしも、下書きで書いた順番で書く必要はありません。1,2,3,4の通りでなくてもいいのです。むしろ、2から入った方が臨場感が出るというメリットもあります。いきなり物語の引用の部分から入るパターンです。そして、読んだ本の簡単な紹介をして、3に行くという形です。
このプリントを参考にして、できれば2〜3時間使い、じっくり授業をしてほしいところです。そこまで時間がとれなければ、このプリントを配って説明するだけでも構いません。それだけでも、子供たちは救われるはずです。
ちなみに、授業で指導をおこなう場合は、一学期の物語教材で感想文を書かせます。そして、早く書けた子同士で感想文を交換して、推敲校正もおこないます。友達の作品を読み、そこに赤鉛筆で、誤字脱字やわかりにくい表現などを添削し合うとよいでしょう。
『小五教育技術』2018年7/8月号より