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教科の壁を取り払う【あたらしい学校を創造する #11】

連載
あたらしい学校を創造する〜元公立小学校教員・蓑手章吾の学校づくり

HILLOCK初等部スクールディレクター

蓑手章吾

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。今回は、「教科の壁を取り払うこと」についてのお話しです。

教科の壁を取り払う【あたらしい学校を創造する 第11回】

その子にとっての必要性を基礎に置く学び

ヒロック初等部で実践したい学びについて、今回は「教科の壁を取り払うこと」についてお話しします。

前回、ヒロックでは、1年生の算数が終わったら次は2年生の算数という区切りではなくて、子供の興味やペースに合わせて、図形のルートを進んだり計算のルートを駆け上がったりできるようにする、という話をしました。これはひとつの教科の中の話でしたが、複数の教科についても同じように、個々の子供に合わせた、横断的な学習を想定しています。

例えば、理科で宇宙のことを知りたいとなったときに、速さの問題にぶつかるということもあるでしょう。そうしたら、速さの勉強をするために、算数のこの丘を上ろうよ、というルートも十分ありうると思っています。

また、高学年の理科に興味を持ったら、そこから中学年の算数に向かうという、いわば逆向きのルートを設定することもできます。そこが、自由進度学習のよさと言えるでしょう。その子にとっての必要性を基礎に置いて、学習を進めることができます。

山登りでは、僕らは山の頂上までの道のりを思い描いてから上ります。そのとき、「ほら、早く歩け」みたいなことを言われることはあまりないわけですが、学校では、教師が子供の学習を急かしてしまうようなところがあります。実際にそうかどうかは別としても、子供はそんなふうに感じているのではないでしょうか。

公立でも私立でも、例えば小学校6年間の国語の標準授業時数は1461時間と決まっています。でも、オルタナティブスクールである僕らはそれに縛られなくてもよいので、その子が必要なときに必要なだけの学習時間をかけることができます。つまり、学習指導要領では「この単元について8時間で学習すべし」と決められていたとしても、8時間をかけて学習する必要はないということです。2時間で終われば次のステップに行けばいいし、8時間でもわからないのであれば、もっと時間をかければいい。

今の小学校の学習の進め方は、「負債」を抱えたままでも決められた時数が終わったら次の単元に行く、というシステムになっています。そうしなければ、全部の単元が終わらないからです。でも実際に、かけ算の九九をマスターしないまま、どんどん上の学年に行かされ、その先の算数がわからなくなるという事態が、現場では結構起こっています。

小学校は履修できない場合に落第するというシステムになっていないのは、ひとつの優しさのように受け取られがちです。しかし、子供たちにとってみれば、わからない単元でも理解したものとして進んでいかなければならなくなるのは、辛いことです。これは、一斉授業の大きな弱点だと思います。

ヒロックでの様子

全単元をこなす必要はない

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