「教員免許と教員養成」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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学校の教員として勤務するためには、教員免許状が必要です。教員志望者が減少している現在、この制度や教員養成には何か問題があるのではないでしょうか。そのような視点から教員免許制度の全体像を探ります。

執筆/常磐短期大学助教・石﨑ちひろ

みんなの教育用語

教員免許状の種類

教員免許については、教育職員免許法(以下、教免法)に定められていて、幼稚園から高等学校までの教員は、原則として学校の種類ごとの免許状が必要です。これは「相当免許状主義」といわれています。

義務教育学校の教員は小学校・中学校両方の免許状、中等教育学校の教員は中学校・高等学校両方の免許状、特別支援学校の教員は特別支援学校と特別支援学校の各部(幼稚部、小学部、中学部、高等部)に相当する学校種の免許状が必要です。児童生徒の養護をつかさどる教員には養護教諭(養護助教諭)、栄養の指導および管理をつかさどる教員は栄養教諭の免許状が必要です。

教員免許状には、普通免許状、特別免許状、臨時免許状の3種類があります。普通免許状以外は、免許状を授与した都道府県においてのみ効力があります。

免許状は都道府県教育委員会に申請して授与されますが、授与されるためには、①所要資格(学位と教職課程等での単位修得、または教員資格認定試験の合格)を得るか、②都道府県教育委員会が行う教育職員検定(人物・学力・実務・身体面)を経る必要があります。具体的な授与基準等の細則は、都道府県ごとに定められています。

免許制度・教員養成の歴史と見直し

教員養成は、1945年の敗戦を契機として、「大学における養成」「開放性」を原則として行うことになりました。しかし、1970年ごろから、「落ちこぼれ」や「受験戦争」などのいわゆる「教育病理」の発生と、その結果生じた「教師バッシング」などにより、教員養成に厳しい批判が向けられるようになります。その際のキーワードとなったのは、「実践的指導力の向上」です。

中央教育審議会や教育職員養成審議会の答申では、「実践的指導力向上」のための教員養成・免許制度改革が打ち出されるようになります。そして、1998年の教免法改正により、「教職の意義等に関する科目」や「総合演習」の新設、「教育相談」の強化、「教育実習」の単位増(中学校)、「外国語コミュニケーション」「情報機器の操作」の必修化が具体化しました。

その後、2006年の中教審答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」において、教職大学院と教員免許更新制の創設が提言され、2009年から教員免許更新制が施行されました。

教員免許更新制は、それまで無期限だった教員免許の期限を10年とし、期限が切れる前の2年間で最新の知識などを学ぶ講習を30時間以上受け、修了が認定されなければ免許は失効するという制度ですが、多忙な教員の負担は大きく、教員のなり手不足を招く一因であるなどの意見がありました。そして2021年8月、文科相はこの制度を「早ければ2023年度から廃止する方針である」と表明しています。

2012年の中教審答申「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」では、「学び続ける教員像」が提起され、2015年12月に提示された3つの答申でも、他職種との連携、地域社会との連携、教師自身の学びの重要性が必要であるとされました。

新型コロナウイルスに伴う一斉休校により、学校の重要性の認知とGIGAスクール構想が進展したことで、2021年3月、中央教育審議会に「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」が諮問されました。現在、初等中等教育分科会教員養成部会と「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会、さらに特別部会の中に設けられた教員免許更新制小委員会とで、採用・養成・研修に関わる議論が進められています。

教員養成政策における不易と流行

教員の「質」については、教員の知識・技能よりも、教員としての態度の部分が重視され、教員養成が終わった段階でかなり完成された教員が求められている、という指摘があります。

実際に、養成政策においては、1998年の教免法改正以降も、養成の段階で個人に対してさまざまな能力を付加しようとしてきました。教育には変わらない事柄(不易)と変わっていかなければならない事柄(流行)があるといわれますが、教員養成政策においては、不易が何かが明らかにされないまま、流行ばかりが付加され、散漫になってきた面があります。そのため、現在上記の2部会1委員会において「教員免許で担保すべき基礎的な能力」が議論されることになりました。

そして、2021年8月の部会においては、学習指導や生徒指導の他、ICT活用能力を養成段階において付加すべきとの見解が示されました。養成教育課程については現職研修と合わせた議論を求めるとともに、教員の職務の基本は何かという視点からの免許制度改革を期待します。

養成政策や教員免許状更新講習の見直しは、教職の人気低迷とそれに伴う人員不足によるものでもあります。「令和元年度(平成30年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント」においては、競争率は年々低下していることが示されつつ、この低下の原因は「大量退職等に伴う採用者数の増加」によるものであり、「学生からの教職の人気が下がっているためとは現時点では必ずしも言えない」と記載されています。しかし、教職の魅力を伝えようと文部科学省が始めた、「#教師のバトン」プロジェクト(SNS上で、「#教師のバトン」のハッシュタグをつけて、つぶやいてもらう)では教職は魅力ではなく「ブラック」であるとつぶやく教員が続出しました。こうしたつぶやきが訴えるものの本質を捉えて、議論を進める必要があります。

今後も、教員免許状を取り巻く政策はめまぐるしく変化していくと考えられますが、教員として教壇に立つ資格の根幹になるものは何かという視点をもって政策を策定し、養成教育を行っていく必要があります。そうでなければ、教職は子どもたちにとっての最良の教育を提供するための仕事にはならないでしょう。

▼参考資料
朝日新聞「ICT活用能力『教員免許に必要』文科省、中教審に提案」(2021年8月5日版)
今津孝次郎『新版 変動社会の教師教育』名古屋大学出版会、2017年
小島弘道他『改訂版 教師の条件:授業と学校をつくる力』学文社、2016年
中日新聞(ウェブサイト)「『#教師のバトン』過酷さ訴える声殺到 文科省へ直談判の動きも」
日本児童教育振興財団編『学校教育の戦後70年史』小学館、2016年
文部科学省(ウェブサイト)「教員免許制度の概要」
文部科学省(ウェブサイト)「教員免許状に関するQ&A」

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