朝の会・帰りの会で子供の力を伸ばす

「朝の会」「帰りの会」は、毎日の学校生活の始まりとまとめとして行われています。しかし、なんのためにやるのか、子供にどんな力を付けたいのかまではっきり意識して取り組んでいるでしょうか。朝の会や帰りの会の利点を生かして、ていねいに指導することで子供の力を伸ばすことができます。一つひとつのプログラムで、どんなねらいをもてばよいか考えてみましょう。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・山本恭兵

朝の会・帰りの会で子供の力を伸ばす

朝の会・帰りの会のよさ

全員が司会を経験することができる

朝の会や帰りの会の司会は、基本的にその日の日直が担当します。日直は輪番制なので、どの子供にも、みんなの前で司会をするチャンスがあるということです。司会を行うときに、みんなの前で話すときの声の大きさや話し方などを指導することで、別の話合い活動や学習の際に役立ちます。

自分たちでプログラムを決めることができる

朝の会や帰りの会のプログラムは、細かいところまでは決まっておらず、自分たちで工夫することができます。二年生であれば、「一日のスタートを元気に始めよう」「明日も学校が楽しみになるようにしよう」など、朝の会や帰りの会の意義を考えて、自分たちに必要なプログラムを考え、話し合って決めることができます。

自分たちの生活を自分たちでつくっていく、自主的な活動になるようにしていきましょう。

毎日積み重ねることができる

朝の会や帰りの会は、毎日行います。短時間でも、毎日指導を積み重ねることができます。

「継続は力なり」という言葉もあるように、継続的に指導をすることで、子供たちに力が定着していきます。だからこそ、担任がどんな力を育てたいのかをはっきりともち、子供たちにも、ねらいを明確に伝えることが大切です。

ねらいに合わせたプログラム例

みんなで元気を出したい

元気を出して前向きに一日のスタートを切るには、朝の会で声を出すことがおすすめです。クラスのみんなで歌を歌ったり、音読をしたり、詩の群読をしたりするとよいでしょう。みんなで取り組むことで、大きな声を出すことへの恥ずかしさが軽減されて、声を出す気持ちよさを感じることができます。

続けていくことで、クラスみんなのお気に入りの歌や音読できる詩が増えていき、学級としての連帯感も味わえます。

また、クラスの歌係が登場するなど、係活動と連動することで、学級活動の経験も重ねることができます。

係活動を活性化させたい

係活動は継続的に取り組むことが大切ですが、だんだんと活動が停滞してしまうこともよく見られます。子供に任せきりにしすぎて、活動の機会がなくなってしまうこともあります。そこで、毎日の朝の会や帰りの会を活用することで、子供たちに活動の場を用意することができます。

朝の会や帰りの会に「係活動の発表」や「お知らせコーナー」を設けると、係活動の時間が確保できます。先ほどの歌係もそうですが、クイズ係やお笑い係はこの時間を利用して、みんなに活動を披露することができます。係からのお知らせをすることで、飾り係や本係はみんなに見てもらうこともできます。

係活動に触れる時間が毎日あることで、係活動に対する意欲が高まり、活性化していきます。

クイズ係

めあてを意識して生活できるようにしたい

朝の会で「今日のめあてコーナー」を設け、クラスで一日のめあてを話し合います。「音楽の時間に、〇〇先生がびっくりするくらいきれいな声で歌う」など、その日の時間割から具体的にめあてを決めてもよいでしょう。帰りの会では、一日をふり返り、めあてがどこまで達成されたかを確認します。

そのふり返りを基に、学級目標と照らし合わせたり、次のめあてを決めたりというように、毎日の積み重ねがあると、子供にもめあてを意識する姿勢が身に付いてきます。

話す力、聞く力を付けたい

子供がみんなの前で話す力を伸ばしたい場合、順番にミニスピーチをするとよいでしょう。みんなに聞こえるような声の大きさや姿勢などを

意識できるように指導します。話す内容は、はじめのうちは「私の好きなもの」「近ごろうれしかったこと」など、考えやすいものにします。

ミニスピーチの際は、話す側だけでなく、聞く側の指導も大切です。質問タイムを設けるなど、きちんと聞くようにする工夫をすることで、聞く力も伸ばすことができます。

自分や友達のよさを感じられるようにしたい

帰りの会で「よいところ見付け」を行うと、友達のよさに目が向くようになります。慣れないうちは教師が率先して、その日の子供のよい姿を提示するとよいでしょう。教師がモデルを示すことで、「こういうことがよいところなのだ」と子供たちに意識付けされます。

このとき、友達だけでなく自分のがんばったことを発表してもよいことにします。友達のよいところは客観的に気付きやすいですが、自分のよさを見付けるのは難しい場合があります。

友達からだけでなく、自分でもよさを見付けることで「自分にもこんなよいところがあるんだ」と、自信をもつことができるようになります。

クラスの思い出を残したい

模造紙に今月のカレンダーを書き、帰りの会で「今日のカレンダーコーナー」を設けます。その日一日で、カレンダーに残したい出来事を話し合って書くようにします。はじめは教師が、慣れてきたら日直が、書くようにするとよいでしょう。カレンダーは常に教室に掲示しておくと、後から「こんなこともあったね」とふり返ることができます。一年の最後には、クラスの思い出がたくさん書かれていることでしょう。

カレンダー

朝の会・帰りの会で生活リズムを

日々の授業があるなかで、朝の会や帰りの会にそれほど時間を取ることができない実情もあるかもしれません。それでも、毎日取り組むことで、子供たちに生活リズムが生まれます。あれこれとプログラムを盛り込みすぎず、限られた時間のなかでクラスの実態に合わせながら取り組んでいきましょう。曜日ごとにプログラムを変える工夫もできます。

二年生は、みんなで相談しながら決めていくことで、「自分たちの生活を楽しくできた」という実感をもつことができるでしょう。

イラスト/佐藤雅枝

『教育技術 小一小二』2020年10月号より

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