子どもたちが劇的に成長する3泊4日! 花メンの林間合宿で、子どもたちと一緒に学び、遊んできました【密着ルポ前編】
2025年9月、花まるエレメンタリースクールの子どもたちは、国立信州高遠青少年自然の家へ3泊4日の林間合宿に出かけました。「林間の後はガラッと変わる子も多い」とスタッフが語る合宿とは、どのような学びの時間なのでしょうか? 全123名が仲間と寝食をともにする3泊4日に密着しました!

花メンは、学校に行かない選択をした子のためのフリースクールです。過去記事はコチラ。
目次
「仲間外れ」ナシの集団を、どうつくる?
林間合宿初日、花メンのある東京・吉祥寺駅に集合した後、特急「あずさ」で目的地に向かいます。

宿舎の仲間は、自ら決める
信州の宿に到着しました。3つあるコテージのどれに、誰と泊まるかを、子どもたちが自分で決めます。グループ決めは、ハヤトカゲこと林隼人校長の以下の声かけから始まります。
「いい感じ」で3つの宿に分かれてください。はい、5分。どうしても困ったら先生を呼んでください。

子どもたちは2~3人の「小さなかたまり」になって動き始めます。低学年のグループからは、「ねぇ、一緒に組もうよ」「いいよ」という楽し気な会話が聞こえてきます。一方で、まとめ役の高学年は、下の子たちのグループづくりを手伝っています。
「ここと、ここは、くっつけば?」「そこはバランス悪いよね……」
子どもたちの小グループはそれぞれ、まるで隣と溶け合うように、互いに繋がっていきます。驚いたのは、その過程で誰一人として仲間外れになる子がいないことです。
ハヤトカゲは言います。
当初は、仲の良い友達同士だけで集まったり、誰かを外してしまったりと、この子たちもグループづくりはとても下手でした。
ハヤトカゲ そんな時、スタッフは、「もっと上手に分かれなさい」といった、どこかに正解があるような言い方はせず、ただ「もう一度やってみよう!」と促します。純粋に、「ただ、いい感じでグループをつくってみる」ことを、遊びの一つとして何度か繰り返すことも少なくありません。
「生きる力」を育むグループ分け
ハヤトカゲ 自由にグループをつくっていく過程で、子どもたち一人ひとりの「○○と一緒がいい」「あの子は苦手」といった素直な欲求が必ず出てきます。自分の欲求を知り、周囲との折り合いのつかなさに混乱する‥‥‥。そんな経験を重ねていく中で、「自分を抑える」「ここは相手を立てる」など、自分と周囲との折り合いのつけ方を学んでいきます。つまり‥‥‥。
グループ分けの過程そのものに、大きな教育的な価値があります。
ハヤトカゲ 今、全国の一般的な学校現場では、「グループ分け」は「活動をするための準備作業」といった位置づけで、さほど重要視されていません。「効率よく次へ進む」ために、教師主導でさっさとグループ分けをしてしまう場合もあります。
しかし、集団の中での自分の立場を知る力、自分の欲求と周囲との折り合いをつける力‥‥‥。これらは、わかりやすい言葉を使うならば、「生きる力」です。教科学習で習う「知識」は、塾でも身につけることができますが、「生きる力」をつけるためには、学びの場、とりわけ小学校時代の実体験が肝になると考えています。
何を「カッコいい」とするのか? ――価値づけをして文化をつくる
ハヤトカゲ 誤解を恐れずに言えば、「仲間外れになりやすい個性」を持つ子もいます。そういう子を誰がフォローするかは決まっているわけではありません。高学年の子がフォローすることもあれば、普段は目立たない子が自然にその子を気にかけることもあります。
ー どうしたら、フォローする子は育つのでしょうか?
ハヤトカゲ 日常的に、大人が「粋な背中」を見せることです。
「ちょっと浮いているな」とか「急に奇声を発するな」といった子に対しての僕らの行動を、子どもたちは見ています。子どもたちは大人たちの姿から、膨大なことを感じ取るのです。
だからこそ、「大人が、 どんな態度でいるのか?」は重要です。子どもたちは、奇声を上げている子を周囲の大人たちが温かく受け入れ、「よしよし、可愛いな」という態度や表情で接するのを見て、「笑ってんじゃん。え!? そっちの対応なの?」などと感じることを積み重ねながら、徐々に多様性を受け入れていくのだと思います。
不登校の子供を勇気づける大人の姿とは?
子どもは、大人の姿を見ながら「こういう声かけがカッコいいんだな」と学んでいきます。もちろん、「仲間外れをつくるのはカッコ良くない」というメッセージは、日常的に繰り返し伝えています。
また、輪から外れている子をフォローした子を、「カッコいい!」と惜しみなく称賛します。
つまり、 「仲間外れをつくらないことがカッコいい!」と常に価値づけしているんです。その価値観が子どもたちに浸透し、自然と仲間外れが生まれない文化ができあがっているのでしょう。
ごちゃまぜの家族だから、弱者は守られる
林間合宿の活動は、体育館で身体を動かすことから始まりました。身体を動かした後の、夕飯のおいしいこと! もちろん席は自由席です。大人と子どもはもちろん、学年の枠を越え、全員が自然に混ざり合っています。

スタッフは食事の時はもちろんのこと、子どもたちのコテージで一緒に寝泊まりし、お風呂も子どもたちと一緒に入っていました。もはや「家族旅行の大型版」といった”ノリ”です。
体育館で球技大会が始まる
夕食後の「夜コマ」も、イベントが目白押しです。あるスタッフは、「『アレもコレもやりたい!』とついついイベントを詰め込んじゃうんですよね」と言っていました。「仕事として行事をこなす」というよりも、「スタッフが最も林間合宿を楽しんでいる」といった雰囲気です。

ハヤトカゲ家の一員である乳幼児も参加しています。子どもたちが活動している体育館で、校長は娘や息子のオムツ交換をしていました。そんな姿も「大人が見せる粋な背中」ですね。他者に手が出るタイプの子も、乳幼児の前では「優しいお兄さん/お姉さん」になります。
アサガタさんの登場
「夜コマ」では、サプライズもありました。「今日は、みんなを応援するために特別ゲストがきています!」という司会のトークの後、素敵な音楽とともに登場したのは、クワガタならぬアサガタさん! 林間学校一日目、「夜コマ」の球技大会には、毎回面白い特別ゲストが登場して司会をするのが伝統となっていて、子どもたちから大歓声があがります。


いよいよ球技大会が始まります。試合のルールの説明は、アサガタさんから行われました。スタッフではなく、「ゲストのアサガタさん」が説明することで、ピリッとした緊張感が生まれます。「全力で楽しむ!」そんなスタッフの心意気(気迫⁉)が伝わってくる1コマです。
弱者を自然と守る雰囲気がある
球技大会は、アジャタ(玉入れ)、台風の目(下記写真)、キングフォックスなど、全種目がチーム戦です。

筆者は、子どもたちのように素早く動くことはできません。台風の目の時は、特性が強めの子とペアを組むようにと、リーダー(子ども)から指示を受けました。後ろには足の速い子が二人並んでいて、私たちペアが遅れをとっても次で巻き返すことができるような布陣が組まれています。こうした配慮を、子どもたちが自ら当然のように、さりげなくしていることに驚きました。
また、初参加でわからないことだらけの筆者が、スタッフに質問したものの声が届かなかった瞬間、その様子を見ていた周囲の子が「何がわからない?」とばかりに、バッと一斉にこちらを向いてくれました。イキのいい(やんちゃな)子に筆者が突っつかれた時にも、周囲の子たちが間にスッと入って守ってくれました。「困っている人はいないか? いたらサポートしよう」と、多くの子どもたちが常にアンテナを張っているのでしょう。
どれも、取材者として集団の外から見ているだけでは気づけなかったことです。一緒に活動し、弱者の一人となることで、この集団の包摂力を肌で感じました。