「特別支援教育支援員」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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学校はいろいろ困難な課題を抱えています。それをすこしでも和らげるためにさまざまな「学校支援員」が活躍しています。なかでも、発達障害を含む障害のある子どもたちの学校生活での介助や、学習活動を支援する「特別支援教育支援員」は多くの学校にとってなくてはならない存在になっています。

執筆/国士舘大学准教授・堀井雅道

みんなの教育用語

発達的な課題を抱える子どもを支援

障害のある子どもには、障害の種類や程度などに応じて、特別支援学校や特別支援学級に通う制度がありますが、大部分の授業を通常学級で受けながら一部の時間だけ専門指導員による授業を受ける通級指導の制度もあります。

通級指導は、比較的軽度の言語障害や自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)等の可能性のある子どもたちが利用しています。

文科省の資料(2021年2月)によれば、2019年度時点で通級指導を受けている公立小・中学校の児童生徒数は約13万4200人となっており、義務教育段階の全児童生徒の約1.4%にあたります。

今日の学校には、このような発達的な課題を抱える子どもたちも通っており、そのような子どもへの対応は多くの学校の共通課題になっています。

「特別支援教育支援員」の必要性

発達的な課題のある子どもがいる学級では、担当教員1人による対応では困難な場面も出てきます。たとえば、障害の可能性のある子どもが授業中に突然立ち上がり、教室の外へ出ていくような場面や、担当教員の指導についていけずに騒いだり、他の子どもたちとは異なる行動をする場面、またこれをきっかけに他の子どもたちも騒がしくなったりする場面などです。このような場合、担当教員1人では発達的な課題のある子どもと、他の子どもたちへの指導を両立させることはとても困難です。

学校によっては、手が空いている教員や管理職が支援に入るという対応も行われています。また、「コミュニティー・スクール」の学校支援地域本部事業を活用して、地域住民や保護者、大学生等のボランティアに協力してもらい、サポートしてもらうというような取り組みがあります。しかし、今日の教員の労力的・時間的余裕のなさや、ボランティアの安定的・継続的な確保の難しさを考えると限界があります。

そこで、発達障害を含む障害のある子どもの学習・生活上の支援等を担う職員として学校支援員の必要性が出てきました。文科省は2007年度から「特別支援教育支援員」という名称で、その配置を促すために地域への予算措置(2020年度分で6万5000人分)を行ってきました。これにより、各地の教育委員会には、学校支援員として「特別支援教育支援員」を学校に配置し、障害のある子どもへの支援を通じて教員へのサポートを始めているところが増えてきました。

「特別支援教育支援員」の役割や資格

特別支援教育支援員の名称は「学習支援員」「教育補助員」など、各地の教育委員会によってさまざまです。また、その役割(業務)や資格については、基本的には文科省の「『特別支援教育支援員』を活用するために」(2007年6月)に基づきつつ、教育委員会が決めています。

東京都世田谷区の例をみると、名称は「学校包括支援員」として、教育委員会が要綱を定めています。この中では「職務」として、子どもの安全管理に関することや教育・生活活動上必要な援助に関すること、校長が指示する事項が示され、実際の業務としては、授業時の学習支援、子どもの安全配慮(見守り等)、校外学習や水泳指導、宿泊行事の支援などを行っています。

また、資格については、教員や保育士・心理士・社会福祉士等の資格取得者もしくは取得見込みのある者や、学校・保育園に関わった経験のある者などとなっています。実際には、教員採用試験の受験を目指す人や、退職した元教員、またこれまで特別支援関係のボランティアを続けてきた人などが活動しています。

なお、このような学校支援員の多くは地方公務員法上の会計年度任用職員(臨時職員、非常勤職員)として採用され、週3~4日を目安として勤務しています。

「特別支援教育支援員」を生かすために

特別支援教育支援員を生かすためには、それぞれの学校には特に以下の3点が求められます。

  1. 支援対象となる主な子どもと特性(障害の種類や程度、行動や志向等)の把握
  2. 特別支援教育支援員に対して求めることの明確化
  3. 特別支援教育支援員との情報共有(相互の報告・連絡・相談)

つまり、学校(管理職や担当教員)が特別支援教育支援員に対して「どの子どもに対して、何をしてほしいか」を明確にして指示することが必要です。これが最低限なされていないと、特別支援教育支援員から見ても「何をしていいのかわからない」状態となり、せっかくのスタッフを十分に活用できないことになります。

また、特別支援教育支援員が子どもへの支援にあたり「困る」場面が出てくることも多々あります。そこで、担当教員との日常的なコミュニケーションは当然ながら、“チームとしての学校”の一員として職員会議や学年会、校内委員会などへ出席してもらい、支援対象となる子どもに関する情報のみならず、学校全体の指導や支援に関する方針などを共有することを通じて、協力関係を構築することが求められます。

「個別最適な学び」に向けて

2021年1月に中教審は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」を公表しました。この中で特別支援教育支援員については、定時制・通信制高校における「生徒一人一人の実態や学習ニーズに応じた教育活動」を実現するために、また就学前の障害のある子どもの相談・支援を充実するために充実(配置促進)させることが提言されています。

今後、特別支援教育支援員は、障害のある子どもの「個別最適な学び」を保障していくために、幼稚園から高校においてますます重要な役割を果たしていくことになるでしょう。

▼参考文献
文部科学省「『特別支援教育支援員』を活用するために」2007年6月
文部科学省「特別支援教育行政の現状及び令和3年度事業について」2021年2月
道城裕貴他「特別支援教育支援員の活用に関する全国実態調査」『LD研究』第22巻2号、2013年
村田敏彰・小野寺基史「特別支援教育支援員の校内活用体制に関する考察─支援員の困り感軽減・解消に向けた校内活用体制の再整備─」『LD研究』第28巻3号、2019年

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