小1算数「あわせていくつ」「ふえるといくつ」指導アイデア
国立教育政策研究所教育課程調査官の監修による、教科指導のアイディアと授業のヒントをまとめた指導計画例です。次時の授業にお役立てください。
執筆/福岡教育大学附属小倉小学校教諭・川原雅彦
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・笠井健一、福岡教育大学教授・清水紀宏
目次
単元名「あわせていくつ」
●本時のねらいと評価規準(本時の位置 1/6)
【本時のねらい】
2つの数量の合併の場面について、数量の関係に着目し、具体物を操作する活動を通して、加法の意味や式の表し方を理解する。
【評価規準】
2つの数量の合併の場面について、その意味を理解している。(知識・理解)

(上半分の絵を見せる)この絵を見てお話ができますか。
ひつじさんがいます。
左には3匹、右には2匹います。
お話は、まだ続きますよ。(下半分の絵も見せる)続けて、お話ができますか。
ひつじさんが、みんな小屋に入っています。
小屋に入ったひつじさんは、合わせて何匹になったか、数えてみましょう。(全員で確認する)友達同士で、ブロックを使ってこのお話をしましょう。
本時の学習のねらい
ぶろっくを うごかして おはなしを しよう。
【見通し】

友達にお話をするとき、ブロックをどのように使ったらよいですか。
今までの勉強の時と同じように、ひつじさんの上にブロックを置きます。
ブロックを、動かしたらいいと思います。
なるほどね。今までの勉強でしたように、ブロックを置いて、動かしたらいいんだね。
【自力解決の様子】
A:つまずいている子
3個と2個のブロックを置くが、その後、何をしてよいかわからない。
B:素朴に解いている子
3個と2個のブロックを置き、その総数を数えるなどして求めるが、ブロックは動かさない。
C:ねらい通りに解いている子
3個と2個のブロックを「□□□→←■■」のように、中央に合わせている。
【学び合いの計画】
同時に存在する2つの数量を合わせた大きさを求める場面の理解を目指します。そのために、ひつじをブロックに置き換え、ブロックを動かしながら、合併の様子を友達に伝え合うようにします。これまでの学習でもブロックを使ったことを想起しながら、「合わせる」という言葉とブロックの操作とを関連付けるようにします。
【ノート例】


【全体発表とそれぞれの考えの関連付け】
ブロックを、どのように動かしていましたか。
左にひつじさんが3匹いるので、ブロックを□□□と3個置きます。右にはひつじさんが2匹いるので、ブロックを■■と2個置きました。5匹になります。
小屋に入ったから、ブロックをこうやって(□□□→←■■)合わせました。
ブロックを動かして合わせると、お話がよく伝わりますね。何匹と何匹で合わせて何匹になりましたか。
3匹と2匹で、合わせて5匹です。
このように、合わせるときに「+」という記号を使います。そして、「3+2=5」と表します。これを「式」と言い、このような計算を「たしざん」と言います。
【学習のねらいに正対した学習のまとめ】
左右のブロックを中央にまとめる。



【子どもの感想】
ブロックを動かすと、お話がわかりやすくなると思います。
式を使うと、合わせてのお話が簡単にできます。
単元名「ふえるといくつ」
●本時のねらいと評価規準(本時の位置 2/6)
【本時のねらい】
数量の増加の場面について、数量の関係に着目し、具体物を操作する活動を通して、加法の意味や式の表し方を理解する。
【評価規準】
数量の増加の場面について、その意味を理解している。(知識・理解)

(上半分の絵を見せる)この絵を見て、お話ができますか。
小屋に、4匹のひつじさんがいます。
小屋の外には、2匹います。
(下半分の絵も見せる)絵は、どこが変わりましたか。
2匹のひつじさんが、小屋に入りました。
前の勉強の絵と、どこが違うのかな?
ひつじの数が違います。
今日は、最初から小屋に4匹いるから、違うと思います。(最後に、小屋にいるひつじの数を全員で確認する)
前の勉強と同じように、友達同士で、ブロックを動かしながらこのお話をしましょう。
本時の学習のねらい
ぶろっくを うごかして おはなしを しよう。
【見通し】
・ブロックを置く。
・ブロックを動かす。
どのように、ブロックを動かしたらいいですか。
「合わせて」の時と同じようにすれば、よいと思います。
でも、動かし方が違うかも。
なるほどね。動かし方がどのように違うのか、ブロックを動かしながら友達に伝えましょう。
【自力解決の様子】
A:つまずいている子
4個と2個のブロックを置くことはできるが、どう動かせばよいか迷っている。
B:素朴に解いている子
4個と2個のブロックを置くことはできるが、中央で合わせている(合併の考え)。
C:ねらい通りに解いている子
2個のブロックを「□□□□←■■」のように、動かしている。
【学び合いの計画】
すでにあるものの集まりに、新たな要素が追加したときの全体の数を求める場面の理解を目指します。そのために、既習の合併のたし算の場合のブロック操作と、増加のたし算の場面を比べる活動を設定し、2つの場面についての違いについて話し合うようにします。
【ノート例】


【全体発表とそれぞれの考えの関連付け】
ブロックを、どのように動かしましたか。
はじめに小屋に4匹いたので、ブロックを4個置きました。その後、小屋に2匹来たので、□□□□と■■をまとめて(合併の考え)6個なので、6匹です。
それだと、前の時間と同じだと思います。
4匹いて、その後2匹入ってきたから、4個のブロックに2個のブロックをくっつけるといいと思います。
ブロックの動かし方が、違ってもいいのかな?
「あとからふえた」ということになるので、2個のブロックだけを動かしたらいいと思います。
(以下、この場合も「4+2=6」と表すことを知らせる)
【学習のねらいに正対した学習のまとめ】
右のブロックを左に動かす



【子どもの感想】
片方のブロックだけを動かして、合わせました。
増えるときも、たし算でできることがわかりました。
ワンポイントアドバイス
福岡教育大学教授・清水紀宏
第一学年では、合併や増加といった加法の意味について学習します。合併と増加の違いは演算ではなく場面の違いです。合併は最初から2つの集合があるのに対して、増加では最初は集合が1つだけあり、その後に別の集合を添加します。
授業にあたっては、まず、対象となる集合を明確にしておく必要があります。1時間目の例では、上半分の絵において「3匹の羊の集合」と「2匹の羊の集合」を区別する必要があります。この区別なしに、すべての羊の数を5匹と数えるのでは、それまでの数の学習と変わりありません。
この授業では左側と右側でその区別をつけようとしています。合わせて5匹というのは、数えてもわかりますし、それまでに「数の合成」(3と2で5)を学習していますので、数えなくても、5匹とわかる子供もいるでしょう。
この授業では5という結果を求めるというよりも、「3と2」と「5」の間の数量の関係に着目し、具体物を用いて場面を友達に説明するという数学的活動を通して、合併という場面や加法の意味を理解させることが主眼です。
また、合併と増加は場面としては違いがあるとはいえ、数学的には「2つの集合を合わせた集合の要素の数を求める」という意味で(加法と言う)同じ演算です。だからこそ、どちらも同じ記号で表しますし、同じ結果が得られるわけです。
ブロックの操作の「相違点」を強調することと、合わせ方は別として2つの集合を1つの集合にするという「共通点」を見いだすことの両立は最初は難しいので、加法の学習を通して徐々になされていけばよいと思います。
まずは、ここでの提案のように、合併と増加という場面があり、どちらも「○+△=□」で表すということを確実に理解させる必要があります。
イラスト/佐藤雅枝・横井智美
『小一教育技術』2018年6月号