小4国語「アップとルーズで伝える」指導アイデア
教材名:「アップとルーズで伝える」(光村図書 四年上)
指導事項:〔知識及び技能〕(1)カ(2)ア 〔思考力、判断力、表現力等〕C(1)ア、オ
言語活動:ア
執筆/香川大学教育学部附属坂出小学校教諭・尼子智悠
編集委員/文部科学省教科調査官・菊池英慈、香川県公立小学校校長・川井文代
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
本単元では、段落相互の関係に着目しながら、筆者の考えは何か、また、その考えを支える理由やその考えを具体的に説明するために挙げられた事柄や内容について、叙述を基に正確に捉える力を付けます。
また、そのなかで、段落の役割を理解したり、考えとそれを支える理由や事例の関係について理解したりできるようにします。
②言語活動とその特徴
本単元では、教材文を読み、筆者の考えを捉え、それを支える理由や事例の述べ方を生かして、友達に筆者の考えをふまえた自分の考えを伝える言語活動を位置付けます。
子供たちは教材文を段落の関係に着目しながら読むことで、読み手が筆者の考えを捉えやすいことを実感したり、筆者が理由や事例を効果的に構成していることに気付いたりしていきます。
筆者の考えや段落構成の工夫を適切に捉えることで、自分の考えをつくることにつながったり、理由や事例を効果的に位置付けて考えを伝えたりすることができるでしょう。
単元の展開(8時間扱い)
主な学習活動
第一次(1~3時)
①これまでの学習をふり返り、例示のしかたとその効果についてふり返る。
②③『思いやりのデザイン』や『アップとルーズで伝える』を読み、学習の計画を立てる。
→アイデア1 主体的な学び
第二次(4~6時)
④⑤段落構成に着目しながら、筆者の考えやそれを支える例の挙げ方の工夫について話し合う。
→アイデア2 対話的な学び
⑥教材文を使って学んだことをまとめる。
第三次(7・8時)
⑦ほかの説明文ではどのような工夫がされているか調べる。
⑧友達に、筆者の考えや表現の工夫をふまえた自分の考えをまとめて発表する。
→アイデア3 深い学び
アイデア1 「分かりやすい説明をしたい」という意欲をもたせる
まず、次のように、説明をするときの工夫はどのようなことを学習してきたか、三年生の教材で学習したことを想起させます。
段落構成の工夫
・問い―答え―まとめ 「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」「ありの行列」
・話題提示―例示―自分の考え 「すがたをかえる大豆」
例示の数の工夫
・三例 「言葉で遊ぼう」
・五例 「かたちをかえる大豆」
・六例 「こまを楽しむ」
例示の順序
・一般的なものから特殊なものへ 「こまを楽しむ」
・読み手がイメージしやすいものからしにくいものへ 「言葉で遊ぼう」「すがたをかえる大豆」
既習の「説明の工夫」を意識しながら、『思いやりのデザイン』を読む
『思いやりのデザイン』の述べ方は、これまでの説明文とは違うことに気付かせます。
- 筆者が大切にしていること(筆者の考え)が「はじめ」と「終わり」に書かれていること
- 「中」では二つの対比された例示を並べて構成されていること など
気付きを基に主体的な学びへ
子供が気付いた説明の工夫の違いから、分かりやすく伝えるためには、もっとさまざまな説明のしかたを身に付けることが大切だという意識をもたせます。
さらに「筆者の考え」に着目させ、その部分を読んだだけで、筆者が伝えたいことが伝わってきたかを問いかけ、「中」の例示の必要性や重要性にも気付かせることで、どのような内容や例の挙げ方がよいのか考えようという主体的な学びにつなげます。
そして、「自分が考えたことを発表しよう」という単元を通した学習課題を設定していきます。
アイデア2 例示の意図について話し合う
『思いやりのデザイン』で学んだ対比的な例の効果を『アップとルーズで伝える』で確かめる学習を行います。
気付いたことを確認しながら交流することで、例の挙げ方や順序について深く考えることができます。その際には、例の順序を入れ替えてみるなどの活動をすることもよいでしょう。
▼話合いのポイント
①「アップ」や「ルーズ」が話題提示や「中」の部分でどのように取り上げられているか。(内容面)
②その順序についてどう考えるか。(③「はじめ」に考えが述べられていることについてどう考えるか)
広い場所でするサッカーが例だと、「アップ」「ルーズ」が分かりやすいね。
「話題提示」ではルーズが先だね。会場全体のことを伝えたほうがサッカーを知らない人にも分かりやすいね。
「中」では「アップ」が先に説明されているけど、どうしてかな。
「アップ」の説明がすぐ前にあるから続けて説明したほうが分かりやすい、と思ったんじゃないかな。
段落の順番を入れ替えて確認してみよう。
アイデア3 自分の考えを発表する
第二次で学んだことを内容面・説明のしかたの面でまとめて、自分の考えを伝えます。
▼学習のまとめ
内容
・「アップ」のよさ→細かいところが伝わる。
・「ルーズ」のよさ→全体の雰囲気や様子が伝わる。
■自分が伝えたいことに合わせて「アップ」「ルーズ」のよさを生かして、選択して使用することが大事。
説明のしかた
■自分の考えを「はじめ」と「終わり」に述べると、「中」の例示を読みながら、より自分の考えが分かってもらいやすい。
■例示するものについて、知らない読み手でも分かりやすいものから述べる。
■対比する例を示すときには、それぞれの長所だけでなく短所も合わせて示す。
■対比する例を複数回示すときには、次の段落とのつながりも考える(A→B、B→A)。
『アップとルーズで伝える』では、はじめに筆者の考えがあることで、例をその考えに当てはめながら読むことができました。
自分の考えを例でくわしく示すときには、はじめに考えを述べることも大事だと思いました。
筆者の木村さんや中谷さんは、それぞれの短所がもう一方の長所で補えることを伝えていました。使い分けるということを言いたい場合には、長所と短所の両方を述べることが大切だと思いました。自分も説明するときには、長所ばかりではなく…。
イラスト/横井智美
『教育技術 小三小四』2020年4/5月号より