小6道徳授業レポート「みんな、おかしいよ!」ホワイトボードで考えを交流させ相互理解を学ぶ
地域や家庭との連携を大切に子供の豊かな心を育む教育を推進し、評価方法の工夫や、学習内容の改善、カリキュラムマネジメントなどに重点を置いた授業づくりで道徳研究を進めている鳥取県の境港市立上道小学校の授業風景をご紹介します。
目次
教材
教材名:「みんな、おかしいよ!」(出典『きみがいちばんひかるとき』光村図書出版)
内容項目:相互理解、寛容
導入
本時のねらい
真紀、絵里子のやり取りを聞いている和花の気持ちを考えることを通して、相手と理解し合うために大切なことに気付き、広い心をもって自分と異なる意見や立場を尊重しようとする態度を育てる。
発問1
友達とうまく理解し合えなかった経験はありますか?
サッカーのファウルがあったとき、相手の言い分を聞けずに怒ってしまった。
パソコンで資料を作るときに、相手のことを理解できずに喧嘩になってしまった。
授業中や休み時間なども男女分け隔てなく声をかけ合うクラスですが、友達関係などで悩んだことも少なからずあるようです。展開での話合いに時間を使いたかったので、短時間での導入を心がけました。
マスク着用でも「しっかり伝える」を意識
事前にアンケートをとって実態把握をしておくことで導入はコンパクトにし、多面的・多角的に深く考える時間を長めに取りました。現在はマスク着用で表情がわかりにくいため、聞き取れなかったり意味がわかりにくかったりするときは、もう一度子供に聞いて、しっかりと伝えることを意識させています。
展開
それぞれの立場と気持ちを考えて「理解し合うために、何が必要か」を考えます。
発問2
どうして和花は「本当のことを言ったら、友達が減る」と思っているのでしょう?
自分との関わりで考えてほしかったので、「本当のことを言ったら嫌われるかも」と思ったことはあるかと子供たちに問いかけました。
絵里子と和花それぞれの気持ちを考えさせることで、「真紀の言い方はきつい」と思いながらも、真紀を目の前にすると本当のことを言えない和花の気持ちの弱さや、自分本位な部分を感じ取れるようにしました。
発問3
「みんな、どうかしているよ」という言葉には、どんな思いが込められているでしょう?
2分間ペアで話し合ってから、それぞれの考えを発表しました。
真紀が怒らなかったのが不思議。
裏切られた。
和花は今までずっと真紀に合わせてきたのに、意味がなかった。
絵里子に「すごいな」と思っている。
自分に対してくやしいと感じる。
補助発問
絵里子は「ありがとう」と言われて、どんな気持ちだったでしょう?
真紀は、自分のよくないところを指摘されていたけど、なぜ「ありがとう」と言ったのだろう?
絵里子、真紀の気持ちを尋ね、それぞれの立場を考えながら中心発問へとつなげます。
中心発問
相手と理解し合うためには、どんなことに気を付ければいいでしょう?
今回は、4人ずつのグループでホワイトボードに考えをまとめました。意見をたくさん出せるよう、短い文章や言葉で書くように促しました。
書き終わったあとは、他のグループのボードを見て回ります。「自分から相手に伝えること」「相手から自分に伝えること」「双方向のこと」それぞれの立場に、気遣いや理解が必要なことを伝えます。
「理解し合う」ということは、どちらかが理解すればよいのではなく、自分も相手を理解しながら、相手も自分を理解することが大切であり、その難しさに気付いていきます。
子供たちが考えたこと
どのグループもたくさん意見を出して話し合い、まとめることができました!
終末
各グループの意見から自分の考えをまとめる。
ホワイトボードに書いたことを、自分との関わりで考えさせるために「相手に気持ちを伝えるのを難しいと感じたことはある?」と問い、体験を想起させながら、今日の授業で学んだことをノートに書いてまとめさせました。
授業ノートより
これまで私は、和花と同じように、友達に本当のことを言い合うのが苦手でした。けれど、実際に行動するのは、難しくても少しずつでも正直に理解し合っていけたらいいなと思います。
私たちは相手を尊重したり、相手の気持ちを考えながら、自分の気持ちをはっきり言うことが大切だと考えました。相手のことを考えるのと考えないのでは、全然違うと思いました。
文部科学省教科調査官 浅見哲也先生 ワンポイントアドバイス
それぞれの考えを共有することで、より確かなものに
この教材に描かれている友人同士の複雑な感情の絡み合いは、これまでに経験があったとしても、なかなか冷静に考えることはないと思われます。そこで川上先生は、導入では友達と理解し合えなかった経験を子供たちに想起させ、本授業で考えることを明確にしました。この教材に登場する3人の関係を大きな画面に図式化して常に示していたことで、子供たちは登場人物それぞれの考え方を整理しながら、その問題点に自分の経験を重ねて考えることができました。また、グループで話し合い、考えをホワイトボードに書き出して終わらずに、さらにそれらを全体に共有して気付いたことをもとに話し合っていけたことで、自分の考えをより確かなものにすることができました。
取材・文/ルル 撮影/北村瑞斗 構成/浅原孝子
『教育技術 小五小六』 2021年1月号より