小三・小四の算数教科書「正しい読み方・使い方」

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学習指導要領のキーワード「主体的・対話的で深い学び」を完璧に理解するのは難しいもの。ただ、教科書をよく読めば、そのポイントがイラストなどで分かりやすく提示されています。算数科(東京書籍)を例に、「読み方・使い方」を解説します。

お話を伺ったのは…
東京書籍数学編集部部長・ 提橋正一さん、数学編集部編集長・清水成章さん

小三・小四の算数「教科書の正しい読み方・使い方」

教科書会社各社の教科書は、子供の指導に資するためにさまざまな工夫がなされています。ここで取り上げる以外の教科書を使われている学級でも、ここでの工夫ポイントを参考にして、ぜひお手持ちの教科書をじっくりとお読みください。

小三 算数教科書の読み方・使い方

一見バラバラなものをくくって捉えるような汎用的な力を育むことを意図

東京書籍・小学校算数の清水成章編集長は、教科書を使ううえで大事なポイントについて、まず「見方・考え方」だと説明します。

「学習指導要領のめざすものは教科目標に収斂していると思います。算数では『数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して、数学的に考える能力を…育成する…』ということです。

しかし『数学的な見方・考え方』が何かということは、数学が専門でない小学校の先生方にはとてもつかみにくいものだと思います。

そこで、これまで通り問題解決型の学習を通して内容を身に付け、思考力を育てることは大事にしつつ、学習のまとめでは、その結論を得る過程で子供たちが働かせてきた『見方・考え方』も位置付けているのです(下図参照)。

学習のまとめ

例えば、三年生の分数のたし算を初めて学習するとき、これまでは『分母はそのままにして、分子同士をたします』という計算方法をゴールにしてきました。

その方法自体も大切なのですが、それを得る過程で働いた『見方・考え方』を価値付けるため、『 [MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]をもとにして、3+2の計算で考える』とまとめています。さらに虫めがねマークを使って説明を加え、小数や整数のたし算の考え方とも同じことを確認しているのです。

ちなみに算数の『思考力・判断力・表現力等』は、学習指導要領において『〜に着目し、〜を考えるとともに…』という形で整理されていますが、その形に則って言えば、『数の構成に着目し、計算の仕方を考える』ということです。

実はこのような学びをするために、一年生の整数のたし算の導入を3+2、三年生の小数のたし算の導入を0.3+0.2 としています。このように同じ数値を使うことで、一見違う計算を『同じもの』として捉えやすくしているのです。

それは算数に限らず、社会の中で一見バラバラに見えるものを、ある視点でくくって捉えるような汎用的な力を育むことを意図しています。

加えて、単元の最後には『つないでいこう算数の目』というページを設定しています(下図参照)。これは、その単元で特に働かせて育てたい『見方・考え方』をふり返り、自覚するためのものです。

『つないでいこう算数の目』

先生方が授業で毎時、『見方・考え方』を意識して指導することは大変なので、ここで象徴的にまとめてふり返ることができるようにしています。このページは、授業の中で子供と一緒にふり返るということと同時に、先生ご自身が単元計画をされるとき、ゴール(子供たちに身に付けさせたい力)から考えていくときに使っていただけるところなのです」

ノートの活用法の説明ページも掲載

さらに先生方が悩むことの多い「深い学び」について、清水編集長は次のように説明します。

「もう一つ『数学的活動を通して』という点では、『今日の深い学び』を活用していただきたいと思います(下図参照)。

『今日の深い学び』

ここでは、通常のページと比較して算数・数学の問題発見・解決の過程をいっそう重視し、統合的・発展的な学習を可視化しています。

そこで得た『見方・考え方』を使って、さらに集団で練り上げ、ふり返ってまとめるという統合的、発展的な学習をしています。

また、その学習過程や学習後において、自分がそれまでに書いた内容を活用し、どんな見方・考え方を働かせたかを意識しながら学習を進めたりふり返ったりすることを提案する、『マイノートを学習に生かそう』という、ノートの活用法の説明ページも設けています(下図参照)。

『マイノートを学習に生かそう』

これらを活用していただくことで、『答えが出せた』『おもしろかった』だけにとどまならない、より深い学びの実現に役立てていただければと思います」

小三「教科書の読み方・使い方」ポイント

  • 「つないでいこう算数の目」を読んで単元計画
  • 授業で「見方・考え方」を押さえよう
  • 「今日の深い学び」を活用して深い学びを実現

小四 算数教科書の読み方・使い方

未知の問題に対し、「見方・考え方」を活用しながら問題解決を図る力を育成

四年生の教科書を使ううえで大事なポイントについて、清水成章編集長は次のように説明します。

「学習指導要領の目標、『数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して、数学的に考える能力を…育成する…』を実現するうえで重要なのが、『数学的な見方・考え方』です。

そのため弊社の教科書では、これまで通り問題解決型の学習をベースに、学習のまとめではその結論を得る過程で子供たちが働かせてきた、『見方・考え方』も位置付けています。

できれば、それを日々の授業の中でも取り上げていただきたいと思います。このことは三年生と同様です。

例えば四年生の図形の面積の学習は図形領域に位置付けられています。

しかしこれまでの学習指導要領では、測定の学習の中に位置付けられており、それを引き継ぐ部分もあります。そこで、単位を決めてその何個分で量の大きさを可視化するという『見方・考え方』を、学習の中で整理しているのです(下図参照)。

『見方・考え方』

またこうした『見方・考え方』について、毎時の授業の中でていねいに取り上げていただきながら、単元末で改めてふり返り、自覚するためのページとして、単元末に『つないでいこう算数の目』というページを設定しています(下図参照)。

『つないでいこう算数の目』

図形の面積の場合であれば、単位を決めてその何個分で量の大きさを数値化するという『見方・考え方』を、既習の量も取り上げながら統合的にふり返ります。

また、L字型の特徴に着目し、四年生らしく『数学的に』表現した式を見て解釈することも取り上げています。

基本的な建付けは三年生と同様ですが、四年生では、学習指導要領の数学的活動のレベルアップにならって、内容は少し数学的になっています」

「今日の深い学び」はより数学的に

また「深い学び」という点においては、「今日の深い学び」を活用してほしい、と清水編集長は言います。

「『今日の深い学び』は、授業のページとノートのページで構成しています(下図参照)。

『今日の深い学び』
『今日の深い学び』

授業のページでは問題解決の過程で『数学的に』思考し表現するプロセスを可視化しており、『見方・考え方』を働かせ、友達と学習を練り上げることを可視化しています。

そして学びをふり返ることを通して、見方・考え方を働かせ、既習に帰着して考えたことを価値付けています。

また、ノートのページも三年生と同様に設定しています」

小四「教科書の読み方・使い方」ポイント

  • 「つないでいこう算数の目」を読んで単元計画
  • 授業で「見方・考え方」を押さえよう
  • 「今日の深い学び」を活用して数学的な深い学びの一歩を

『見方・考え方』を活用しながら問題解決を図る授業づくり

最後に、東京書籍数学編集部の提橋正一部長はこう話します。

「これまでの算数・数学では目の前の問題が解ければよい、という傾向がありました。しかし、今回の学習指導要領では、小学校の算数に限らず『見方・考え方』が重視されています。

それは今回のコロナ禍もそうですが、今後発生するであろう未知の問題に対し、既存の問題解決で活用した知識・技能や『見方・考え方』を活用しながら問題解決を図る力を育成する、ということがあると思います。

算数は積み上げ型の教科で、1度つまずくと難しい部分もありますが、積み上げた分、これまで学んだ知識・技能や見方・考え方を使って、新たな問題解決を図れる可能性も広がるので、そのような力を育むことが大切だと思います」

『教育技術 小三小四』2020年12月号より

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