つまずきがちな「小数の割り算」が断然面白くなる授業のコツ3つ
授業中、子供たちの表情に「?」マークが浮かんでいるのに、軌道修正できずにそのまま続行…。そんな苦い経験もこれで解消! つまずきがちな「小数の割り算」が断然面白くなる、スペシャリストによる授業のコツをマスターしましょう。
執筆/富山県公立小学校教諭・前田正秀
目次
つまずき1「2.5等分って、どういうこと?」
ポイントは、意味の理解
計算の指導において、「計算の方法(どうやって答えを出すか)」については、丁寧に指導されることが多いのですが、「計算の意味(なぜ、その式になるのか)」については、指導がおろそかになりがちです。
しかし、この単元は、意味の理解にこそ、大きなつまずきが潜んでいます。
これまでの整数のわり算では、例えば
「2mで300円のリボン、1mの値段」の300÷2なら、300円の2等分と考えることができました。しかし、「2.5mで300円のリボン、1mの値段」の300÷2.5は、2.5等分 という説明では意味が通じません。
そこで、わり算の意味を「300を2.5と見たときの1当たりの大きさを求める計算」という意味に拡張する必要が出てきます。単位量を求める計算という意味を理解するのが、子供にとっては難しいのです。
まずは感覚で理解
わり算の意味は、丁寧に説明し過ぎると、かえって理解しづらくなります。最初のうちは、ハードルを低くし、感覚的に理解させたほうがよいと思います。
例えば「リボンを □m買いました。代金は300円でした。1mの値段は何円ですか」という問題を提示し、「□の中がどんな数なら簡単に解けますか」と尋ねます。子供からは「3」「2」といった答えが返ってくるでしょう。
3mなら300÷3で100円
2mなら300÷2で150円
言葉の式で表せば、「代金÷買った長さ」となります。
ここで、「ちょっと意地悪をするよ」と言って、教師が□の中に2.5を入れます。こうして、整数の場合を例にすることで、子供が感覚的に300÷2.5という式を導き出すことができます。
図を使って確実に理解
もちろん、ここでは、式を立てさえすればよいわけではありません。大切なのは、式を立てた後で、わり算には「1当たりを求める計算」という意味もあることをしっかり確認することです。
今回の300÷2.5というわり算は、300を2.5と見た時の1当たりを求める計算になっています。割る数が1より大きいうちは、感覚的に式を立てることもできますが、ここでわり算の意味を理解しておかないと、後々苦労します。
教科書では数直線図で説明されていることが多いですが、テープ図や関係図を併用するのもよいでしょう。さらに確実な定着を図ることができます。それらの図を使って、子供に300÷2.5の式になる理由を説明させると効果的です。
つまずき2「割ったのに大きくなるの?」
ポイントは、「1当たり」のイメージ
わり算の意味理解において、最大のつまずき。それは、「120÷0.8」といったように割る数が1より小さい計算です。わり算は「等分する計算」と思い込んでいる子にとっては、0.8で割るというイメージがもてません。ここで、わり算は「1当たりの大きさを求める計算」という理解が生きてくるのです。
また、答えの大きさもつまずきの原因になります。子供にとって、これまでは、割れば必ず答えが小さくなりました。割ったのに答えが大きくなるというのは、理解し難いものです。ここでも「120を0.8と見たときの1当たりを求める計算」という理解があれば、答えが120より大きくなることをイメージしやすくなります。
割る数と答えの関係に着目
授業では、答えの大きさに着目させたいものです。例えば、導入で用いたリボンを提示し、「1mでは120円でしたね」と確認します。その上で、別のリボンを提示し、「このリボンはね…」と言いながら、「□mで120円」と板書します。
子供は、「前のリボンより安いよ」「そうとは限らないよ。だって…」と、1m当たりの値段の大きさに着目していくことでしょう。
前述した導入の提示と同様に、整数の場合を例に出して、1m当たりを求める式を立てます。□が3mなら120÷3、2mなら120÷2ですから、0.8mなら120÷0.8という式になります。
子供なりの言葉で説明
式が立ったら、答えを求める前に、まず120円より大きくなるか小さくなるか、見当をつけさせるとよいでしょう。そして、そう思った理由を語らせます。
▼子供たちの考え
3で割ったら40、2で割ったら60、1で割ったら120。答えがだんだん大きくなっているから、0.8で割ったら、120より大きくなる。
0.8mで120円。1mはそれより長いから120より大きくなる。
子供なりの言葉で説明し合うことで、周りの子供たちもイメージしやすくなります。
どんなに丁寧に説明しても、やっぱり意味が分からないという子もいます。1度の授業で全てを理解させようと気負いすぎず、継続的にくり返し指導していく根気と覚悟が必要です。
つまずき3「また、うっかりミスしちゃった」
イラスト/宇和島太郎
『小五教育技術』2018年6月号より