小5外国語:聞き取りが上達するポイントを教科書編集委員が解説します
長めの英語のリスニングで気を付けるべきことは? 発表が苦手な子への支援はどうすれば? 教科書だけではわからないかもしれない指導のポイントを、小学校外国語科検定教科書の編集委員でもある神奈川県公立小学校の長沼久美子先生に教えていただきました。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子
目次
Q1 長めの音声を聞くStory。英語を聞き取れない子供に対して、日本語で内容を教えてよいですか。
(光村図書『Here we go!5』P.40・41)
A. 和訳はせずに、内容を捉えられるような支援をしてみてください。
ニックとニックの姉が時間割について話をしているという設定。小学生の姉弟が仲良く会話をしている場面です。姉から弟、次に、弟から姉…、と順番に話をしています。
例えば、「質問 → 答えや反応 → それに対する反応・評価」というような形で、会話が交わされます。このようなパターンが繰り返し出てきているのです。
これらの会話の流れを続けて聞くことで、
こういう時の会話ってこうやってするんだ!
という気付きにつながっていきます。
会話の途中で音声を止めるなどして和訳をしていくと、一連の会話を捉えにくくなります。いちいち訳すことはやめましょう。
どうしても聞き取れなかったり、内容が把握できないという場合には、1セット分の会話、例えば「質問 → 答えや反応 → それに対する反応・評価」までを聞いて、いったん音声を停止します。そして、
どんな話をしていた?
誰から誰に質問していた?
などと聞いてあげるなどして、会話の内容を確認して進めていきましょう。
会話のパターンに気付き、流れを知ろうと耳を傾けることができれば、聞き取りは少しずつ上達していきます。一文ずつ和訳をしていくような指導は、もうやめましょう!
Q2 「夢に近づく時間割」を作ってみたものの、紹介するのが苦手な子がいます。どんな支援がありますか。
(東京書籍『New Horizon Elementary5』P.30・31)
A. 発表方法を工夫することで、不安を取り除くことができます。
ここは、好きな教科と将来の夢をコラボする単元です。好きな教科を紹介するだけなのであれば抵抗なく口にできても、将来の夢がセットとなることで、
まだ決まってないし
あんまり言いたくないな
恥ずかしいな…
と感じる子供がいます。
そんな表情に気づいたときは、発表形態を工夫してみてください。例えば、少人数グループになって発表します。少人数のグループだったら、小さな声で話しても、相手に伝えることができます。プレッシャーが減って、安心できるのではないでしょうか。
また、プレ発表会と本発表会のように、発表の場を2回設定するのも大事な支援です。「2回もやる必要ある?」と思うかもしれませんが、発表は1回目よりも2回目のほうが、ほとんどの場合は上手にできるようになるので、成功体験になります。また、聞き手にとっては、聞く機会が増え、「聞く学習」が充実します。
こういった工夫をすることで、発表が苦手な子供も、少しでも表現する楽しさに出会ってほしいと思います。
Q3 世界の標識についてクイズを出し合うアクティビティを盛り上げるポイントは何でしょうか?
(三省堂『CROWN.Jr5』P.29)
A. 子供が知っている言葉を使って、自然に子供同士やり取りできる状況を大切にしましょう。 簡単な英語のやり取りで、十分にねらいに沿った活動ができます。
道路標識にはこんなのがあるんだ。日本と違うんだなぁ
まず、写真を見て、音声を聞きます。その後、これらを題材に、子供同士がクイズを出し合います。
多くの子供がパッと理解できて、クイズの問題にも答えにも使える言葉は?
と考えると、標識で考えるならば、色や形などではないでしょうか。
ここでは、子供が知っている言葉を自然に使うことができる状況を大切にすることで、アクティビティが盛り上がります。
4年生までの既習状況によって、もっといろいろな言葉を使える場合もあるでしょう。それらを取り入れることで、さらに活動が充実していきます。
この子はこんな文を使いこなすんだ。
そんな(英語の)言葉を知っているんだ!
と、驚くような自然なアウトプットを目にしたことはありませんか。言葉を自由に選んで使っていいと気づけば、子供たちは、思いのほかたくさんの言葉をアウトプットし始めます。
クイズの型を覚えて、丸暗記。そんなやり方ではなく、クイズを出すときの選択肢の幅を多く残して、子供が自由につくりあげるクイズになるよう、意識してみてください。アウトプットすることで習得が進み、充実した学習になっていきます。
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長沼久美子
神奈川県公立小学校教諭。小学校英語教科書CROWN Jr. 編集委員。
(イラスト/本山浩子)
イラスト/横井智美