1年生の補欠授業を当日に依頼されました!【「授業準備が間に合わない!」ピンチから学んだ授業づくり/先輩教師の体験談#2】

体調不良や様々な校務・雑務などにより「授業準備の時間を確保できない……」という状況に直面したことのある先生も多いはず。本連載は、そんなときにベテランの先生方はどのように対処してきたのか、成功例そして失敗例を赤裸々に語っていただく体験談集です。今回は神奈川県横浜市立大豆戸小学校主幹教諭・松永裕司先生の体験談を前編・後編の2回にわたって紹介します。
目次
体験談① 当日の朝、補欠で他学年の授業をすることになり大あわて!
急遽「1年生のクラスの補欠(補強)に入ってほしい」と言われ大急ぎで準備開始
当時1年生の担任がお休みで自習が続いているクラスがあり、急遽担任に代わり「補欠(補強)」に入り授業を行ってほしいと依頼されたことがありました。当日の朝8時頃のことです。心境的にはシンプルに焦りました……。何度か自習の監督に入ることはありましたが、授業を行うのはほぼ初めてのクラスだったからです。とはいえ、私以外にその時間空いている教師がいなかったのでやるしかありません。とは思いつつ、内心は「どうしよう…」とあわてていました。
担当するのは、算数「かさくらべ」の授業。
急いで職員室で指導書を開き、本時目標や評価規準、既習事項、板書計画をチェック。そして授業の準備に必要なものを確認しました。 その中には「どちらがどれだけ多いかを比べる活動」が設定されていました。

口頭のみで説明するか、具体物を使い体験させて学ぶか悩んだ
問題はどのようにその活動を行うのかです。3つのやり方が思い浮かびました。
① 教科書に描いてある挿絵を見せながら、口頭のみで教える。
② 教科書会社が提供している二次元コードを用いたデジタル・コンテンツを利用し、タブレット上で操作しながら活動を行う。
③ 実際にペットボトルや同じ大きさのコップを用意し、教科書と同じように具体物を使って比べる活動をする。
学年の先生に聞いてみたところ、すでに同じ単元の授業を行ったクラスがあり、具体物はあるとのことだったので、③を選択。2本のペットボトルに入れた水を、同じ大きさのコップに移し、その何杯分かでどちらが多いかを比べる活動をすることにしました。そしてグループで活動できるように各班に一つずつ実験キットを用意しました。1年生なので、口頭で説明するよりも、実体験を通して学んだほうが理解も深まると考えたからです。また、他のクラスでは実習を行ったのに、そのクラスだけ教科書だけで進めてしまうのはかわいそうだなという思いもありました。
「あわてない」と言い聞かせつつ、全員で楽しく活動することを意識した
意識したのは、「全員が参加できるようにすること」、そして「自分自身が落ち着くこと」です。教室に入った時点でゼーハーと息が切れている状態だったので、自分自身に「あわてないように」と言い聞かせて授業を行いました。
まず、指導書通りに活動の手順を板書しました。これは子供たちのためでもあり、自分自身が落ち着くためでもありました。
そして子供たちには自分の机の上に教科書類は出さなくてもよいことを伝え、ペットボトルを2つ用意し、課題を提示しました。
事前に「長さくらべ」は既習していたので、直接比較、間接比較、任意比較の学習をふり返り、計算ブロックのような同じもので長さを比べるとよいことを確認しました。
準備していたコップを見せたところ、子供たちから「そのコップの何杯分かで比べればよいのでは?」という意見が出たので、その場で班に分かれて活動を行いました。
子供たちは実際に水をコップに移し「あ、こっちのほうが多いよ」「やっぱりこっちのほうが多いってわかったね」などと言いながら楽しそうに活動していました。そして、無事に任意単位(コップ)でかさを比べ、実感をもってきちんと本時目標を達成できました。
私はあくまで補欠だったので、担任が後日に子供たちが何を学んだかわかるように絶対に活動の後にふり返りを行おうと考えていました。そこで子供たちの活動準備中にタブレット端末でふり返りシートを作成、活動終了後に配付し、1行程度でわかったことを手書き入力で書くように伝え提出させました。ふり返りシートには、「自分たちでコップを使って水の量を比べてみたら、こっちのほうが多いってわかったよ」などと書いてくれた子も多く、実体験を通じて子供たちが理解できたことがわかりうれしかったですね。恐らく教科書だけで教えるだけでは、本時の内容が頭に入ってこないという子もいたと思います。
時間がないからこそ、「押さえるべきポイント」と「大切にしたいこと」が明確になった
反省点は、準備時間がなかったので、ペットボトルに水を入れるなど、子供たちに任せる作業が多くなってしまったことです。結果的に活動が慌ただしくなってしまい、また自分たちでペットボトルに水を入れたのでほんのすこしだけ誤差が出てしまいました。
しかし、急遽準備した授業にも関わらず、子供たちはこんなにも目をキラキラ輝かせて活動をするものかと驚かされましたし、やってよかったなと思っています。
教材研究や準備が少なく授業に臨んだことで、「教えるべきこと」や「自分の大切にしたいこと」が絞り込まれ明確になるということも感じました。
指導書をしっかり読み込む時間がないとわかった時点で、私はまず本時目標や評価規準、既習事項、板書計画の4点をチェックしました。そのとき、自分はこの4点を重要視して授業をしてるのだなということが再認識できました。そして改めて授業準備では「全員参加」の視点が自分の中で大きなウェイトを占めていることもわかりました。「一人ひとりがしっかり活動できて、全員で楽しいと思える授業にする」ということをずっと大切にしてきたし、自分が指導を行う上で外せないことなのだということに気付けたことは、その後につながる貴重な経験となりました。
構成/出浦文絵
イラスト/藤井昌子
企画/小学館インクリオ
