その敬語で大丈夫?「敬語の指針」から学ぶ教員の品格と指導力
ご自身の言葉遣いに自信はありますか。保護者や地域と接する機会が増える今、何気ない一言が信頼を損なうこともあります。敬語は単なるマナーではなく、教育者として欠かせない基本スキル。文化審議会「敬語の指針」を参考にしつつ、5つのレベルで身につけたい敬語を整理し、児童に自然に伝えられるようになるための方法を考えてみます。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

目次
ご自身の言葉遣いに自信はありますか?
わたしたち教員は、日々の指導の中で児童に「丁寧な言葉を使いましょう」と教えています。しかし、ご自身の言葉遣いには自信があるでしょうか?
現代では、保護者や地域の方々と接する機会が増えています。その際、何気なく使っている言葉が、実は相手に不快感を与えたり、学校や教員自身の信頼を損ねてしまったりするケースも少なくありません。敬語は単なるマナーではなく、相手へのリスペクトを示すためのコミュニケーションの基本です。そして、何よりもコミュニケーションを滑らかにするための重要なツールだと言えるでしょう。教育者として、相手に敬意を払い、円滑な人間関係を築くためのスキルは、児童を指導する上でも不可欠なものです。
わたし自身の話になりますが、居住地南東北の一地域、小学生の頃、親戚のおじさんから方言の教えを受けました。
「いいか、『し』ということばを会話の最後につけると丁寧な言葉になり、品が上がるんだ。時々使ってみろ」
「そだなし」「んだっし」といった言葉は、「そうですね」を丁寧に表現する方言です。この教えは、わたしにとって敬意を示す言葉遣いの原点になっています。
そこで、文化審議会が答申した「敬語の指針」(平成19年)をベースに、わたしたち教員が身につけておくべき敬語を5つのレベルで見ていきましょう。ご自身の言葉遣いを見つめ直し、自信を持って児童に敬語を教えられるようになるためのヒントを探していきたいです。
レベル1 最低限必要な敬語感覚
このレベルは、敬語の基礎の基礎。敬意を払うべき相手を認識し、適切な敬語の種類を選択できる力です。
「敬語の指針」では、敬語を大きく5つの種類に分類しています。これはきちんとおさえたいです。
尊敬語 相手を高めることで敬意を表す言葉
例)「いらっしゃる」「おっしゃる」「ご覧になる」
謙譲語I 自分の行為をへりくだることで、相手に敬意を表す言葉
例)「参る」「申す」「拝見する」
謙譲語II(丁重語) 自分の行為やものごとを丁重に述べることで、聞き手に敬意を表す言葉
例)「申します」「いたします」
丁寧語 相手に丁寧な態度で接し、品位ある話し方をする言葉
例)「です」「ます」
美化語 品位を高めるために使う言葉
例)「お茶」「ご飯」
まず、これら5つの分類を頭に入れることは、敬語を使う上で不可欠です。しかし、多くの人が混同しやすいのが「謙譲語I」と「謙譲語II」の使い分けです。
謙譲語Iは「向かう先敬語」とも呼ばれ、自分の行為が向かう相手(尊敬する相手)に対して敬意を示します。例えば、「先生に手紙を差し上げる」という場合、「差し上げる」という自分の行為が「先生」に向かうため、謙譲語Iを使います。
一方、謙譲語IIは、話を聞いている人(聞き手)に対して敬意を示します。例えば、同僚と話しているときに「私は明日、校長室へ伺います」という場合、校長先生は尊敬の対象ですが、話を聞いている同僚にも丁寧な態度を示すために謙譲語IIを使います。
このように、誰に対して敬意を払うべきかを常に意識することが、敬語の第一歩となります。まず最初のレベルとして、相手が誰かを考え、尊敬語と謙譲語を適切に使い分けることをめざします。
