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図工の作品は、自分の席に座って製作すべきなの??

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埼玉県公立小・中学校教諭

坂齊諒一(さかさい りょういち)
いちばん楽しいアートバナー

自由な発想をのびのびと表現してほしいアートの授業。そこに、「学習は机の上で行うもの」という、教員も子どもたちも持っている先入観は果たして必要でしょうか? 児童の制作意欲を高め、授業をより充実したものにできるのなら、作品作りに使用する場所は、児童にある程度の自由を与えてもいいのではないでしょうか…。今回は、そんなご提案をしたいと思います。

題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一

連載【いちばん楽しいアート】#22

小学校段階での図工は「自由な発想で作り出す喜びを味わう」ことが授業の根幹です。それを味わわせるためにどのような準備が必要かを考えるのが教師の役割です。
ご存じのとおり、教室の机は手狭ですし、図工室の机は広いと言えども多くの児童たちが並んで座りますから、場所のシェアがなかなか難しい場合も多いですね。こうした場所的な制約に子どもたちを慣れさせるのではなく、学習するというルールの範囲内で、製作する場所の自由さを与えてあげたいのです。

児童を信じて一度行ってみる

自由な場所と言っても、教室から出て場所を選んでいいというわけではありません。実際に木や花を見て描こうというときはありますが、基本的には教室や図工室内で作ることがほとんどだと思います。
そこで、例えば床の上にスケッチブックを広げたり、あるいは空席の机をつなげて2つにしたり、椅子に画板を立てかけてイーゼルのようにしたり、用具だなの上をテーブルのように使ってみたり…と、作品を作る上で、それぞれの子どもたちが自分に適した場所を選ばせてみてはいかがでしょうか。
最初は、次のような悪い予想が頭をよぎるかも知れません。

仲良しの友達同士で集まってふざけてしまうかもしれない
誰が何をしているか把握することができない
ふざけている児童がいた場合、すぐに注意できないかもしれない
準備と片付けに時間がかかるかもしれない

担任として授業環境を整える上で、これらが不安要素として思い浮かぶのは当然のことです。しかし、そのリスクを取ってでも狙いたいメリットがあると考えます。それは、

児童が束縛感をあまり感じることなく取り組める
自発的に行動しやすい

ということです。作品作りに適した場所を選ぶことができる、友達と話しやすい、友達の作品を見に行きやすい、作品作りに集中したい場合は距離を取ることもできる、というある程度ゆとりのある環境は大きなメリットです。

こちらの記事

でも述べましたが、児童生徒に
「制限をつけないことは信頼の証」
につながります。
そうです、大事なのは、児童生徒との信頼感を作り、お互いに安心して楽しく学びができるかどうか、ということです。
クラス全体の雰囲気や、所属する児童生徒の特性に応じて、ベストだと思える指導をする上での手段の一つとお考えください。

なお、若手の先生であれば、
「なぜ机の上で絵を描かせていないの?」
と他の先生から注意されてしまうかも…というような心配もあるかもしれません。でも大丈夫です。全く問題ありません。もし心配であれば事前に「こんな想いがあるので、場所を選ばせてみたいです」と相談してみてもいいですね。授業の展開を工夫したい、今のクラスに合った授業展開を模索したいという想いは教師としてとても大切であり、大事にされるべきものです。

ルールの前に理由の説明をする

製作を自由な姿で行っていい、というルールを提示する前に「図工がこのような時間になってほしい」、「こういう理由や目的があるんだよ」と伝えましょう。
ふだんの、「机に座って学習する」という習慣にとらわれなくていい、ということですが、それは単なる逸脱ではなく、ルールの拡張であり、目的があってのことだというのを共通認識にするためです。
例えば下記のような声掛けはいかがでしょうか。

図工の時間は皆さんの頭の中にあるイメージを、自由に表現する時間だと考えています。机の上で行うことでその表現をしづらくなってしまうのはもったいないです。なので活動場所は自分で選んでみてください。でも、好き勝手していいわけではありません。自分の作品作りに集中することができて、友達と図工に関係のある話をすることもできるような場所がいいですね。

というような声を掛けた後にルールを伝えると、納得感を伴った状態で行動することができます。ルールに関しては以下のようなものはいかがでしょうか。

作品作りに集中できる場所を考えて選んでほしい。
両手を広げてぶつからない程度に間を開けてほしい。
場所は変えてもいい。
友達と図工に関係のある話で盛り上がってほしい。

教師がどこまで行動を管理すべきなのか

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