学級づくり・授業づくりに直結する! 子供を「見る力・聴く力」

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「子供の一挙手一投足に目を向ける」「子供の言うことに耳を傾ける」のは、教師と子供の良好な関係づくりには必須です。学校で普段、教師が心がけるべきポイントをまとめます。

監修/和歌山大学教育学部教職大学院非常勤講師・深澤英雄

子供を「見る力・聴く力」

教師に必要な「見る力」

中学年を「見る」コツと留意点

中学年になると、少しずつ幼児的なところがなくなり、児童期の特徴がはっきりとしてきます。心と身体の両面での発達がめざましく、自分らしさが際立つようになります。また、身体の動きも活発になり、感情も刻々と変化するようになります。教師には、めまぐるしく変化する子供の些細な動作や表情を見逃さず、その変化の意味を察する力が求められます。

いじめの話をしたときに、表情が曇る子がいないか。休み時間におしゃべりをしている子たちの雰囲気がいつもと違っていないか。本を読んでいるように見えるけれど、目線が不安そうな子はいないかなど、子供の一瞬の動きを捉え、その背景を理解しようという姿勢で子供たちを見ていないと、子供たちの暗部にある問題点に気付くことはできません。

「見る力」は、学級全体がどの方向に動いているのかを知る力でもあります。学級の雰囲気が変化しているとき、それが問題のない変化なのか、「荒れ」の方向に向かっている変化なのか、判断しなければなりません。

中学年を「見る」コツと留意点

グループ学習での子供の見とり方

主体的・対話的で深い学びが強調されてから、ペアやグループの活動が増えてきました。しかし、この活動が教育的に有意義な活動になるかどうかは、教師の「見る力」にかかっています。

話合いを眺めるだけでなく、明確な目標をもち、全体学習との関連を語って指導し、しっかりと活動をふり返ることが重要です。さらに、「発言は少ないが、友達の発言をよく引き出している」「発言が、教材文をしっかり理解した内容になっている」など、その子なりの成長を見とることで、活動が実りあるものになるのです。

グループ学習での子供の見とり方

教師は子供に見られている

教師は子供を見て指導する立場です。しかし、子供もよく教師を見ています。特に中学年になると、ほかの子がどう評価されているかが気になり、先生をよく観察するようになります。そして、先生にはみんなに均等に目を配ってほしい、特定の子だけをひいきしないでほしいという公平感をもつようになります。そして、公平でないと感じたときは、先生を批判的に見るようになります。さらに、教師の論理の勝手さや指導の盲点に気付き始め、その矛盾をついてくるようになります。教師は子供たちが「何を求めているのか」「自分はどう見られているのか」と視点返しをして、リフレクション(内省)することが大切です。

世阿弥の著書の中に、「離見の見」という言葉があります。演者には、自分を離れ、観客に見られた自分の姿を自分自身で見ることが必要であると記しています。つまり、自分の言動について客観的な視点をもつことの重要性を説いているのです。教師なら、自分の姿と子供の姿を、天井の辺りから見ているような具合でしょうか。自分を冷静に客観視することは難しいことですが、「自分は見られている」ということと、「離見の見」という言葉は心に留めておきたいものです。

教師は子供に見られている
  • 子供の些細な動きの変化を見逃さず、その変化の理由を察する。
  • ペア学習では、明確な目標をもち「成長を見とる力」が重要。
  • 教師は常に子供から「見られている」ということを意識する。

教師に必要な「聴く力」

中学年の話を「聴く」留意点

中学年は自分の判断を大切にするようになります。先生への批判の目も厳しくなり、納得できないことを受け入れない傾向が強まり、口ごたえも多くなります。口ごたえは、子供なりに精いっぱい自立を求めて模索している証拠だと捉え、聴いてあげることが重要です。

中学年になると直接的な言葉ではなく、曖昧な表現も多くなります。例えば、「先生は〇〇だからな」などと教師を冷やかすとき、「どうして、あんなこと言うの?」と問うと、「言ってみたかっただけ」という言葉が返ってくることがあります。こうした場面では、冷やかしは、教師への関心を表し、ときに教師への要求を意味するのだと、子供の心理を読み取りながら聴くことが重要です。子供は、自己の心中を相手に投射し、その反響を受けて表現します。

しかしその表現は鋭く、曖昧で、また間接的であり、逆説的です。言葉としてはっきりと形をつくらないうちに、気分とともに吐き出されるため、そう簡単には読み取れません。受け取る側の教師が、その言葉から子供の真意や本音を読み取りながら聴かなくてはなりません。

中学年の話を「聴く」留意点

女子の話を聴くポイントと留意点

中学年の女子は、男子ほどあからさまな「口ごたえ」はしませんが、納得しないとかなり辛辣なことを言うようになります。女子と接するうえでは、女子の話をどれだけ聴いてあげたかが重要。「そうなんだ。それで?」と親身になって相槌を打ちながらじっくり話を聴きましょう。教師はあまり口を挟まず、存分に話をさせ、言葉を反復しながら共感する姿勢を示すようにしましょう。そうすることで女子は自分なりに解決の方向を見いだします。明らかに間違っている方向へ行きそうなときは、一度共感を示しながら軌道修正をするとよいでしょう。

女子の話を聴くポイントと留意点

男子の話を聴くポイントと留意点

屁理屈を言ったり、口ごたえしたりするのは特に男子です。「こんなことをしたい」「嫌だ」などと、ダイレクトに求めてくるようになります。

その要望に対してくどくどと説教されると、うるさいと感じ、反抗するようになります。

男子には「子供の身になって聴く」「集中して聴く」「話からちょっと距離をおいて、視野を広げて聴く」ことがポイント。子供の気持ちに共感してから、問題を明確にし、解決方法を一緒に考える姿勢を見せましょう。

まずは、相手の気持ちを理解しようとする姿勢を見せ、彼が「何を必要としているか」を把握し、「一番分かってほしいこと」は何かを知ることが大切です。

男子の話を聴くポイントと留意点

最後まで話を聴き子供理解を深める

子供は自分の話をしっかりと聴いてくれる教師のことを好きになり、その人の話には耳を傾け、主体的に学ぼうとします。だからこそ、子供との信頼関係を築き、頼りにされる教師になるために、「聴く力」が必要なのです。

しかし、子供は話があまり上手ではありません。省略が多く、主観的で感情的。語彙も不足しており、表現も未熟です。おろおろした語り口で、話がそれたり、くどくなったりする子には、「何が言いたいの?」と言いたくなることもあるでしょう。しかしその原因には自信の喪失、劣等感があります。そういう子供に話の結論を急がせたりすると、さらに自信を失い、話をしてくれなくなるでしょう。子供の話は最後まで、忍耐強く聴くことが大事です。

子供の話を最後まで辛抱づよく聴くことで、その子の本当に言いたいことが分かり、さらに、子供のものの考え方、感じ方、行動の理由を知ることができ、子供への理解が深まります。また、子供にも「自分を受け入れてもらえた」「自分は大切にされている」という自己肯定感を与えることができるのです。

  • 冷やかしや暴言も、子供の心理を読み取りながら聴くことが重要。
  • 女子の話は、口を挟まず、言葉を反復して共感しながら聴く。
  • 男子の話は、子供の身になって聴き、本音・本心を捉える。

深澤英雄(ふかざわひでお)●1955年兵庫県神戸市生まれ。香川大学卒。和歌山大学教育学部教職大学院非常勤講師。1年間、神戸市の中学校に勤めた後、神戸市の小学校に37年勤務。現在「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(学力研)」常任委員。著書に、『学習指導要領2020 実現のための「新・教師力20」』『どの子も伸びるさかのぼり指導のアイディア』(共に小学館)、『基礎・基本「計算力」がつく本』(高文研)など多数。

取材・文/出浦文絵 イラスト/大橋明子

『教育技術小三小四』2020年2月号より

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