<連載> 菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」~3学級での実践レポート~ #16 高知大学教育学部附属小学校2年B組③<後編>


菊池実践を追試している3つの学級の授業と子供たちの成長を、年間を通じてレポートする好評連載。今回は高知の小笠原学級(2年生)における2024年11月の授業レポートの後編です。菊池先生と小笠原先生による、2時間続きの合同授業の記録です。

目次
黒板に書かれた “ヒミツ” とは……
「次は、<友達紹介なかよしゲーム>パート2に行きたいと思います」
小笠原先生が話すと、何人かの子供たちがうれしそうに拍手をした。
「おお、拍手が起きたなあ。では、みんなで拍手!」
菊池先生が促すと、教室に全員の大きな拍手が響いた。
「さっきより、ちょっと難しくなります。パート1で優勝した班、前に出て来てください」
4人が集まると、3人が縦に並び、1人の子と向き合った。
「先生が出したお題に沿って、質問します」
菊池先生がゲームのやり方を説明。
●質問者1が質問する
●回答者が質問に答えたら、質問者1は列の最後尾に並び直す。
●続いて質問者2は、質問者1の質問に関連付けた質問をする
●答えた内容に合わせて、次の人が質問する。繰り返して2分間続いたらゲームクリア。
「パート2は、数ではなく、続けられたかどうかを競うルールです」と菊池先生。
「回答者は最後尾の子にも聞こえる声で答えないと、新たな質問ができません。質問者も、回答者の答えを聞いていなければ、次の質問ができません」
菊池先生の説明が終わると、子供たちは班ごとに分かれて、教室の空いているスペースに並んだ。
「最初の質問は、『好きな勉強、授業』です」
小笠原先生がお題を発表すると、1人の子が、
「もし質問が出なかったら、どうするんですか?」と尋ねた。
「ゆっくり3秒数える間、黙っていたらアウト。椅子に座ります」と菊池先生。
「黙ったらだめだぞ」と隣同士で牽制し合う姿も。
第1戦がスタート。子供たちが話し合っている最中、小笠原先生が、ゲームのパート1で子供たちが挙げた意見をまとめながら、質問ゲームが上手になる “ヒミツ” を黒板に書き出した。
①詳しく答えられる
②はい・いいえで答えやすい
③知っていること
④好きな~
⑤声をかけ合う
⑥明るい声
⑦ちょうどいい声の大きさ
⑧笑顔
⑨向き合う
⑩身振り手振り
⑪一緒に楽しもう
⑫好きになる
<コミュニケーション力=(内容+声+表情・態度)✕相手軸>
コミュニケーションの公式に沿って、“ヒミツ” を書き出しています。
学習ゲームもフリートークもほめ言葉のシャワーも対話ですから、どれにもコミュニケーションの公式が当てはまります。
「✕相手軸」は、相手への思いだけではなく、自分も楽しむという視点が入ります。
ここで黒板に書き出した内容は、授業の後半に大きな役目を持ってきます。
2分経って、ゲーム終了。全班がクリアした。
菊池先生が黒板を見ながら、
「『詳しく答えられる』というのは、答える人が詳しく答えてあげないと、次の質問ができないということです。どの班もそれができていたから、2分間続いたんですね」とみんなをほめた。
質問に答える人を交替して、「好きなスポーツ」のお題で、2回戦スタート。
3回戦のお題は「好きなお菓子」。3回戦はレベルアップして、1分間の質問タイムで、1秒間が空いてしまったら試合終了というルールだ。
4回戦「学校は好きか」では、さらにレベルアップし、0.5秒間が空いたらアウト。子供たちのトークがどんどんスピードアップした。
いよいよフリートークに挑戦
試合終了後、いったん自分の席に着席。
菊池先生が黒板を指しながら、
「全班がクリアしましたね。これらを頑張ったら、すごいフリートークになるでしょう」と話すと、
「先生、もっとある!」
とパート1で泣いてしまった男子が挙手した。菊池先生が「おおっ!」と発言を促した。
「『楽しくすらすら言う』と『いろんなことを思い出せる』です」
「なるほど。答える人もいろんなことを思い出せるんだね」
と菊池先生が男子をほめると、それにつられて他の子も手を挙げた。
「友達じゃない人でも友達になれるから、楽しいクラスになる」
菊池先生が黒板を指しながら、
「じゃあ、次のフリートークで特に頑張ることを、この中から1個決めましょう」
と説明した。
自分が一番頑張るところに、自画像マグネットを貼って意思表明。一つに絞れず、黒板の前で悩み込む姿を見た菊池先生が、
「どうしても1個に決めきれない人は、複数でもいいよ」と言葉をかけた。
全員貼り終えたところで、菊池先生が、
「今からお題を出して、班でフリートークをやっていきます。レベル1、2、3とあるから、どれもクリアして、日本一を目指しましょう」と発破をかけた。
小笠原先生が、
「今、みんなが黒板に貼ってくれた自画像を見てみると、①から⑫まで(バランスよく)ばらばらに貼ってくれています。そして、⑪と⑫には、とくにたくさん貼ってある。前に菊池先生と一緒に勉強したとき、『伝え合うときに大事なのは、相手を思う気持ち』だということを学んだよね。だから、(相手を思う気持ちに該当する)⑪と⑫を選んでくれてとてもうれしいです」
と続けると、子供たちもうれしそうにうなずいた。