小５特別活動「５年◯組の一年を振り返る会をしよう」指導アイデア

連載: 【文部科学省視学官監修】特別活動指導アイデア

2025.03.10

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４月　学級活動⑴　５年〇組の係を決めよう
５月　学級活動⑴　学級の歌をつくろう
６月　学級活動⑵ ウ　地震のときの正しい行動の仕方
７月　学級活動⑴　１学期がんばった会をしよう
９月　学級活動⑵ イ　互いのよさの認識
10月　学級活動⑴　５年〇組の運動会のめあてを決めよう
11月　学級活動⑶ ウ　目指す自分になるための自主学習
12月　学級活動⑴　来年の１年生と交流会をしよう
１月　学級活動⑶ ア　最高学年に向けて
２月　学級活動⑴　６年生に感謝の気持ちを伝える会をしよう
３月　学級活動⑴　５年〇組の一年を振り返る会をしよう

1．本時のねらい　５年〇組の思い出を最高学年に向かう大きな力に！

高学年としてスタートした５年〇組の１年間も間もなく終わろうとしています。この１年で学級活動はもちろん、委員会活動やクラブ活動などでも活躍の場を広げ、６年生を送る会では６年生からバトンを受け継いで、少しの不安とともに、最高学年への意欲と期待が高まっている頃だと思います。
今回は、子供たちが力を合わせてチームづくりをしてきた５年〇組のゴールを目前にした「学級活動⑴｢５年〇組の一年を振り返る会をしよう」の実践を紹介します。これまでの学級の出来事を振り返りながら学級集会を計画することで、自分たちの成長を実感して、最高学年になることへの自信や希望を高めることをねらいとします。

2．事前の活動　話合いの準備をしよう

① 計画委員会で議題案を選定（学級会の１週間ほど前）

議題箱には子供たちがこれまでの学年でも経験した「学級で最後の集会をしたい」という内容の議題案が多く寄せられることが予想されます。特に５年生のこの時期に計画する学級集会は単なる学年末のお楽しみ会の内容ではなく、自分たちが目指してきた学級目標を振り返り、人間関係づくりや参画意識など、学級のよさや課題も含めた自分たちのクラス「らしさ」を意識した話合いができるようにしたいものです。計画委員会で議題案を選定する際には、学級目標の振り返りを意識できるように教師が助言すると、子供たちの議題への必要感を一層高めることができるでしょう。

② 学級の総意で議題を決定する

（司会）議題箱には、いろいろな議題案が提案されていましたが、このクラスで過ごすのもあと少しなので、最後に思い出に残る集会をしたいというものが多く見られました。

そうだね。みんなで過ごす思い出をつくりたいね。

みんなで学級の歌をつくったり、運動会に向けての学級のめあてを考えたりしたね。

運動会のときに５年〇組の合言葉を入れたリストバンドをつくったね。みんなの気持ちが１つになって、パワーをもらえたよ。

今度の集会では、５年〇組の１年間を振り返るようなことができるといいね。

学級目標にあるような、私たち５年〇組が目指してきた学級生活を振り返りながら、｢おもいで」に残る集会にしようよ。

（司会）では、次の学級会は、｢５年〇組の一年間を振り返る会」について話し合うということでいいですか。

いいと思います。

みんなの思いや願いを生かした学級目標や学級の合言葉は、１年間大切にしてきた宝ものです。このような最後の学級集会では、宝ものの箱を開けて、できるようになったことや成長を実感する時間を過ごすことが、次の学年での仲間づくりに生きてきます。

③ 学級会に向けて計画をする

議題が決まったら、学級会に向けて計画委員会を開きます。司会グループと提案者で、提案理由を深めたり、話し合うことや決まっていることについて決めたりします。

＜提案理由は合意形成と実践の拠り所＞
提案理由は、１時間の話合い活動と実践、振り返りまでのよりどころとなります。｢何のために話し合うのか」｢何のためにするのか」を一人一人が理解しておくことが、合意形成を図るうえで大切な根拠となります。また、提案理由を簡単な言葉でキーワード化して、合意形成する際の視点とすることも考えられますが、くれぐれも「キーワードに合っているからいいと思います」｢キーワードの言葉が入っているからいいと思います」と、ならないように留意しましょう。

＜提案理由を深める例＞
① 現状（今、○○だから）
●この学級で過ごす時間も残りわずか。
●最高なクラスもいよいよゴールが近付いて、もうすぐ６年生になる。
●学級目標を大切にして、それを目指してみんなで頑張ってきた。
●少し寂しい気持ちもある。
② 提案（○○することによって）
●自分たちが１年間、みんなで力を合わせて頑張ってきたことや、失敗しても乗り越えてきたことなどを思い出して、お互いの頑張りを認め合う。
③ 理想（○○になりたい）
●最後の学級集会では５年〇組の仲間と過ごした１年を楽しい思い出にして、みんなで６年生に向けて頑張ろうと思えるようになりたい。

特に③のなりたい学級の姿を思い描くことが大切です。提案者の思いを大切にしながら、教師も関わり、必要に応じて助言します。

※「５年〇組らしさ」をキーワードとする場合、事前に、どんなことが５年〇組らしいのかを学級で出し合い、共通理解を図っておくようにします。

＜提案理由を文章にまとめる例＞
学級目標を大切にしてこれまでいろんなことをがんばってきた最高な5年〇組もいよいよゴールが近付いてきました。そこで、｢５年〇組の１年を振り返る会」をして１年間、楽しかった思い出やみんなの力で乗り越えてきたことを振り返りながら、お互いの成長やがんばりを認め合う集会をしたいと思います。学級目標の５年〇組らしさを出して、みんなで６年生に向けてがんばる楽しい気持ちになると思って提案しました。
＜提案理由のキーワード化の例＞
●１年間を振り返る
●５年〇組らしさ

提案理由や話し合うこと、決まっていることがまとまったら、計画委員会が学級のみんなに知らせ、学級会ノートに自分の考えを書いてもらうようにします。一人一人が自分の意見と理由をもって学級会に臨むことができるように、書く時間を確保するとよいでしょう。ICT端末を活用すると、友達の意見や考えを共有でき、なかなか考えが思い付かない子も自分の考えをもつ参考にすることができます。また、司会グループが、みんなから出されている意見を把握し、短冊づくりなどの準備も効率よく行うことができます。

資料１　学級会ノート　ダウンロード＞＞

④ 司会グループと学級会当日の流れを確認する（学級会の前日までに）

この時期になると子供たちは、学級会の流れをある程度はイメージする力が付いています。役割によって必要に応じたメモができるような活動計画カードを用い、司会グループで１時間の流れを確認しましょう。

資料２　活動計画カード　ダウンロード＞＞

3．本時の展開　学級会をしよう

話し合うこと①　｢集会で何をするか」

【出し合う】
集会で何をするか、提案理由や話合いのめあてに沿って事前に考え、学級会カードに書いてきたことを発表し合います。

（司会）まず、何をするかについて話し合います。意見を出してください。

私は「思い出バスケット」がいいと思います。思い出をテーマにしたら、１年間の出来事や思いを楽しく振り返り、お互いのがんばりにも改めて気付くことができると思うからです。

ぼくは「思い出すごろく」がいいです。自分たちの１年間の出来事をマスに書いたら、協力してつくるときも思い出やみんなでがんばったことを振り返れるし、集会のときも楽しみながらできるからです。

私は、｢お世話になった先生にお礼を伝える」がいいと思います。理科や音楽の授業で先生方にお世話になったので、お礼がしたいからです。

ぼくは、｢みんなで作品をつくる」がいいです。最後にクラスみんなで１つの作品をつくると、みんなの思い出になるからです。

ぼくは「クイズ大会」がいいと思います。グループになって１年間の思い出をクイズにして出し合うと、楽しみながら振り返ることができて、がんばったことや成長したことも分かるからです。

（司会）では、他に意見がないようなら､【くらべ合う】に移りますが、いいですか。

いいです。

【くらべ合う】
ここでは、｢出し合う」で出た意見について、どれがよりよいかを比べ合い、｢賛成」や「反対」の意見を発表します。比べる視点は提案理由となるので、教師は理由をお互いによく聞き合うことがよりよい合意形成に結び付くことを助言するようにします。
複数の意見を合わせたり、付け足したりする場合は、提案理由や話合いのめあてに沿っているかどうかだけではなく、合体したほうがよいのか、実現可能かなど、実際の場面を想起して考えることができるようにします。
黒板に、｢賛成」は赤色、｢反対」は青色と色分けしたマグネットを貼ることで、話合いの過程や状況が視覚的に分かりやすくなります。単にマグネットの数で決定しないように、理由を大切にして話し合うようにします。また、反対意見に対して解決策や改善案が出たからといって、青色マークを外してしまわないようにします。解決策や改善案をちがう色の短冊に簡潔に書いたり、解決したことがわかるように、青色マークを黄色マークに変えたりするのもよいでしょう。

私は、｢思い出バスケット」に賛成です。このゲームは１年間思い出を振り返ることができるし、これまでの集会でもして、学級の雰囲気を明るくできた思い出のゲームだからです。

ぼくは「クイズ大会」に賛成です。１年間の思い出をクイズにして振り返ることができます。運動会での演技のように、できない技も諦めずにみんなで頑張ったことをクイズにすると、学級目標の５年〇組らしさも出るからです。

私は、｢椅子取りゲーム」に反対です。みんなでやると楽しいけれど、椅子に座れなかった人はゲームに参加できないので、それでは少し残念だからです。だから遊びながら思い出を振り返ることができる「思い出バスケット」に賛成です。

私は、集会の中で「お世話になった先生にお礼」をすることに反対です。先生にお礼はしたいと思いますが、集会は１時間なので、みんなで楽しむ時間がなくなります。お礼の気持ちは別の機会にお手紙などで表して、集会では思い出クイズをして、みんなで楽しみながらに１年間を振り返ったらいいと思います。

（司会）では、｢お世話になった先生方にお礼をする」は別の時間にすることにしていいですか。

私は、今の意見を聞いてお世話になった先生へのお礼は「５年〇組の一年を振り返る会」ではなくて、別の時間にしたほうがいいと思います。

ぼくもその意見に賛成です。先生方には、休み時間に手紙をお届けして、感謝の気持ちをお伝えしたいです。

（司会）お礼の気持ちは別の機会にするという今の意見について、みなさんはどう思いますか。

いいと思います。

＜簡単な思考ツールを活用して、視覚的にとらえやすくする＞
くらべ合う段階では、簡単な思考ツールを使うことも考えられます。例えば提案理由の「ふり返り」と「５年〇組らしさ」のキーワードを座標軸にすると、どの意見がキーワードに近いのか、またどうすれば、２つのキーワードを満たす提案にできるかなどを視覚的に捉えて考えやすくなります。電子黒板のモニター画面やICT端末を活用するとよいでしょう。

【思考ツールの活用例】

【まとめる】
｢くらべ合う」で出し合った賛成や反対の意見とその理由から、提案理由に基づいて合意形成を図ります。少数意見にも耳を傾けて互いに聞き合うことが、学級の共感を大切にする風土づくりにつながります。

（司会）では、どんなことをするかをまとめたいと思います。１時間なので、ゲームは２つまでならできると思います。

私は「思い出バスケット」なら椅子に座れなくても、思い出にまつわるお題を出せるから、｢思い出バスケット」がいいと思います。

私は「思い出バスケット」と「思い出クイズ」はみんなで活動する遊びで、｢思い出すごろく」はグループで活動する遊びなので２つに分けて考えてはどうでしょう。

今の意見を聞いて、みんなで活動する遊びとグループで活動する遊び、それぞれ１つずつにするのがいいと思います。

（司会）では、みんなで活動する遊びとグループで活動する遊びとに分けて、１つずつ決めてもいいですか。

それでいいと思います。

みんなでする遊びですが、私は５年〇組の思い出を振り返ることができるので「思い出バスケット」に賛成です。そしてゲームの名前を「５年〇組バスケット」にしたらいいと思います。

ぼくはグループでの遊びとして、マスに書くことを思い出の内容に合わせていろいろ工夫できるので、｢思い出すごろく」に賛成です。そして、すごろくの中にクイズを入れるともっと面白くなると思います。

私も、すごろくの中にクイズを入れたら楽しく振り返ることができるし、グループで協力してクイズを解くこともできるから、すごろく＆クイズがいいと思います。

（司会）それぞれ１つにまとめるという意見が出ましたが、どうですか。

いいと思います。

＜板書の可視化・操作化・構造化＞
板書は短冊を分類・整理することで意見が比べやすくなります。ここでは、｢みんなで活動する遊び」と「グループで活動する遊び」を分類することで、板書の可視化・操作化・構造化をしています。子供が話合いの場面で必要に応じて、自ら話合いの方法を創意工夫できるように、必要に応じて教師は短冊の分類・整理の方法を助言するとよいでしょう。

話し合うこと②　｢どんな工夫ができるか」

【出し合う】

（司会）では次に、話し合うこと①で決まった活動の工夫について話合います。意見のある人は発表してください。

ぼくは、すごろくのマスに入れる言葉やクイズも学級目標の「おもいやり」｢もくひょうを大切に」｢いつも明るく」｢できなくても諦めない」の頭文字の「おもいで」を入れるようにすると５年〇らしい振り返りができると思います。

私は、学級目標の頭文字の「お　も　い　で」と書いたリストバンドを作って、すごろくの景品にしたらいいと思います。運動会の前に学級会で決めたクラスの運動会の目標を書いたリストバンドを、大切な思い出として私は今も残してあります。

集会のはじめに、みんなでつくった学級の歌を歌ったら気持ちが１つになると思います。

【くらべ合う】

ぼくは、リストバンドに賛成です。｢おもいで」と書くのもいいけれど、一人一人が一番思い出に残ったことを書けば、より１年間を振り返ることができるし、みんなの思い出を知ることができて楽しいと思います。それとゲームに入れる思い出の出来事はみんなにアンケートをとればいいと思います。

私もリストバンドに賛成します。でもリストバンドは景品じゃなくて、みんなで付けたほうが思い出を振り返ることができるし、みんなの気持ちが１つになってもっと楽しい集会になると思うから、全員がリストバンドを付けるとよいと思います。

【まとめる】

（司会）賛成意見が多いようなので、４つの工夫に決めていいですか。そしてリストバンドは全員が付けること、１年間の思い出のアンケートを取ることを決めていいですか。

いいと思います。

提案理由のキーワード「１年間の振り返り」｢五年〇組らしさ」を基に、様々な工夫を考えることができましたね。｢お世話になった先生にお礼」についても、役割を決めて進めていきましょう。

話し合うこと③　｢どんな役割が必要か」

（司会）では最後に、この集会でどんな役割が必要かについて話し合います。司会やプログラム作り、２つのゲームの係、リストバンド係、アンケートの係、お世話になった先生へのお礼の係の他に特に必要な役割があれば、発表してください。

私は、｢かざり」があればいいと思います。１年間を振り返ることができるように、写真を飾るといいと思ったからです。

ぼくは、｢BGM」担当があればいいと思います。ゲームのときに学級の歌や運動会で使った曲などをかけると盛り上がると思ったからです。

（司会）｢かざり」や「BGM」の役割をつくってもいいですか。

いいと思います。

では、役割分担して、集会の準備を進めていきましょう。準備の段階から、みんなで楽しんで活動できるといいですね。

提案理由をもとにして、本時の話合いを一人一人が振り返るとともに、教師からも前回の学級会と比べてよかったことやこれから頑張ってほしいこと、実践への意欲付けの助言を行うようにします。

4．事後の活動　決まったことを実践して振り返ろう

① 決まったことを実践しよう

集会を行う準備をします。決まった役割の分担をして、協力しながら準備をします。ねらいに沿って、互いのよさや頑張りに気付き、好ましい人間関係を築くことができるように、教師は、見守り、言葉かけを適時行って、協力しながら準備できるようにします。

＜学級会の足跡を残す＞
板書を写真に撮って掲示したり、話合い活動や実践の振り返りを掲示したりすると、次回の学級会に生かすことができるだけでなく、１年間の学級の足跡として残すことができます。

② 実践の振り返りをしよう

学級会の振り返りだけでなく、実践の振り返りも大切です。提案理由をもとにして、自らの活動を振り返るとともに、教師からもよかったことやこれから頑張ってほしいことを伝えることで、子供たちが成長を実感したり、次の活動に向けた課題を意識したりすることができます。

＜子供たちの振り返りから＞
●リストバンドをみんなで付けて、５年〇組バスケットやクイズすごろくをして、この１年間のことを思い出し、たくさん笑いました。私だけでなく、みんなにとって５年〇組はいつまでも大切な仲間だと思いました。
●集会の準備をしているときから、みんなと活動するのも、もう少しなのでちょっとさみしい気持ちにもなりましたが、ぼくたちらしい楽しい時間をつくることができて、うれしかったです。
●みんなで助け合ってできたので、やっぱり５年〇組は思いやりのあるクラスだなと思いました。学級目標の「おもいで」を大切にして、これからもチャレンジしたいと思います。

＜｢キャリア・パスポート」に成長の記録を残す＞
一人一人が話合い活動や集会活動において、学級目標の実現に向けて自分が頑張ったことやもう少し努力が必要なことなどを振り返って「キャリア・パスポート」に書いて残しておくと、自らのよさや変容、成長を実感できます。

構成／浅原孝子　イラスト／高橋正輝

監修
安部　恭子
前文部科学省視学官　帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。