小5理科「人のたんじょう」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小5理科「人のたんじょう」の板書例、教師の発問、想定される子どもの発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
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執筆/福岡県大野城市立下大利小学校教諭・水野麻江
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県大野城市立月の浦小学校校長・清尾昌利
目次
単元目標
人の発生についての資料を活用する中で、胎児の様子に着目して、時間の経過と関係付けて、動物の発生や成長を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①人は、母体内で成長して生まれることを理解している。
②人の成長や発生について、実験、観察などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。
思考・判断・表現
①人の発生や成長について、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②人の発生や成長について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①人の発生や成長についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②人の発生や成長について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 5時間
第1次 胎児の母胎内での様子や成長を予想し、学習の見通しをもつ。
1 胎児の母胎内での様子や成長について問題を見いだし、問題を基に解決の方法を含めて学習計画をつくる。
思考・判断・表現①
人の発生や成長について、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
第2次 胎児の母胎内での成長について調べる。
2 胎児の母胎内での様子について調べる。
知識・技能②
人の成長や発生について、実験、観察などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
3 胎児の母胎内での成長についてまとめる。
主体的に取り組む態度①
人の発生や成長についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析〉
第3次 胎児の母胎内での成長について考えを交流する。
4 胎児の母胎内での成長について調べたことを基に、発表資料を作成し、発表することで、友達と考えを交流する。
知識・技能①
人は、母体内で成長して生まれることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
人の発生や成長について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
5 人の発生や成長について、学んだことを母親が気を付けていることと結びつけて考える。(授業の詳細)
主体的に学習に取り組む態度②
人の発生や成長について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第3次 胎児の母体内での成長について考えを交流する。
9 人の発生や成長について、学んだことを母親が気を付けていることと結びつけて考える。
人の発生や成長について、学んだことを母親が気を付けていることと結びつけて考え、学んだことを生活に生かそうとしている。
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①問題を見いだす
学んだことと妊婦の様子とを結びつけて考え、妊婦が気を付けていることについて話し合い、学習問題をつくる。
本時は発展の内容になりますが、学習したことと結びつけながら考えていくことで、学んだことの理解を深め、生活に生かしていくことができます。
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足元が見えにくくなると思いませんか。
こんなにおなかも大きくなるんだ。38週間もおなかの中で胎児を育てるのは大変だろうな。
母親はどんなことに気を付けているのかな。
胎児が母体内で成長するとき、母親はどんなことに気を付けているのだろうか。
②予想する
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38週間も胎児が母体内にいるから、胎児の大きさによって気をつけることもちがうと思う。
胎盤とへその緒を通して母親から養分をもらっているから、母親は食べ物に気を付けていると思うな。
学習した内容(約38週間母胎内で育つこと、胎児が羊水や子宮に守られていること、たいばんとへその緒を通して母親から養分をもらうこと)をもとに考え、予想をもつことができるようにしましょう。
③解決方法を考える
もうすぐ赤ちゃんを産む人がいるから、聞いてみよう。
妊娠されている方から直接話を聞ける機会を設定すると、実際のおなかの大きさも見ることができ、より実感が湧くでしょう。また、保護者や出産経験のある先生に来ていただいて、話していただいてもよいでしょう。
妊婦さんのことに詳しい人に聞いてみるといいよね。
産婦人科の先生や保健師などに直接話を聞けるとよいでしょう。市役所などに相談すると、保健師の派遣や、妊婦体験の道具の貸出しができることがあります。
胎児と同じ重さのものをおなかあたりで持てば、妊婦さんを体験できるね。
妊婦体験の道具が用意できないときは、胎児の重さのペットボトル(2Lペットボトル1本と1Lペットボトル1本をテープでしっかり巻いたもの)を抱っこひもで持ってみたり、おなかのところで持ってみたりするだけでも体感することができます。その際、安全には十分気をつけましょう。
④観察・実験をする
●妊婦さんや出産した人、母親や祖母にインタビューする。
●保健師や医師に話を聞く。
●妊婦体験をする。
●インタビュー
38週もお腹の中に胎児がいるのですが、その間気を付けていたことはありますか。
胎児は胎盤やへその緒を通して栄養をもらいますが、気を付けていたことはありますか。
羊水や子宮で守られているから安全ですか。気を付けていることはありますか。
●妊婦体験
38週くらいになると、こんなにおなかが大きくなるんだ。とても動きにくいな。
立ったり座ったりするのが大変だね。
おなかが大きく出ていて、足元が見えないなあ。
〈事実を捉える〉
妊婦体験の様子を動画で撮っておくことで、体験をふり返ったり、体験中には気が付かなかったことに気付いたりすることができます。
⑤結果の処理
胎児がおなかにいるのはうれしいけど、胎児の大きさによって心配なことがいろいろあることがわかった。
20週くらいになると、おなかをけるのがわかるようになるんだね。
おなかが前に出ているからぶつかる心配があるね。
38週の生まれる直前は、おなかがとても大きくて重いことがわかったよ。
お母さんは、食べるものにもとても気を付けているんだね。
〈事実を捉える・結果を共有する〉
視聴した動画の情報やインタビュー内容を保存しておくことで、全ての子どもが情報を共有できるようにします。
約38週間母体内で育つこと、胎児が羊水や子宮に守られていること、胎盤とへその緒を通して母親から養分をもらうことと、母親が気を付けていることを結び付けながら表に整理すると、学習内容に沿ってまとめることができます。
⑥結果を基に考察する
38週もお腹の中に胎児がいるから、週によって大変なことがちがうんだね。
20週くらいになると、胎児の筋肉が発達して体が動くようになるから、おなかをけるんだね。
羊水や子宮で守られているね。でも、おなかが前に出ているからぶつからないように気を付けているんだ。
胎盤やへその緒を通して養分が送られるから、栄養のあるものを食べているんだね。
「約38週間母体内で育つから~に気を付ける」「胎児が羊水や子宮に守られているから~に気を付ける」「胎盤とへその緒を通して母親から養分をもらっているから~に気を付ける」という点で考えるようにすると、学んだことと結びつけながら考察することができます。
⑦結論を出す
約38週間、母体内で胎児が育っている間は、母親は胎児の成長に合わせて、体を大切にして過ごしている。
⑧振り返る
38週間も母親はお腹の中で、栄養や胎児のことを気遣って大切に育てているんだね。
各班の結果を全体で共有することによって、他の班の結果と比べたり、全体的な傾向をつかんだりし、客観性の高い考察につなげることができます。また、結果の表示方法を工夫することで、視覚的にも捉えやすくなります。
今日の学習を振り返って、私たちにできることを考えてみましょう。
ぼくたちが席を譲ったり、手伝ったりして、無事に生まれてくることができるように手助けをしたいな。
道徳科との関連も考え、妊婦に対して様々な配慮が必要なことを理解し、自分にできる心遣いをしようという気持ちを育てたり、自分も母親の体の中で長い時間をかけて大切にされながら大きくなった命であることに気付いて感謝する気持ちを育てたりすることができるようにしましょう。
魚の誕生の学習と関係付けられる発言が子どもから出されたときには、進んで取り上げ、学習とのつながりを意識できるようにしましょう。
安全指導
妊婦体験をする際には、子どもの体格を考慮して胎児の模型の重さを決めたり、転倒しないように気を付けたりして実施しましょう。また、ペットボトルなどで行う際には、足に落としてしまうなどのことがないよう、安全に配慮して行いましょう。
その他のポイント
母親や祖母へのインタビューをする際は、子どもの家庭環境に十分配慮するようにしましょう。出産経験のある先生へのインタビューなどの選択肢もつくっておくとよいでしょう。
イラスト/難波孝