小4理科「すがたを変える水」指導アイデア
執筆/福岡県北九州市立八児小学校主幹教諭・松本祥吾
福岡県北九州市立藤松小学校教諭・一ノ谷舞
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県北九州市立高見小学校校長・南里幸一
福岡県北九州市立戸畑中央小学校教頭・是澤真利
目次
単元目標
水の状態や体積の変化に着目し、それらと温度の変化とを関係付けて、水の性質を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
水の温度の変化を捉える際、実験の結果をグラフで表現し読み取ったり、状態が変化すると体積が変化することを図や絵を用いて表現したりするなど、水の性質について考えたり、説明したりする活動の充実を図るようにしましょう。
評価規準
知識・技能
①水は、温度によって水蒸気に変わることを理解している。
②水は、温度によって氷に変わることと、水が氷になると体積が増えることを理解している。
③水の性質について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
思考・判断・表現
①水の性質について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。
②水の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①水の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②水の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 8時間
第1次 熱したときの水の様子を調べる。
1~2 水を熱したときの様子について調べる。
思考・判断・表現①
水の性質について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
水の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
3~4 水がふっとうしているときに出てくるあわについて調べる。(授業の詳細)
知識・技能①
水は、温度によって水蒸気に変わることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
5 温度の変化と水の様子を関係付けて調べる。
知識・技能③
水の性質について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動観察・記録分析〉
思考・判断・表現②
水の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
第2次 冷やしたときの水の様子を調べる。
6~7 水を冷やし続けたときの水の温度と様子について調べる。
知識・技能②
水は、温度によって氷に変わることと、水が氷になると体積が増えることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
第3次 温度と水のすがたについてまとめる。
8 水は温度によって固体、液体、気体にすがたを変えることをまとめる。
主体的に学習に取り組む態度②
水の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第1次 熱したときの水のようすを調べる。
3~4 水が沸騰しているときに出てくる泡について調べる。
水は温度によって水蒸気に変わることを理解している。
①問題を見いだす【自然事象との出合い】
水が沸騰したときのことを想起できるようにする。
前時の水の沸騰の様子を動画で撮影しておくようにします。沸騰時の泡の様子がよく確認できるように、拡大したりスローモーションで視聴したりするとよいでしょう。
沸騰した水の様子から、何か気付いたことはありますか?
水は温めていくと、ぶくぶくと泡が出てきたよ。
空気が出てきたんだね。
泡は空気だということですか。
泡は、水とちがって空気みたいだったよ。
泡は空気じゃないのかな。調べてみたいね。
水がふっとうしているときに出てくるあわは、何だろうか。
②予想する
泡は透明だから、湯気とちがって空気だと思う。
湯気が水だったので、泡は水蒸気だと思う。
水が目に見えないすがたになっているのが水蒸気だったから、この泡も水蒸気だと思うな。
これまでの学習内容や、水を温めた生活経験を具体的に話し合い、「水の状態変化と温度変化」に視点をおいた問題を設定します。具体的な温度を確認しながら、既習の内容や経験を話し合うことで、水の状態変化を調べるときに、子どもたちは温度変化と関係付けながら根拠のある予想を発想することができます。
③解決方法を考える
沸騰したときに出る泡を集めてみると、正体を調べることができそうだね。
④観察・実験をする(安全指導)
水を熱したときと、熱した後の袋の様子を調べるといいね。
もしも泡の正体が空気なら、袋の中に空気がたまってふくらんだままになるはずだね。
もしも水蒸気なら、冷やされると水のつぶが袋の内側につくはずだよ。
予想が確かめられたら、どのような結果が出るのかも合わせて見通し、結果から考察を行いやすくしておくようにするとよいでしょう。
⑤結果の処理
ICT機器を活用して、熱したときと熱するのをやめたときの様子を写真や動画で撮影し、それらを比較することで泡の正体について考察しましょう。
⑥結果をもとに考察する
熱するのをやめたら、袋がしぼんだということから、空気ではないことがわかったよ。
熱するのをやめると、袋の中に水滴がついたから、泡が冷やされて水に変わったんだね。
このことから、泡の正体は水が水蒸気に変わったものということがわかった。
ここでは、二つの現象を比較できるようにすることが大切です。熱しているときと熱した後の様子を比べることで、水の温度変化と状態変化の関係に目を向けることができるようにしましょう。また、本時の実験の様子と前時で行った湯気を調べる実験の様子を比較することで、水蒸気と湯気のちがいや、温度との関係などがより考察しやすくなります。
⑦結論を出す
ふっとうしている水の中から出ているあわは、水蒸気である。
⑧振り返る
水は温めると、水蒸気にすがたを変えることがわかった。
前に、水が地面や水面などから、水蒸気になって蒸発することを学習したけど、温めても水蒸気になるんだね。
袋がふくらんだりしぼんだりしたのは、温められたり冷やされたりして水の体積が変わったからだね。
前に、水が温められると体積が増えることを学習したけど、水蒸気になるときは、もっと体積が増えるんだね。
湯気と水蒸気は似ているけど、どんなところがちがうのかな。
湯気は水蒸気が冷やされて小さな水の粒になったもので、目に見えるものですよ。
湯気=水蒸気という誤った考えをもってしまう子どもがいるため、湯気を調べる実験を振り返り、湯気(見えるもの)と水蒸気(見えないもの)の定義をしっかりと確認するようにしましょう。また、水は温度が上がると気体の水蒸気になるが、下がると液体の水に戻ることを確認しながら、可逆についても確認することで深い理解につながるでしょう。
安全指導
実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。
●湯が目に入らないように、保護メガネを付けるようにする。
●沸騰させた際の突沸を防ぐために、必ず沸騰石を入れる。
●沸騰の際に出るあわの勢いで、ろうとが持ち上げられ、ビーカーから飛び出る恐れがあるため、袋が膨らんだら熱するのをやめる。
●熱したものや使った器具は熱くなっているため、冷めるまで触らないようにする。
イラスト/難波孝