メダカの準備と授業の導入場面 〜第5学年「魚のたんじょう」 【理科の壺】
第5学年の「魚のたんじょう」では、主にメダカを扱います。子どもたちがスムーズに単元に入るためには、メダカをきちんと準備しておく必要があります。今回は、メダカの授業で具体的にどのように扱い、どのような授業を進めていくかについて紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/埼玉県公立小学校教諭・渡辺 南
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.産卵するまでの準備
水温が20度以上、日の長さが14時間以上になるとメダカは産卵するようになります。そのため、水槽のメダカには水温を調節し、ライトを当てる時間も考慮しなくてはなりません。
水温やライトの時間を調節したら、次は餌です。繁殖機能は栄養不足では働かないため、十分に栄養を与える必要があります。おすすめは繁殖用の餌(キョーリン メダカのエサ産卵・繁殖用)です。
2.産卵が始まったら
次に、産卵が始まると産卵床の準備です。産卵床は浮くタイプのもの、沈むタイプのものがあるので、メダカの好みに合わせてください。
3.卵の取り扱い
卵はペトリ皿などの浅い容器に入れ、水道水で管理してください。深い容器では、酸素不足になります。また、蒸留水や浄水では水が腐りやすいため、水道水を使用しましょう。
卵には付着糸がついていて、ごみがからまりやすく、かたまっているとカビやすくなります。そのため、かたまっている卵をばらばらにほぐす必要があります。産卵してすぐの卵は固いので、指でつまんでもつぶれません。付着糸を指で一つ一つほぐしましょう。
水道水の水はこまめに取り換えましょう。
4.卵の観察について
理科の授業は週3時間で、1日は1時間、2日は2時間と週に2日と設定されている学校が多いのではないでしょうか。卵は水温24度×10日ほどで孵化するため、卵の観察が週に2日であると、3回~4回で観察を終えてしまします。授業計画では3~4回で十分かもしれませんが、中には毎日観察したいと思う子ども達もいるため、卵の観察の間は理科室を開放して休み時間に観察できるようにしたり、教室に解剖顕微鏡やタブレット用マクロカメラを用意たりして、いつでも観察できるようにすると意欲の継続につながります。
5.孵化後
稚魚は、成魚と一緒にすると食べられたり、弱ってしまったりするため、稚魚用の水槽もしくは、稚魚隔離ネットなどで飼育するとぐんぐん育ちます。
6.「魚のたんじょう」単元導入について
【主体的な問題解決のために問題意識をもつ】
学校のビオトープにあるメダカ池の動画を提示し、そこからとってきたメダカを子ども達に見せます。そこから、子ども達の「もっと近くで見たい」「私たちのメダカだ」という意識付けを行います。次に、成魚のメダカ(雌雄一緒に入れたビーカー)、稚魚、メダカの卵を肉眼で観察し、気付いたことや調べてみたい問題を見いだせるようにします。
7.授業展開モデル(1/8時間)
問題をみいだす際の、先生と子どもの言葉のやり取りを示した授業展開モデルをご紹介します。
単元の導入において、メダカを見たことがある子とない子の差異をなくすため、全員に観察の機会を設定します。また、より身近に感じるため、校内のビオトープで泳ぐメダカを動画で撮影し、提示します。メダカの卵、稚魚、成魚を用意し、成長段階における疑問を全て出すことができるように準備します。この導入によって、すべての子ども達から、気付きや疑問が生まれると思います。この気付きや疑問からクラス全体の問題ができたことで、全員が問題意識をもって単元に取り組もうとする姿勢ができます。
ここはどこでしょう?
学校?
ビオトープだ!
何がいるでしょう?
何か泳いでいる!
メダカだ!
たくさんいたんだね。
群れで泳いでいる。
見たことある!
つかまえたい。
そのメダカをつかまえてきました!(ビーカーに入ったメダカを提示)
やったー!!!見たーい!!
今回の単元である「魚のたんじょう」に展開するため、「成魚」「稚魚」「0日目のたまご」「8日目のたまご」を提示し、観察の時間をとります。「たまご」に関して、子どもたちには〇日目とは伝えず、子ども達自身から気付きや疑問がでてくるようにします。
観察の際は、自分が見たいものを見てよいとし、子ども達の個々の学びを大切にします。また、観察する際には「気付いたこと・疑問」に思うことをノートに記入するよう伝えます。
イラスト/難波孝
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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<執筆者プロフィール>
渡辺 南●わたなべ・みなみ さいたま市公立小学校教諭。さいたま市CST。大学時代はアカネズミを追いかけ野山を奔走。
教員になった今は理科教育推進に奔走中。共著「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。