小5家庭科「クリーン大作戦PARTⅠ~整理・整頓編~」
今回は、「クリーン大作戦PARTⅠ~整理・整頓編~」の授業実践を紹介します。「家族みんなが気持ちよく快適に生活するための整理・整頓の仕方を考えよう」という課題を設定し、その解決に向けて、まず、校内の整理・整頓に取り組み、次に、家庭の実践につなげ、進んで家庭の整理・整頓に取り組もうとする意欲を高め、「家庭の仕事」として継続したり、工夫したりできるようにすることを目指します。
執筆/神奈川県横浜市教育委員会首席指導主事・大平はな(授業者資料提供/同公立小学校主幹教諭・吉田道)
編集委員/神奈川県横浜市公立小学校校長・本庄則子
監修/元文部科学省教科調査官・筒井恭子
目次
年間掲載内容
04月 ガイダンス
06月 ゆでる調理
08月 ごはんとみそ汁
10月 整理・整頓
12月 買い物の仕方
1 題材名
クリーン大作戦PARTⅠ ~整理・整頓編~
2 題材について
本題材は、「B 衣食住の生活」の(6)「快適な住まい方」のア(イ)「住まいの整理・整頓」及びイ「季節の変化に合わせた住まい方、整理・整頓や清掃の仕方の工夫」を扱います。この学習の前に「A 家族・家庭生活」の(2)「家庭生活と仕事」を扱い、家庭の仕事について学び、家庭での実践を行います。家庭の仕事に関する学習を出発点として、子供も取り組みやすい身の回りの整理・整頓に着目できるようにし、気持ちよく生活するために住まいの整理・整頓が必要であることを理解し、その仕方を身に付けられるようにしていきます。題材の導入では、整理・整頓された部屋とされていない部屋を比べ、「なぜ掃除や整理・整頓をするのだろう」という問いをもち、そこから「家族みんなが気持ちよく快適に生活するための整理・整頓の仕方を考えよう」という課題を設定できるようにします。その課題の解決に向けて学校の机の中やロッカー、さらに校内の整理・整頓を実際に行い、問題解決を図りながら学習を進めます。そして、家族が快適に生活できるよう家庭での実践につなげ、進んで家庭の整理・整頓に取り組もうとする意欲を高め、「家庭の仕事」として継続したり、工夫したりすることができるようにしています。
学習前に実施した整理・整頓に関するアンケートでは、約2割が「得意・好き」、約4割が「苦手・嫌い」と回答しました。また、別の質問「整理・整頓は必要か」に対して、約9割が「そう思う」と答えています。このことから、整理・整頓は家庭の仕事の中でも身近であり、必要感をもっているものの、「必要だと思っていても面倒だ」「やり方が分からず、どうしてよいか分からない」という思いをもっている子供の存在が見えてきました。
3 題材の目標
○住まいの整理・整頓の仕方について理解するとともに、適切にできるようにする。
○住まいの整理・整頓の仕方について問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法を考え、実践を評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付ける。
○家族の一員として、生活をよりよくしようと、住まいの整理・整頓の仕方について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとする。
4 題材の評価規準
●知識・技能
住まいの整理・整頓の仕方を理解しているとともに、適切にできる。
●思考・判断・表現
住まいの整理・整頓の仕方について問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法を考え、実践を評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付けている。
●主体的に学習に取り組む態度
家族の一員として、生活をよりよくしようと、住まいの整理・整頓の仕方について、課題の解決に向けて主体的に取り組み、活動を振り返ったり改善したりして、生活を工夫し、実践しようとしている。
5 指導のアイデア
〔題材の指導計画作成上の工夫〕
整理・整頓の指導においては、学校での学びをすぐに家庭での実践に結び付けやすいことから、3時間目を実施するまでに時間を確保し、学校と家庭の学びが往還するようにします。また、複数名が利用する場所などにおいては、整理・整頓を行っても一時的にしか保てないことがあります。家族と共用の場所を整理・整頓する際に、整った状態をできるだけ長く保ち続ける工夫があることにも気付けるよう、家庭実践の計画を立てる5時間目を実施するまでの間にも、一定の時間を確保した指導計画を作成します。
〔1人1台端末の活用〕
整理・整頓においては、物を使う人や場所、その使用目的や頻度、大きさや形などによって整理・整頓の仕方を工夫する必要があることが分かり、何がどこにあるか、必要な物がすぐに取り出せるか、空間を有効に使えるかなどの視点から工夫できるようにすることが大切です。そのために、整理・整頓する前(Before)とした後(After)の写真を撮影し、それらを共有することで、整理・整頓のポイントを具体的に捉えられるようにします。また、クラウド型授業支援アプリケーションを活用し、整理・整頓する様子の動画や家族へのインタビュー動画を共用したり、共同編集したりすることを通して、整理・整頓の仕方や工夫についての理解と活用をより確かなものにしていきます。
6 題材の指導計画(全5時間)
時間 | 学習内容 |
---|---|
1 | なぜ、整理・整頓をするのか話し合ったり、身の回りを整理・整頓したりして、学習課題をもとう。 |
2 | 校内で整理・整頓大作戦その1を行い、Before/Afterを比べよう。 |
課外 | 家庭でどのように整理・整頓を行っているか、その取組の様子や工夫を調べたり、家族にインタビューしたりしてみよう。 |
3・4 | これまでの実践から整理・整頓のためのポイントをまとめ、校内での整理・整頓大作戦その2の計画を立て、実践しよう。 |
<1週間~10日、整理・整頓した場所が様々な人に利用され、整った状態を保ち続けることができるか検証する時間を確保する。>
5 | 実践を振り返り、改善点を考え、家庭での計画作成に生かそう。 |
7 学習の流れと子供の様子
1時間目
〔ねらい〕
整理・整頓の仕方について、問題を見いだし、課題を設定することができる。
〔主な学習活動〕
①なぜ、整理・整頓をするのか話し合い、道具箱の整理・整頓を行う。
②整理・整頓するよさ、家族の思いや工夫を知り、どうしたら自分たちにも継続して整理・整頓に取り組むことができるか考え、課題を設定する。
X児の姿
「自分は、整理・整頓は得意とか、好きとか考えたことはなく、ただやったほうがそろそろいいだろうなと思うときにしていました。道具箱を整理・整頓するときは、よく使う物は手前に置くようにしていましたが、友達は形や大きさをそろえたり、仕切りを利用したりしていました。家の人は、自分たちにもっと整理・整頓に積極的に取り組んでほしいと考えていることが分かったので、この学習を通して、短時間で、すっきりする整理・整頓の技を身に付けたいです」
1時間目に使用した学習カード
2時間目
〔ねらい〕
校内で整理・整頓大作戦その1を行い、整理・整頓の仕方を理解することができる。
〔主な学習活動〕
①整理・整頓するところを探して実際に整理・整頓を行う。
②Before、Afterの様子を端末で撮影し、見比べる。
③どのような点を意識して整理・整頓を行ったかを話し合い、整理・整頓する場所が異なっても共通するポイントやコツをまとめる。
X児の姿
「多目的室にある棚がごちゃごちゃしていたので、整理・整頓することにしました。卓球ネットや百人一首は種類ごとにまとめて置くことにしました。図書室や家庭科室を整理・整頓した友達も『種類ごとに分けて、まとめる方法がよかった』と言っていました」
2時間目に使用した学習カード
課外
家の中を観察し、整理・整頓が行われている場所と、その工夫を見付け、写真に撮り、学級で共有した。なお、家庭で撮影した写真の提示については、十分に配慮する。
3・4時間目
〔ねらい〕
これまでの実践から整理・整頓のポイントをまとめて、校内での整理・整頓大作戦その2の計画を立て、実践する。
〔主な学習活動〕
①家庭内で見付けた整理・整頓の技を紹介する。
②校内での整理・整頓大作戦その1で気になったことを踏まえるとともに、家庭内で見付けた技を取り入れながら、短時間で、効率よく整理・整頓するための計画を立てる。
X児の姿
「計画では、①多目的室はいろいろな人が使うため、誰でも整理・整頓することができるよう、棚に『卓球クラブ』『百人一首クラブ』という名札を表示する、②前回、破れている卓球ネットや、札が揃っていない百人一首セットがあったので、よく使う物とそうでない物を、別々のかごに分ける、③前回は時間を意識して整理・整頓していなかったので、どこから整理・整頓するか、誰が担当するかなども役割分担する、の3つを話し合いました。『何から整理・整頓しようかな』『どうやったらすっきりするかな』と途中で考えたり迷ったりすることがなかったので、前回よりも短い時間で、しかもかなりすっきり、使いやすい多目的室になったと思います」
5時間目
〔ねらい〕
整理・整頓大作戦その2を振り返り、改善点を考え、家庭での計画作成に生かす。
〔主な学習活動〕
①校内での整理・整頓大作戦その2から1週間たった時点で、その場所の整理・整頓がどの程度維持できていたかを調べる。
②場所によっては、整理・整頓された状態が維持されていなかたことを確認し、どうしたら、整理・整頓が「長持ち」するようになるかを考える。
③これまで学んだ「整理・整頓の技」と「整理・整頓が長持ちする技」を組み合わせて、家庭での実践計画を作成する。
X児の姿
「家では、洗面台の棚を整理・整頓します。多目的室を整理・整頓したときに使った種類別、かつよく使う物とそうでない物を分ける技、棚ごとに家族が使う場所を分け、表示する技を使う計画を立てました。毎日、朝晩必ず使う場所なので、整理・整頓したことが長持ちするように、家族にもアドバイスをもらいたいです」
8 学習を振り返って
整理・整頓は身近な家庭の仕事ですが、子供の関心はあまり高くありません。そのため、整理・整頓をするよさを実感させたり、「進んで整理・整頓に取り組んでほしい」という保護者のメッセージを伝えたりすることを通して、整理・整頓への興味・関心を引き出し、「できるようになった」「すっきりして気持ちがよい」「これならば続けられそうだ」という意欲を高めていくことの大切さを確認しました。限られた時間数ですが、これからも子供の実態に即して実践的・体験的な活動を繰り返し取り入れるとともに、子供が自ら学びに向かおうとする意欲を引き出していけるような学習環境を整えていきたいと考えます。
また、今回の題材で、家庭での実践を考える場面では、整理・整頓の課題として「すぐに散らかり長続きしないこと」に気付き、解決を図る手だてを具体的に話し合うことが現実的で有効だったと考えます。話合いの視点を長続きしない原因と改善策に絞ったことにより、家庭実践の計画がより具体的になりました。
本題材と「家庭の仕事」との関連を図ったことで、保護者アンケートの「一緒にできる仕事が増えると助かる」「まずは自分の身の回りの整理・整頓など、できることから継続して取り組んでほしい」といった声を本題材に生かすことができました。「自分がしてあげたいことをする」だけでなく、家族がしてほしいと思っていること、協力して取り組んでほしいと思っていることができるようになることも、家族の一員として大切な視点であることを確認することができました。
構成/浅原孝子