小3理科「電気の通り道」指導アイデア
執筆/福岡県北九州市立門司中央小学校教諭・三戸岡洋平
福岡県北九州市立深町小学校指導教諭・鈴木寛人
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県北九州市立湯川小学校校長・齋藤貴志
福岡県北九州市立青山小学校教頭・中富太一朗
目次
単元目標
乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子に着目して、電気を通すときと通さないときのつなぎ方を比較しながら、電気の回路について調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
評価規準
知識・技能
①電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があることを理解している。
②電気を通す物と通さない物があることを理解している。
③電気を通すつなぎ方について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
思考・判断・表現
①電気の回路について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。
②電気の回路について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①電気を通すつなぎ方についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②電気の回路について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 9時間
第1次 豆電球の明かりをつける
1 豆電球に明かりをつけてみる。
知識・技能①
電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉
知識・技能③
電気を通すつなぎ方について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈記述分析・発言分析〉
明かりがつくつなぎ方は、1つ発表されると「○○さんと同じです」など、自分の意見を発表しなくなる場合があります。掲示用の大型の回路模型を準備しておき、どのようにつないだのか、どことどこをつないだのかなどを活動しながら発表することで、実は同じようでも少しずつ違いがあることがわかります。子どもたちの気付きや発想は多様であるために、それらを可視化、顕在化する工夫は大切です。
2~3 豆電球に明かりがつくときと、つかないときのつなぎ方を調べる。
知識・技能①
電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉
知識・技能③
電気を通すつなぎ方について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動観察・記録分析〉
思考・判断・表現①
電気の回路について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。〈記述分析・発言分析〉
明かりのつくつなぎ方や豆電球を使ったおもちゃなどを子どものICT端末で写真に撮り、気付きや工夫を入力して提出させるなどして記録を残すようにしましょう。評価する際にも客観的な資料として見直すことが可能となります。
4 学習したことを深める(ソケットなしで明かりをつけてみる)。
知識・技能①
電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
電気を通すつなぎ方についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析・発言分析〉
第2次 電気を通す物・通さない物
5~6 どのような物が電気を通すのか調べる。(授業の詳細)
知識・技能②
電気を通す物と通さない物があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉
思考・判断・表現②
電気の回路について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈記述分析・発言分析〉
実際に電気を通す物、通さない物を調べる際、安全への注意を十分に行う必要があります。教科書に示されている物以外に、身近な電気を通す物を調べる活動も準備しましょう。身近な電気は、コンセントから出ていると想起する子どもがいた場合、コンセントに導線を差して、大きな事故・怪我につながることも考えられます。また、調べることに夢中になり、ベランダの手すりなど、教室外に出ていくことも考えられますので、調べる範囲を決めるなど、事前の安全指導が大切です。(安全指導)
7 学習したことを深める(遠くにある豆電球に明かりをつける)。
知識・技能③
電気を通すつなぎ方について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動観察・記録分析〉
主体的に学習に取り組む態度②
電気の回路について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
8 豆電球を使ったおもちゃをつくってみる。
知識・技能①
電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉
知識・技能②
電気を通す物と通さない物があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉
9 学習したことをまとめる。
主体的に学習に取り組む態度②
電気の回路について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・記録分析・発言分析〉
授業の詳細
第2次 電気を通す物・通さない物
5~6 どのような物が電気を通すのか調べる。
電気の回路について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
①問題を見いだす【自然事象との出合い】
豆電球、乾電池、導線つきソケットを糸で延長したものとつないで、明かりがつかない事象を提示する。
あれ? ちゃんと回路を作ったのに、電気がつきません。どうしてでしょう?
糸が間に入っているから、つかないんじゃないかな。
他のものが回路の間に入ったから、明かりがつかないのかも。
電気を通すものと通さないものがあると思うな。
どのようなものが電気を通すか調べよう。
どんなものが電気を通しそうだと思いますか。
ツルツルしているものは電気を通しそう。
ピカピカするものも電気を通しそう。
②予想する
記録カードに、教師が用意したそれぞれの物が、電気を通すと思うか、通さないと思うかを記入する。
本時では、電気を通すものと通さないものを比較して、どのようなものが電気を通すのか理解することが大切です。そのため、最初は、ものに注目しますが、授業の終わりでは、そのものが何でつくられているのかという材質や様子に目を向けることで、質的な見方ができるようにしていくことが大切です。材質に注目できるようにするために、同じものだけど、違う材質でできているものを用意する必要があります。なお、空き缶を使う場合は、あらかじめ紙やすりなどで表面を削っておくことが大切です。また、本単元で、「金属」が電気を通すという性質を学び、次単元で「金属」の中の「鉄」が磁石に引き付けられるという性質を学ぶことで、「ものの性質」についての理解をより深めることができます。そのため、この2単元は、内容の系統を意識して指導するようにしましょう。
みんなの身の回りのものを用意したから、どれが電気を通して、どれが電気を通さないのか予想しましょう。
ガラスはツルツルしているから、電気を通すと思うよ。
スプーンはピカピカしているから電気を通すと思うな。
③実験をする
予想をもとに回路に物を入れて、明かりがつくか調べます。(安全指導)
実験が早く終わった場合は、教室のなかのものが電気を通すのか調べ、タブレットで共有します。
実験が早く終わった子どもには、「他に調べたい物はないかな」といった声かけをし、子どものさらなる思考を促すことで、電気を通す物、通さない物について深く理解することができるようになります。
④実験結果を共有する
実験結果は、シールを用いて黒板に掲示します。全員の結果を掲示することで、実験結果に客観性をもたせることができます。
⑤結果を基に考察する
実験の結果から、どんなことがわかりますか。
鉄や銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属を回路に入れたときは、全部豆電球がついているね。
紙やゴム、ガラス、プラスチックを入れると豆電球はつかないね。
⓺結論を出す
鉄や銅、ステンレス、アルミニウムのことを「金属」ということ、金属は電気を通すことを確認します。また、教室の中のものを使って、身の回りの金属への理解を深めます。
教師が提示したものだけでなく、自分の身の回りの物を調べる活動を通して、子どもたちの主体性が育ちます。また身の回りのものでは金属以外に鉛筆の芯は電気を通しますが、発熱するため、注意が必要です。
金属でできているものは、電気を通す。
⑦振り返る
金属は電気を通すんだね。
身の回りにも金属がたくさんあるから、電気を通す物は多いってことだね。
安全指導
実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。
●乾電池と導線だけで回路をつくらない。
●電池や導線などが通常より熱いと感じたら、ただちに実験を中止する。
イラスト/難波孝